「VOX MV50」その3 各キャラの音が素敵
肝心の音が気に入らなければ持ち歩けたって意味ないわけですが、SoundCloudに上がっているサンプルを聴く限り、これがすごくいい。真空管アンプならではの、ジワーっと来る歪感であふれています。
接続するキャビを変えたりしながら、いくつもサンプルは上がっているのですが、ここでは各キャラの美味しさがよく出ているトラックを1個ずつ抜き出しておきます。あとで全部聴いてください。
まずV「AC」はジ・エッジにブライアン・メイにビートルズと、さまざまなタイプ、さまざまな世代のギタリストに愛用されてきた、あのAC30の、ACです。チャリーンとしたクリーンから、ジャキーンとしたクランチサウンドまで。そういえばVOXは今年設立60周年なんだとか。おめでとうVOX!
次に「ROCK」。これはマーシャル系統らしく、よく歪んでます。1970年代のロックサウンドから最近のモダーンなハイゲインサウンドまで、設定次第でフォローできる範囲も広そう。
そして「CLEAN」。これはフェンダー系統ですね。シャッキーンとしたクリーンサウンドから、軽く歪ませたブルージーなサウンドまで。クリーンと言いながら、ぶっとい歪みがいい感じなので、これも使える範囲は広そうです。
「VOX MV50」その4 キャラで中身も違う
いまどきのヘッドアンプらしく、MV50にはライン/ヘッドフォン出力もあります。もちろんキャビネットシミュレーターを経た音で、スピーカーの前にマイクを立てて録ったような音が、ヘッドフォンでもラインでも得られる。これは夜間の練習やレコーディングにも便利でしょう。
おもしろいのは、操作系や内部回路がキャラで違うこと。ACとROCKのメインノブは、GAIN TONE VOLUME。バックパネルにはインピーダンスの切替スイッチがあり、真空管パワーアンプが接続したスピーカーの負荷に影響されて歪む感じを再現する、VOXお得意のバルブリアクター回路も入っています。
一方CLEANには、このバルブリアクター回路がありません。メインパネルのノブも、TREBLE BASS VOLUMEで、GAINがない。ACとROCKはGAINで歪む量を調整して、最終的な音量はVOLUMEで決めるわけですが、CLEANは歪の量=ボリュームという、昔ながらの操作系です。歪みはするけど、そのときは最大音量だぞ覚悟しろよ、というワイルドなものになっているはず。それでバックパネルにはインピーダンス切替スイッチの替わりに、アッテネーターが入っているわけです。ん……? あれっ?
ってことはCLEANのインピーダンスは切替はどうするの? 切替なかったら壊れませんか? CLEANはカスケード接続できないってこと? いろいろ謎です。ということでメーカーの方に問い合わせてみました。
まずインピーダンスは4~16Ωまで自動切替なのだそうです。ACとROCKにその切替スイッチがあるのは、バルブリアクター回路の動作設定用。接続するスピーカーに合わせないと、想定通りのサウンドにならないからだそうです。そして、ここでインピーダンス設定を間違えてもアンプが壊れることはないと。なるほど。
CLEANには、そのバルブリアクター回路が載っていないので、インピーダンス切替スイッチもないと。リアクター回路を載せなかったのは、クリーンサウンドを得るために、ここでパワーアンプの歪感を出したくなかったのと、接続するキャビで音が変わり過ぎないようにするためということです。
それにそもそもCLEANは、Nutubeを使う設計上の目的も違うそうです。もちろんプリアンプとしても使ってはいるものの、目的はパワーアンプやパワー管の歪みの再現にあるのだとか。それは歪ませなければ正確な波形は出る、しかし強く弾けばナチュラルなコンプレッションがかかるという回路で、そこに入る信号の量をVOLUMEノブで調整する仕組みになのだそうです。
クリーンは単にGAINを抑えただけのものと思っていましたが、中身も動作も違うとなると、これは選びがいもあるような気が。つまり歪みキャラのほかにCLEANも欲しいなあと。参りましたね。