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福岡のkintone hiveで開催されたプロによるkintone活用ライトニングトーク

IoTデバイスやLINEとkintoneを組み合わせて顧客のニーズに応える

2020年07月06日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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 4月16日に「kintone hive fukuoka vol.5」が福岡で開催された。新型コロナウィルスの影響によりオンラインでの開催となったが、kintone導入事例の発表の後、kintoneアプリのカスタマイズ事例を発表するライトニングトークが行われた。今回は、この「kintone Hack」の様子を紹介しよう。

Meshタグを使ってビニールハウスの温度をkintoneに登録

 トップバッターはエムアイエフの山口拓哉氏。「kintone×Meshタグでビニールハウス監視アプリ」というテーマでkintoneをエンジニアの視点でカスタマイズした事例について紹介してくれた。

 福岡市博多区にあるエムアイエフは、kintoneをはじめとするサイボウズ製品などの導入支援を行なっている。今回、山口氏が作ったのは、ビニールハウスに温度と湿度を計測できるセンサーを設置し、kintoneでグラフ表示するという小規模農家向けのシステムだ。

「ビニールハウスの制御システムは大手メーカーさんが作っていますが、高価で高機能すぎます。小規模農家さんとしては、いらないなと機能が多いのです。加えて、農家さんはまだITに疎い人が多いので、使いこなすこともできません。今回はシンプルかつ安価というコンセプトで、最低限の機能を持つアプリを作りました」(山口氏)

エムアイエフ 山口拓哉氏

 温度と湿度を計測するセンサーにはMeshタグを使った。Meshタグはソニーから発売されているIoTキットで、プログラミングしなくてもIoT家電と連動するようなアプリを作れるのが特徴だ。ただし、Meshタグは単体でkintoneに接続できないので、ビニールハウス内にスマホを設置。MeshタグとBluetooth接続し、モバイル回線からkintoneにデータを登録する仕組みにした。その情報は、カスタマイズ機能を使って、kintoneのポータル画面に直接グラフを表示している。これで、農家が手軽にビニールハウス内の温度を見られるようになった。

Meshタグで計測したデータをスマホ経由でkintoneに登録する

 ビニールハウスには電源がないので、晴れた日にはソーラーパネルからスマホに充電し、曇りの日や夜はモバイルバッテリーにつないでいる。以下にも手作り感漂うが、その分安い。センサーのMeshタグが7000円で防水防塵スマホが2万円、ソーラーチャージャーが7000円、モバイルバッテリーが3000円で、初期コストは3万7000円で済む。ランニングコストは格安SIMの安いプランを利用して、なんと月額300円で運用している。ここにkintoneのライセンス料をプラスしても、小規模農家でも手が出せるような低コストで実現できた。

晴れの日はソーラーパネルでスマホを充電する

「定期的にハウスに行く頻度が減ったのでガソリン代も減り、その間に他の作業ができるというメリットも出ました。自宅では雨なのにハウスでは晴れていたということがありましたが、kintoneでハウスが暑くなっているのを見て駆けつけて全滅を防ぐこともできました」(山口氏)

 kintoneは操作しやすく、シンプルな仕組みのアプリでも一定の効果が得られます、と山口氏は締めた。

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LINEとkintoneをHerokuでつないで会員情報とやりとりを管理する

 2番手はGlobalBの埴田翔貴氏。本社は長崎にあるIT会社で、普段はkintoneの開発やウェブサイトの製作を行っている。今回はネイルサロンからの依頼で、kintoneとLINEを連携させた事例の紹介をしてくれた。そのネイルサロンでは、ほとんどの顧客がLINEを利用しているため、LINEのリッチメニューから会員登録し、送受信をkintoneで管理するシステムを構築したという。

GlobalBの埴田祥貴氏

 まずは、LINE for Businessに登録し、リッチメニューを作成する。リッチメニューとは、トーク画面の下に表示されるメニューのことで、リンクを設定して予約ページやショッピングサイトに誘導できる機能のこと。そこで、会員情報の登録や更新ボタンを押すと、別で作っておいたWordpressのフォームが呼び出される仕組みだ。

 LINEでメッセージを送受信することもでき、LINE BotのWebhookに連携用プログラムのURLを設定し、kintoneにデータが登録される。Herokuはウェブアプリを実行するプラットフォームで、今回はLINEとkintoneの橋渡しに利用されている。kintoneのLINE送信アプリに入力すると、Herokuを介してLINEに送信される。

LINEのリッチメニューから会員登録フォームに飛ばし、そこからkintoneに情報を登録する

LINEの対応履歴がkintoneで確認できるようになる

「iPadのレジアプリ「ユビレジ」とも連動させました。LINEの会員と既存の顧客情報を紐付けて、一元管理できるようにしたのです。他にもECサイトとの連携できる部分があると思います。いろいろ連携できるサービスが揃っているのがkintoneの強みだと思います」と埴田氏は語ってくれた。

シフト管理やスタッフ管理など、さらにシステムを発展していきたいという

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業務効率化に着手する前に業務の整理・標準化・共有が必要

 最後はワクフリの髙島卓也氏。ワクフリは福岡と東京を中心にバックオフィスの効率化支援を行なっている会社だ。今回は、kintoneでテレワークを実現するための正しい手順を紹介してくれた。

「僕らは基本的にベンダーさんや代理店さん、ITツールを提案されている会社さんとユーザーさんの間に入り、どちらかというとユーザーサイドの外部CIOを担っています」(髙島氏)

ワクフリの髙島卓也氏

 今、新型コロナウィルスの影響で様々な企業がテレワークやITを活用して、業務改善を進めなければいけないと考えている。そのためのツールもあることは周知の通りだ。しかし、ツールがたくさんありすぎて、選べないという課題もある。

 無理矢理、試用してみてもそもそも使えず、通常業務が忙しいので使い方を調べる時間もない。最終的にシステム担当が頑張って導入しても、他の人と情報共有していないため、社内で使ってもらえないという失敗が多くなっているという。

「ステップを踏まないと業務効率化はうまくいきません。まず、業務整理が大事です。業務の手順がどうなっているかというのを把握するのです。無駄な手順を排除し、この手順なら誰でもできるよね、という標準化をします。そうすると属人化がなくなります」(髙島氏)

 そのルールを社内で共有したあと、やっとkintoneを導入し、業務効率化に着手できるという。このステップを踏まないと、使いづらいツールになって浸透せず、失敗してしまうのだ。

業務を整理し、標準化し、共有してから、やっと効率化が可能になる

 なんとワクフリには、経理と総務の担当者がいないそう。しかし、給与計算は月に10分で終了する。これは、全部システム化し、ボタンを押せば誰でもできるという環境を作っているから。

 kintoneにすべての情報が記録されているので、新型コロナウィルスの影響で突発的にテレワークになった時も、問題なく仕事を進められたそうだ。

マネーフォワードのサービスとkintoneを組み合わせてバックオフィスを自動化

「自社に完全にマッチするITツールはありません。ITが進化すれば、生活スタイルも変化します。業務スタイルも変化させていくことが必要です」と髙島氏は締めた。

自社に完全にマッチするツールはないので、業務スタイルも変化させる必要がある

■関連サイト

 3社とも、kintoneをはじめクラウドサービスの開発・導入支援を行っているので、豊富な経験に裏打ちされた事例紹介は説得力があった。1つでも便利そうだな、というポイントがあれば、ぜひ自社のkintoneで試してみることをお勧めする。

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