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ポタ研 2017 ― 第2回

マニアックなNutube自作アンプ試聴会を徹底取材

新世代真空管「Nutube 6P1」の自作アンプがポタ研2017に集結

2017年02月28日 14時44分更新

文● ゴン川野 編集●ASCII

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青く光輝くNutube内蔵のポタアンが勢揃い

 2月18日に東京・中野サンプラザで行われた「ポタ研2017冬」では「ヘッドフォン祭」や「ポタフェス」と比較してマニアックな試作機や参考展示が多かった。しかし年々、その雰囲気が薄くなり一般ユーザーから見れば入りやすい、マニア目線から見ると普通の展示会になってきた。これではいけないという開催者の意向もあってか、今回はところどこでマニアックな展示がおこなわれていた。

 中でも異彩を放っていたのがKORGの作った三極管構造の小型オーディオ用真空管「Nutube」を使った自作ヘッドフォンアンプ試聴会である。SoundPortionとKORG Nutubeとポタ研がコラボして、広く一般からNutubeを使った自作ポタアンを募ったのだ。

5V〜80Vで駆動できる新世代真空管「Nutube 6P1」

 そもそもなぜいま真空管なのか? きっかけはKORGがノリタケ伊勢電子が作っている蛍光表示管に目を付けたことだ。三極管と同じ原理で作動しているので、文字を表示するためにかける電圧の替わりに音楽信号を流して増幅させようという発想からNutubeが製品化された。スリムで軽量であること以外に、リニアリティに優れた特性を持ち、連続期待寿命3万時間の高信頼、長寿命を実現。そして従来の真空管の2%以下の5V〜80Vで駆動できるため、電池駆動ができポタアンに組み込むことが可能になった。もともとは楽器用がメインと考えられていたが、この特徴により俄然、オーディオ用として脚光を浴びた。「春のヘッドフォン祭2016」に試作機を展示したことで我々の目に触れることになった。そして9月23日より一般向けにも直熱式双三極管として「Nutube 6P1」を販売開始。

 従来もミニチュア管を使った真空管ポタアンは存在していたが、YAHAアンプと呼ばれる12Vという低電圧で駆動するなんちゃって回路を採用したものが多かった。今度の「Nutube 6P1」はもともと5Vで動くように設計されているため、YAHAアンプとは一線を画すものになる。しかし、本機も残念ながら電圧増幅管のようなゲインは稼げない。ゲインは5倍程度なのでオペアンプやダイヤモンドバッファなどと組み合わせて使うことになる。それでも本物の真空管の音色が楽しめるのがミソである。

 ほとんどの基板、または部品キットはウェブで販売されておりその完成度は高い。キットの価格にはNutube 6P1は含まれない。

ALTOIDSミント缶サイズのポタアンが勢揃い

 私が試聴会場に到着した時にあったNutube内蔵のポタアンは9種類だった。しかも、その場に多くの設計者が集まっていた。またKORG本家から据え置き型のヘッドフォンアンプも飛び入り参加していた。このアンプはもともとスピーカー用なのでヘッドフォンを鳴らすのは本意ではないという話も耳に挟んだ。1人で複数製作した人もおり、最終的に11個のヘッドフォンアンプを並べて集合写真が撮影された。こんなに揃うとは思っておらず自作マニアの中でNutubeの注目度が高いことを実感した。

その音は基本的には歪みが魅力の真空管サウンド

 Nutubeを使うポタアンということで、自ずと音の傾向は似かよってくる。音量を上げるにつれて低域と高域に歪みが加わってくる真空管サウンドである。真空管アンプの中には歪みを抑えて、打倒ソリッドステートというモデルもあるが、今回に限って言えばいかに心地よい歪みを乗せるかが腕の見せ所だと思う。なるべくNutubeだけで増幅するのか、ハイブリッドらしい音に仕上げるかも問題だ。さらに音質と連続使用時間のどちらを優先させるかとか。まず、音を聴かせてもらった。

まるは「KSK-08shirokan」

 まるはさんが制作した回路でALTOIDS缶に収められたポタアンプを最初に聴いた。9V電池で駆動している。ボーカルが生々しく、ニュアンスが出る。ホットな音色。真空管ぽい!

SoundPortion「Handles」

 出展ブースであるSoundPortionが設計したALTOIDSサイズのポタアン。フラットバランスで、柔らかい音色。同社のWebサイトで販売予定。電源は9V電池で、約25Vに昇圧して使っている。SoundPortionはバランスヘッドフォンアンプで有名な「キチクロZZ」をfixerさんとのコラボで製品化しているSHOPなのだ。

 SoundPortionが製作した回路が違う5種類のポータブルアンプ。それぞれに色の名前が付けられている。かなり傾向の違う音がするモデルもあった。私の好みは緑と白だった。

プロコムパーツドットコム「OLDTIME NTUBE」

 お弁当箱ポタアンキット「OLDTIME」(19800円)のオプションとして「Nutube」を駆動するための基板キット(3980円)を加えたもの。駆動する電源の違いで2つの方式を選択できる。オペアンプはBB/OP275GPを採用。キットはプロコムパーツドットコムで販売中。ワイドレンジで細かい音を聴かせてくれる。音色はホットで中低域に厚みがある。特に低域の歪みっぽい音が真空管らしい感じを演出していた。

jinson「Nutubeヘッドフォンアンプ」

 jinsonさんが設計した基板のキットをALTOIDSサイズ缶に収めたポタアン。電源は9V電池で、バッテリー残量をLEDの輝度で知らせてくれる。スイッチサイエンスで基板(1280円)を販売中。高域は鮮明でシンプルな音。ボーカルが心地よい。低域は真空管らしい歪みが感じられた。

MASAHIRO「アルトイズ缶サイズのヘッドホンアンプキット K-0007」

 MASAHIROさんが設計したヘッドホンアンプキットを組み立てたもの。キットには必要な部品が含まれ、後はALTOIDS缶と「Nutube」を用意すれば組み立てられる。オペアンプの交換で手軽に音質の変化が楽しめる。今回はアナログデバイセスのOP275GとMUSE02を使った2モデルが展示された。頒布物のサイトにて7280円で販売中。MUSE02の方が全体的にやさしい音で、低音がやや膨らむ。OP275Gはクセがなくバランスのいい音で聴きやすかった。

jinson「TDA1543 Nutube ヘッドフォンアンプ for Raspberry Pie」

 Raspberry Pie 2、3用のNOS DACで、「Nutube」のヘッドホンアンプ付きDACとして使える。他のキットとは一味違う音だった。理由としては試聴にAstell&Kern「AK380」のラインアウトを使ったのだが、このキットだけは音源からDAC、アンプまでセットになっていたため試聴条件が違っている。粒立ちが良く分解能の高い音でハイレゾ音源と相性が良い音だった。低域は幾分か膨らみがあり真空管の片鱗を見せていた。スイッチサイエンスにて基板(1980円)のみを販売中。

ArtifactNoise「Nutube式卓上エナジーアンプ」

 Intel Edisonな博士 が設計製作している立派なケースに収まった卓上ヘッドフォンアンプ。電源は12Vで、ケースのサイズはおよそ130×90×40mm。ウェブサイトArtifactNoiseで完成品(27900円)を販売中。S/N感が良く繊細で情報量が多い音。フラットバランスで低域はほとんど歪まない。イヤフォンだけでなく、ヘッドフォンもパワフルに鳴らしてくれそうだ。

ぽっけ「Nutube ポータブルアンプ」

 ぽっけさんが設計。スイッチング電源により、75Vを作り出して「Nutube」を駆動する本格派のポタアン。ニッケル水素電池2本で23時間駆動できる。ALTOIDSサイズ缶に収められる基板(1500円)、手巻きコイル用のコア(500円)を販売予定。エネルギー感に溢れる音で、低域の押し出しがいい。粒立ちが良く高域のキレもあり、他のポタアンとは明らかに違う音だった。

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