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さくらの熱量チャレンジ ― 第14回

新聞販売店を起点としたラストワンマイル事業で最新のITを試す

高齢者と家族をつなぎたいMIKAWAYA21にはさくらのIoTが必須だった

2017年03月30日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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「まごころサポート」という名称で、高齢者向けのお手伝いサービスを手がけるMIKAWAYA21(みかわやにじゅういち)が、現在開発しているのはボタン1つで生活情報を得られ、家族ともコミュニケーションをとれる「MAGOボタン」だ。MIKAWAYA21の神谷智子氏に事業概要とさくらのIoT Platform採用について聞いた。

21世紀にお互いが助け合う社会を取り戻したい

 MIKAWAYA21の「まごころサポート」は、30分500円で高齢者のさまざまな手伝いを提供するサービス。MIKAWAYA 21の創業者である青木慶哉氏は、奈良県生駒市の新聞販売会社を経営していたときの経験を元に、まごころサポートの事業を全国に展開している。こうした事業を立ち上げた背景について、MIKAWAYA21の神谷智子氏はこう説明する。

「新聞配達員としてスタッフが集金に伺うと、お年寄りからいろいろな困り事が寄せられるのですが、新聞配達員としてお年寄りをお手伝いすることはお仕事ではない。そもそも、購読率を上げたり、解約率を下げるため、洗剤や野球のチケットなど物品を配るのが当たり前の業界で、サービスを売るという発想がない。でも、青木は逆にこれをお仕事にしてしまえばいいのではないかという発想に行き着いたんです」(神谷氏)

MIKAWAYA21 経営企画部 部長 神谷智子氏

 青木氏は、自身が所属している新聞配達店でまずはサービスをスタートし、配達の担当者が配達の空き時間を利用し、まごころサポートのサービスを提供した。実際に生駒市で試された結果、好評だったため、青木氏は2012年8月に事業化を全国で展開すべくMIKAWAYA 21を創業したという。

「もともと日本って、こういうお互いを助け合う社会が普通だったんですよね。だから、21世紀にもう一度こうした助け合い社会を取り戻したいという思いで、サザエさんに出てくるサブちゃんになるべく、三河屋を社名に入れたんです」(神谷氏)

 提供するのは、お買い物の代行、電球交換や家具の移動、庭や家の中のお掃除、布団干し、パソコンやスマホの設定などの軽作業など、息子や孫がいれば済むようなちょっとしたことだ。特殊な技術がなくてもできることばかりだが、お年寄りにはありがたがられるという。

「雪国の場合は、トレーニングの後、スタッドレスタイヤの交換などをできるようにしています。一方で、90歳以上でも元気なお年寄りの多い沖縄では、困り事の解決より、むしろ話し相手になってほしいとか、歌を聴いてほしいとか(笑)。地域によってニーズは異なります」(神谷氏)

新聞販売店のインフラと人材は全国津々浦々にある

 MIKAWAYA21のビジネスは、新聞販売店がサブ事業として「まごころサポート」を提供するのをサポートするスキームで構成されている。具体的には、営業や集客の支援、配達員の教育、チラシのデザインを新聞販売店にサービスとして提供する。新聞販売店に、ハウスクリーニングやジュニア/シニア向け学習塾の研修、業務効率化を実現するテレマシステムの販売など、実践的な知識や営業ノウハウを学んでもらうわけだ。

「新聞業界自体は購読者がどんどん減っている斜陽産業で、新聞販売店のオーナーさんも悩んでいる。店舗はあるし、新聞を配る配達員もいるけど、朝刊と夕刊を配ったら、その間が完全にアイドルタイムになってしまうんです。だから、配達員をフル活用できないし、かといってパートを募集しても応募が来ないのが課題です」(神谷氏)

 もちろん、配達能力を活かしてウォーターサーバーや牛乳の宅配に乗り出す販売店も多いが、初期投資がかかるのが難点だ。でも、まごころサポートであれば、販売店が購読者のリストを持っており、チラシによる宣伝も自前で行なえる。また、配達員も顔なじみというパターンも多いため、利用者も家に人を上げる抵抗感が低い。

 こうしたラストワンマイル事業は、コンビニエンスストアや流通業者、家事代行業者、介護事業者なども積極的に取り組んでいるが、まごころサポートの場合、新聞販売店というすでにインフラと課題にぐさっと突き刺し、作業をマイクロタスク化したところが大きい。

「新聞販売店って全国津々浦々にあるんですよ。山奥にもあるし、離島にもあります。人材も今配達してくれている人に、そのままやっていただければいい。まごころサポートは、こういったすでにあるリソースをフル活用できるので、新聞販売店にとってもメリットが大きいんです。競合するようなところも出てくるでしょうが、30分500円という価格で提供するのは難しいと思います。無料にするとかえって仕事を頼みづらいので、30分500円がちょうどいい」(神谷氏)

お年寄りでもボタンだったら親しみやすい

 まごころサポートの延長として、MIKAWAYA21はドローンによる物流にもチャレンジしている。同社は、昨年NTTドコモやドローンメーカーのエンルートとともに、2.5km離れた離島に日常品を届ける実証実験に参加したが、そのときに作ったのが「MAGOボタン」の原型だ。離島の家に通信デバイスを設置し、ボタンが押されたら、その家にコールバックし、買い物の依頼内容を確認できる仕組みだ。

「お年寄りってやってほしいけど、遠慮してしまうことがけっこう多いんです。でも、ボタンという形であれば、意外と遠慮なく押せる存在であることが実証実験でわかりました。だったら、ボタンで単に日常品が発注できるだけじゃなくて、より便利な機能を持たせられるのではないかと思って開発しているのが『MAGOボタン』です。シンプルなんだけど、いろいろなことができる装置として作っています」(神谷氏)

実証実験で使ったMAGOボタンの原型

 開発中のMAGOボタンは、音声の入力・出力の機能が用意されており、「地域にひもづいた天気・災害情報の発信」「家族とのコミュニケーション」「自治体と連携した暮らし情報の発信」「相談事を頼めるコンシェルジュ」など4つの機能を備える予定となっている。

 やはりユニークなのは、双方向のやりとりをボタン1つで実現するところ。たとえば、災害情報の通知の後、ボタンを押すことで安否確認になる。また、家族とのコミュニケーションにおいては、家族側はスマホ用のアプリを導入し、スタンプを送れば、ボタンがスタンプの内容を発話してくれる。実家の方は、時間帯ごとに送れるスタンプを決めることで、ともかくボタン操作だけでやりとりができる工夫を拡げていくという。

「やはりお仕事や子育てしている家族は、親のことは気になるけど、電話するには構えてしまうところがありますよね。そんな家族と実家同士でもライトなコミュニケーションと安否確認ができるのを目指しています。さらにコンシェルジュの機能を使えば、ボタンを2回押せばまごころサポートのコールセンターにつながるようにしたいと思っています」(神谷氏)

値段もリーズナブルで契約も不要。これしかないと思った

 こうしたMAGOサービスを実現するに当たっては、やはり通信が鍵になる。LTEベースの幅広い人口カバー率やリーズナブルな料金、そして開発の短縮化に寄与する便利なプラットフォームサービスといえば、さくらのIoT Platformに行き着くのは、ある意味必然の流れかもしれない。さくらのIoT Platformであれば、最初からMAGOボタンに通信モジュールを組み込むことができる。契約も不要で、家に置いたらすぐに使えるというMIKAWAYA 21が想定した形態でサービスが提供可能だ。

さくらインターネット loT事業推進室 部長 山口亮介氏と神谷氏

「高齢者の自宅にインターネット回線を引くところからスタートするのは非現実的。やはり電源を入れたら、自動的に起動して、使ってもらうようにするためには、やはりSIMの刺さっているモジュールじゃないと難しい。でも、既存のキャリアのサービスだと高いし、契約が必要になります。その点、さくらのIoT Platformは値段もリーズナブルだし、契約も不要。もうこれしかないなと思いました」(神谷氏)

「MIKAWAYA21の方々も、システムを作ったり、運用したいわけではない。その点、さくらのIoT Platformは、セキュリティも、安全な通信路も、データの保存場所もすべて入っています」(さくらインターネット 山口亮介氏)

 今後は地域の学生達も巻き込んで、こうした高齢者のサポートを盛り上げていく予定。たとえば、MAGOボタンが押されたら家の近くの学生が手伝いを得るようなサポートの仕組みも作っていく予定だ。

「地域を活性化して、おじいちゃん・おばあちゃんが安心して暮らせる世の中を作りたいというのが事業理念。これを実現するためのものであれば、いろいろなプロフェッショナルと組んでいきたいと思います」(神谷氏)

(提供:さくらインターネット)

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