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業界人の《ことば》から第282回

いま、非対面の営業活動が注目を集める理由

2018年02月13日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「労働人口の減少に伴い、デジタルインサイドセールスはますます重視される。これを支える中核技術がAIになる」(ブリッジインターナショナルの吉田融正社長)

非対面の営業活動に注目集まる

 インサイドセールスに対する関心が高まっているという。

 インサイドセールスとは、電話、ウェブ、eメールを活用し、非対面で営業活動を行なうものであり、国土が広い欧米では多くの企業が積極的に導入。日本でも外資系企業を中心に、この仕組みが用いられてきた。だがここにきて、日系企業もインサイドセールスを積極的に導入する機運が高まっているという。

 2002年の創業以来、インサイドセールス事業を展開しているブリッジインターナショナルの吉田融正社長は、「Googleの検索ワードでは、『インサイドセールス』が、この3年間で10倍に増加している。またインサイドセールスの導入を検討している企業を対象に、当社が年1回開催している研究会への出席者数は、2014年には17社35人だったが、2017年11月の開催時には155社257人へと大幅に増加。ここからも高い関心が集まっていることがわかる」とする。

 インサイドセールスが注目を集める背景には、いくつかの理由がある。

 ひとつは人口減少に伴う労働力の減少。そして、2つめが雇用の流動化だ。「人口減少と雇用の流動化によって、従来のような属人的な営業モデルから脱却する必要がある。そこにインサイドセールスを活用し、デジタル技術を組み合わせることで、これらの課題を解決できる」とする。

 さらに、日本ではあらゆるものが普及し、成熟市場となっていること、ウェブやSNSを通じて商品に関する情報を事前に入手し、購入者が、営業担当者と接触した時点では6割の販売活動か終了しているとさえ言われる状況も、インサイドセールスを効率的に活用する機運を高めることにつながっている。

これからのインサイドセールス

 そして、インサイドセールスそのものも変化しはじめている。

 IT関連商材を例にとれば、従来のオンプレミスによるライセンスモデルでは、インサイドセールスによる見込み発掘、見込み育成、案件醸成、提案機会を経て、その後、フィールドセールス部門が提案活動やクロージング活動を行ない、購入後もクロスセールスやアップセルにつなげるという流れだった。一定規模の金額で商談が発生しやすく、これをまとめるために直接訪問するのがフィールドセールス部門の役割であり、そこに人的投資をすることも大切だった。

 だが、クウラドによるコンサンプションモデルでは、インサイドセールスによって提案機会を獲得したあとにも、提案活動やデモ、技術情報の提供、トライアル、評価といった繰り返しによるアジャイル型の商談が中心となる。そして、小さな商談から入り、販売した後にも何度も案件を提案し、アプリケーションの増加や処理量の追加などへとつなげいく必要がある。

 金額が小さく、接点の回数が増え、さらに技術情報まで提供しなくてはならないという環境の変化は、既存のフィールドセールスの営業手法では最適とはいえず、むしろ機動性が高いインサイドセールスがクロージングまでを担うといったことも起こり始めている。これも、インサイドセールスが注目を集めている理由のひとつだ。

 こうした営業活動を取り巻く変化のなかで、ブリッジインターナショナルが新たに取り組みはじめたのが「デジタルインサイドセールス」である。インサイドセールスに、これまで以上に積極的にデジタル技術を取り入れることで、最適な顧客対応を推奨し、営業活動のさらなる効率化を支援できるという。

 具体的には、ウェブなどのアクセス履歴を自動的に分析し、より確度の高い見込み客を発掘および醸成する「マーケティングオートメーション」機能の提供、ボイスチャットやビデオチャット、ファイル共有などを行ない、あたかも訪問して説明しているような環境を作り、会話の有効化する営業支援ツール「WebRTC」の提供、インサイドセールス業務のPDCAサイクルを一元的に管理し、営業活動に関わる対策の立案と実行ができるインサイドセールス支援クラウド型ソリューション「Funnel Navigator」の機能強化だ。

最大の進化はAIの活用

 そしてデジタルインサイドセールスにおいて、最大の進化がAIの活用となる。

 ブリッジインターナショナルでは、新たに「SAIN(サイン=Sales AI Navigator)」を開発。これがデジタルインサイドセールスの切り札となる。

SAIN

 「インサイドセールストップシェアの当社が、長期に渡る実績と知見、多くの企業からの声をもとに開発したのがSAIN。インサイドセールスの業務効率化と最大効果をもたらすことができる」と、デジタルインサイドセールスを担当する同社システムソリューション事業本部サービス企画室の今野恵子室長は自信をみせる。

 社内では、2年以上前から、AIの活用を試行しており、それをもとに改良を加えてきた。これを外部企業に対しても提供していくことになり、すでにNECが顧客との会話分析に、ブリッジインターナショナルのAIを試験導入しているという。

 SAINで提供するのは、「ターゲティング機能」、「モニタリング機能」、「コールナビ機能」の3つだ。

 ターゲティング機能では、顧客データをもとに、Azure Machine Learningを活用して、商談の成果があがった顧客データを対象に機械学習処理を行ない、類似するデータを抽出する学習済みモデルを生成。精度調整を行ない、ターゲティングデータとして利用することができる。さらに、この繰り返しを行なうことで、それぞれの企業に最適化した学習済みモデルを生成し、精度を高めていくことになる。社内に顧客データを持たない企業に対しては、帝国データバンクと提携し、同社のデータをもとにしたターゲティング機能の提供も行なうという。2018年4月から提供を開始する予定だ。価格は個別見積もりとなっている。

 モニタリング機能は、コールセンターにおける会話の改善指導などに利用するものだ。ダッシュボードによる可視化では、商談の実績を様々な角度から分析。訴求ポイントをカバーした会話ができているか、提案先の顧客の発話の比率はどれぐらいか、といったことを視覚的に表示。さらに、会話の内容をテキスト化することができるため、これをもとにして、スーパーバイザーによるヒアリングの工数を減らすことができるほか、オペレータにフィードバックしたり、共有したりすべき箇所をハイライト表示して、対話品質の向上に結びつけるといった活用が可能だ。

 「フィールドセールスの場合には、その場で音声を録音することができないため、効果的なセールストークは、現場に同席して先輩から学ぶしかない。だが、インサイドセールスでは、すべての対話を録音しているため、成約に必要な言い回しを抽出するなど、営業活動の品質向上にもつなげやすいと考えた。このノウハウをフィールドセールスの営業マンの育成にも活用することができるだろう」(吉田社長)とする。モニタリング機能は、2018年4月から提供を開始し、個別見積もりとなっている そして、最も挑戦的な取り組みなのが「コールナビ機能」だ。

 案件発掘や醸成が上手く出来ている会話をAIが学習。相手の反応に応じて、次に会話すべき内容を自動的に表示し、会話品質を高めるとともに、効果的なインサイドセールス活動を支援することになるという。対話中に、深堀りすべきポイントであるとAIが判断すれば、ディスプレイ上に緑色のタグを表示して、対話を促進させたり、阻害要因やマイナス要因と判断すれば、赤いタグを表示して、対話の方向性を変えたりといったことを促す。

 「質問や注文を受け付けるインバウンド型のコールセンターであれば、お客様からの問い合わせがベースとなるため、状況を整理することで想定問答が作りやすく、AIも活用しやすい。だが、こちらから能動的な営業活動を行うアウトバウンド型コールセンターでは、働きかけに対する反応や回答をもとに判断するため、想定問答が複雑化しやすい。曖昧な返事に対してどう判断するかが難しい。

 そこにAIを活用することで実用化が図れると考えた。会話内容を自動認識して、次にどんなトピックに触れれば、商談獲得の確度が何%高まるかといったことを示しながら、オペレータを支援することになる」(ブリッジインターナショナルの今野室長)という。

 2018年夏にはパイロット版の提供を開始し、2019年には正式版をリリースする予定だ。

ターゲティング機能で提供されるダッシュボード
会話内容をテキスト化して表示する機能

デジタルインサイドセールス事業は
しくみと道具の提供

 ブリッジインターナショナルは、「インサイドセールスの総合ソリューションプロバイダー」として、インサイドセールスの導入と活用を、「しくみの提供」、「リソースの提供」、「道具の提供」という3つのソリューションの組み合せで提供しており、アウトソーシングの受託や自前でインサイドセールスを導入したい企業に対しても、独自のツールを提供してきた。今回のAIを含むデジタルインサイドセールス事業は、「しくみの提供」および「道具の提供」となる。新たな時代の営業活動に不可欠なツールとしても、AIの活用はこれから注目を集めそうだ。

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