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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第5回

アップルやPayPayの「お年玉」とは位置づけが異なる:

ZOZO前澤社長の「お年玉」が周到なワケ

2019年01月15日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 年末から年始にかけて、お金やお金に準ずるものをばらまいたととれるIT企業が相次いだ。

 QRコード決済を展開するPayPayは、2018年12月に「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施。ZOZOTOWN(ゾゾタウン)の前澤友作社長は年明け、ツイッターで総額1億円の「お年玉」を配った。アップルも、1月2日に買い物をした客に「お年玉」を配っている。

 気になるのは景品表示法(景表法)の存在だ。過大な「おまけ」を付けて商品やサービスを売る行為は、景表法上、問題になりうる。今回の3つの動きは、景品規制の観点ではどう見えるのだろう。

●アップルのお年玉は「値引き」の一環

 まず、わかりやすいのはアップルだ。

 アップルは、1月2日に「初売り」を実施。アップルストア(Apple Store)やオンラインで、パソコンやiPhoneなどを買った人を対象に、「お年玉」を配った。

 お年玉と言っても、現金ではなくギフトカードだ。このギフトカードはやはり、アップルストアやオンラインで、アップルの製品などが購入できる。MacBook Proなどを買った人には、2万4000円分のギフトカードを贈った。iPhone 8などを買った人には6000円分のギフトカードが贈られている。

 景品規制を担う消費者庁の担当者は「個別の案件についての評価はできない」と前置きしたうえで、「基本的には、値引きは景品ではないという考え方がある。ケースバイケースではあるが、キャッシュバックやポイント還元は、実質的に値引きにあたるのであれば景品規制の対象とはならない」と説明する。

 確かに、初売りの時期には、スーパーや家電量販店も、さまざまな商品の大安売りをする。アップルの手法は、「おまけ」としてお年玉を配ったというよりも、その場で値引きをするのではなく、後で値引きをしたとみることができる。

 では、PayPayはどうか。

●PayPayも「大安売り」の一種

 とてもわかりやすい名前の「100億円あげちゃうキャンペーン」は、注目を集めた。

 同社のウェブサイトによると、加盟店で買い物をする際に、PayPayを使って決済をすると、翌月10日前後に、「PayPayボーナス」として20%分が戻ってくる。このボーナスには1人あたり「月額50,000円相当」という上限が設けられている。

 多くの決済サービスがしのぎを削っているいま、このキャンペーンは、消費者がPayPayを使い始めるきっかけにもなる。実際、開催期間は2018年12月4日から2019年3月末までだったが、開始から10日で100億円相当に到達し、キャンペーンは終了した。

 消費者庁によれば、一般的には、ポイントサービスや、キャッシュバックなどのキャンペーンは、事後的に対価を減額する手法であった場合は、値引きに当たりうるという。

 PayPayのキャンペーンは、「あげちゃう」と名付けられているものの、実態としては、後で値引きが受けられるサービスとみてよさそうだ。実際に、「PayPayボーナス」がもらえるのは、決済の翌月とされている。

 外見こそ異なるがアップルもPayPayも、実質的には「大安売り」とみてよさそうだ。

 異質なのは、ゾゾタウンの前澤社長だ。

●前澤社長は「事業者じゃない」からOK?

 前澤氏は、7日までに前澤氏のツイッターのアカウントをフォローし、投稿をリツイートした人から抽選で100人に100万円の「お年玉」を出した。総額は1億円になる。

 前澤氏が配った「お年玉」は、景品規制の対象となるのか。

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