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『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画 ― 第12回

田中浩也准教授(慶應大学SFCソーシャルファブリケーションラボ代表)、青木俊介氏(ユカイ工学CEO)が語る

Makerムーブメント最前線~これまでの10年とこれからの10年

2015年12月19日 18時00分更新

文● 二瓶朗 編集●村山剛史/ASCII.jp

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慶応大学SFCソーシャルファブリケーションラボ代表の田中浩也准教授(中央)、ユカイ工学CEOの青木俊介氏(右)にお話を伺った。背後には田中准教授の研究室で作られた建築用巨大3Dプリンター“ArchiFAB”が

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 コンピューターとインターネットに加えてデジタルファブリケーションの発展によって、膨大な資金とノウハウが必要とされる製造/流通工程が安価になりつつある。結果、個人単位でのモノづくりが可能になる。そのときに必要とされるのは、プロジェクトの立案・牽引もこなせるエンジニアだろう――。

 いまIoT(インターネット・オブ・シングス)が、産業界でもいちばんの注目テーマとなっている。一昨年あたりから読者の興味も高い「Makerムーブメント」も、その導火線になるとともにクラウドファンディングとも呼応しながら、事実、世界を変えはじめたようにも見える。今回は、そうした最前線で実際に活躍する2人に、その魅力と可能性を語っていただく。聞き手は角川アスキー総研主席研究員の遠藤諭。

対談場所は横浜スタジアム至近の「慶応大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ横浜拠点」
ラボ内部には切削機械や3Dプリンターが所狭しと並んでおり、まさにMakerムーブメントの最前線
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3Dプリンターを越える万能工作機械を開発中!

遠藤諭 お2人は、いまそれぞれ何に取り組んでいらっしゃるんですか? まずは自己紹介的にお話いただければと思います。

田中浩也 昨年より、本日の対談場所でもある「慶応大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ横浜拠点」をラボ代表(所長)として本格的に切り盛りしています。

 ここはMakerムーブメントやFab社会を技術面と社会面から研究する“ファブ地球社会創造拠点”でして、文部科学省のCOI STREAM(革新的イノベーション創出プログラム)の1つとしても採択されています。現在は、多数の大学と10社超の企業がここに来て、未来の3Dプリンターの開発やその制度、デザインの研究に励んでいます。

田中浩也……慶応義塾大学環境情報学部准教授。慶応大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ代表。新しいものづくりの世界的ネットワークである「ファブラボ」の日本における発起人。角川インターネット講座では第10巻第5章「メイカー運動とファブ社会」と、第15巻第5章「オープンソースハードウェアが自己増殖する未来生態系」の2本の論考を寄稿した

 これまでラボでは、場面や用途に合わせて、大小さまざま、素材も多様なデジタル工作機械を日々開発してきましたが、それらの集大成として力を入れているのが「IoTファブリケータ」という万能工作機械です。

 これは3Dプリンターやデジタル切削機械からハンダづけまで全部集約したオールインワン機で、今いわゆる「IoTプロダクト」と呼ばれているものの試作が、1台で(ほぼ)すべてできることを目指している機械です。

 3Dプリンターとの差分で言えば、たとえば現在の3Dプリンターはいわゆる形状だけしか作れません。しかしIoTファブリケータでは、センサーやRFIDタグなどを埋め込んだものを一回でつくることができます。

 そしてモノの使用のされかたがセンサデータを通じてサーバーにあがってくれば、作ったモノをユーザーがどう使っているかを、メイカーの側が情報として観察することができます。

 どこが壊れやすいのか、どれくらい使われているのか、そういう情報が逐一フィードバックされれば、改良も容易になるので、「つくる」-「つかってみる」-「それによって問題点が分かる」というサイクルも回りやすいんじゃないかと思うのです。すでにウェブサービスでは、アナリティックなどが当たり前になっていますよね。

「IoTファブリケータ」にいたる過程で、試作のひとつとなった3Dプリンター“NU-400”(設計:増田恒夫)

 実際に樹脂の3Dプリンターでプリントの途中にRFIDタグを1つ埋めこむ様子のムービーがこちらになります。単純な仕組みですが、実はこれだけでも、取扱説明書でも、設計図でも、ライセンス情報でも、スマホで実物から取り出すことができて、いろいろなサービスの可能性があるのです。

 また、たくさんのパーツの組み立ててつくられるもの、たとえばロボット等を組み立てていると、どのパーツがどれやらわからなくなりますけど――各パーツにRFIDタグが埋め込まれているので、全パーツを、まるで「ファイル」のように管理できるようになります。

 今後は、圧力センサーや温度センサーを埋め込む機構を開発したいと思っています。Exiii(筋電義手開発のスタートアップ)さんやSHCデザイン(義足開発の会社)らと連携して、メイカーたちのデジタル工作機械に対する要求をヒヤリングしたり議論したりもしています。彼らのようなものづくりを支援したいのです。

IoTタグ埋め込み3Dプリンターのデモ

家ではスマホを使わなくても済む生活を
コミュニケーションロボット「BOCCO」

青木俊介 私は「BOCCO」というコミュニケーションに使えるロボットを開発・販売しています。

 役割としては主にメッセンジャーなので、スマホでできちゃうことかもしれませんが、たとえば子どもにスマホを与えるのは……とか、スマホは苦手という年配の方もいらっしゃるので、そういう方でも24時間メッセージがやりとりできてコミュニケーションを図れればいいなと考えています。

青木俊介……ロボッティクスベンチャー・ユカイ工学CEO。コミュニケーションロボット「BOCCO」などロボットとコミュニケーションをつなぐ機器の開発に力を注いでいる。東京大学在学中にチームラボを設立、取締役CTOに就任。2008年、ピクシブ取締役CTOに就任し、pixivの急成長を支える。2015年、グッドデザイン賞審査委員に就任

 スマホは確かに便利ですが、家族が一緒に家にいるのにみんなスマホを持って別々の画面を見てるのってどうかと思うんですよ。IoTで身の回りにあるいろいろなデバイスをコントロールできれば、家の中でスマホを使わない生活っていうのもできるんじゃないかなと。

 ロボットがいると「明日の天気を教えて」と言えば天気予報を、「明日の予定を教えて」と言うと家族の明日の予定を教えてくれる。あとは「お湯を沸かして」と言えばお風呂のお湯を入れてくれたりとか。そういった実験をハウスメーカーさんともやっています。

コミュニケーションロボ「BOCCO」。1人で留守番する子どもを見守ったり。スマホと連携して外出先の両親などとメッセージのやりとりができる。

(次ページでは、「キーワードは「2005年」」)

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