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業界人の《ことば》から 第252回

シャープは有機ELをテレビの本命とは考えていない

2017年07月04日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「4K有機ELテレビと4K液晶テレビを比較すると、明るさ、消費電力、コスト、長期信頼性、薄型化などにおいて優位なのは液晶テレビ。いまの有機ELテレビは、10年、20年という長い期間を保証できるのか」(シャープ・戴 正呉社長)

 シャープが、有機ELテレビの開発を進めていることを明らかにした。

 2017年6月20日に、大阪府堺市のシャープ本社において開催した第123期定時株主総会および普通株主による種類株主総会、経営説明会のなかで言及した。

 シャープ ディスプレイデバイスカンパニーの伴 厚志副社長は、株主の質問に答える形で有機ELへの取り組みについて説明。「シャープは2016年9月に、有機ELに関する重要な決断をした。現在、それに基づいてパイロットラインの整備を進めている」と前置きし、「シャープは、有機ELに関しては1992年から開発をスタートしており、韓国勢よりも長い歴史を持つ。だが、事業化に向けた投資をしてこなかった。シャープが持つオリジナリティーのある技術を用いて堺で開発を進めており、まずはスマホ、ノートPC向けに技術を立ち上げていくことになる。また、スマホ向けやノートPC向けと並行して、テレビ向け有機ELパネルにも取り組んでいく。これは十分な競争力を持てるものだと確信している」とする。

 スマホ向けの小型有機ELパネルはサムスンが先行、テレビ向けの大型パネルはLG電子が先行している。日本では、東芝、ソニー、パナソニックが、今年3月~6月にかけて有機ELテレビを相次いで発売したが、すべてがLGディスプレイから供給を受けて製品化したものだ。

 一方、ノートPC向けの中型パネルは誰も手つかずの分野であり、先頃、日の丸有機ELの旗手として注目を集めるJOLEDが、21.5型の量産を開始したところだ。シャープはこれらすべての領域に有機ELを展開しようというわけだ。

 「パネルサイズが大きい有機ELテレビ向けには、現在LGディスプレイの1社だけがパネルを供給している状況だが、シャープは日本の会社である。日本の技術を結集して、有機ELテレビを開発したい」と述べた。

 だが、シャープが有機ELをテレビの本命に据えているのかというとそうではない。

液晶の優位点は価格と寿命

 やはりシャープはテレビの本命を液晶だと考えている。

 シャープの戴 正呉社長は、事前に用意したパネルを使いながら4K有機ELテレビと4K液晶テレビを比較。「明るさ、消費電力、コスト、長期信頼性、薄型化において、4K液晶テレビの方が優位性がある」と語り、「シャープは液晶からスタートした会社であり、その生産拠点である亀山工場は有名である。そして、様々な技術やノウハウを持っている。シャープの液晶パネルは、多くの顧客から高い信頼と評価を得ている。これからも、液晶テレビの新商品をずっと開発していく」と、液晶を軸にしてテレビ事業を展開していく姿勢を示した。

 戴社長は液晶が優位な理由をいくつかの観点から示してみせる。

 「いま、55型と65型の有機ELテレビがあるが、80万円もの価格となっている。これでいいのか」と、まずは価格面での液晶のメリットを強調。また、同じ有機ELテレビを製品化したとしても「いまの有機ELテレビは、たくさんのICを使っている。シャープは単独でLSIを開発しており、来年秋にはこれを完成できる。それによって、大幅なコスト削減ができる」とする。

 さらに「現在スマホに採用されている有機ELパネルは、1年後には日焼けして、変色し、見づらくなってしまう。テレビは何年使うのか。1年や2年なのか。それとも10年、20年使うのか。有機ELはそれだけの長い期間を保証できるのか」と疑問を呈し、「シャープの液晶テレビは、10年保証できる」とする。

 有機ELの特徴とする薄さについても、「シャープの液晶は有機ELと同じ」などとし、「いまは、液晶テレビと有機ELテレビを見比べることができる場がないが、これを比較するためのロードショーをやる考えである」と、液晶の優位性に自信をみせた。

 そのほか「シャープには、フリーフォームディスプレーといった形状を問わないものや、IGZO技術もある」とも語る。

 そして、8Kについても液晶の優位性を示す。

亀山工場は現在も設備を投入している

 NHK出身で、このほどシャープの取締役兼執行役員に就任した西山 博一氏は「シャープがこれから力を入れていくのは8Kである」とし、「すでに、8Kの試験放送が行なわれているが、受信機、モニターを提供しているのは、シャープ1社だけである。この実績をもとに、シャープは2018年からの本放送開始に向けて製品を投入していく。また放送分野向け以外にも、医療分野や教育分野にも大きなチャンスがある」と発言。ここでも液晶パネルだけが8K対応になっていることを示す。

 シャープでは、液晶パネルの生産体制の強化にも前向きだ。

 戴社長は「液晶は新たな技術を研究開発しないと撤退につながってしまう。また、亀山工場の液晶生産設備は、世界で一番古い設備であり、これを更新しなくてはいけない。シャープの液晶事業は全売上高の約40%を占める。これをやめると、もっと赤字になる。だが、がんばれば新たな商品を作り、原価率も改善できる」と語ったほか、「これからは日本の企業だけでなく、米国や欧州、中国でも8Kが使われるようになる。そうした流れを見れば、新たな液晶パネルの工場を作ることは当たり前である」と語る。

 これを補足するように、シャープ ディスプレイデバイスカンパニーの伴副社長は、「液晶パネルについては、亀山工場で引き続き新たな技術を開発している。亀山工場は2005年から稼働しているが、新たな技術に対応する設備を投入しており、オリジナル性が高く、優れた技術のパネルを生産しており、これは世界トップの技術だと確信している」とする。また「高いエンジニアリングを持ち、これを亀山以外にも展開していくことができる。マーケットがあり、新たな工場が必要であり、そこにインセンティブが得られると判断すれば、エンジニアリングの力を活用して広げていきたい。液晶事業は実力がある事業。チャンスを逃さず、さらに大きな事業に発展させていく」と述べた。

 シャープにとって液晶事業は相変わらず柱であることに変わりはない。

 「シャープは過去6年に渡って、液晶が大赤字であった。だが、液晶は駄目な事業ではない。赤字なのは経営体制の問題だった。私は、2年から4年で黒字化すると言ったが、これを3ヵ月で黒字化した。昨年度後半からシャープのディスプレー事業は黒字であり、このことからもわかるように、社員の問題ではない」と戴社長。

 「シャープにとっては、液晶は大切な事業である。だが、日本国内では強いが、グローバルでは弱い。重要な顧客との関係を強化し、液晶事業を拡大する」と意気込む。

 有機ELが登場しても、シャープにとっては、あくまでも液晶事業が主軸だ。

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