このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画 ― 第13回

角川歴彦会長が語る『角川インターネット講座』

ジョブズ亡きあと、インターネットはどこへ向かうのか 角川歴彦会長

2015年12月30日 18時00分更新

文● 盛田諒 写真●曽根田元 編集●村山剛史/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

〈連載一覧はこちら

 村井純、まつもとゆきひろ、川上量生、近藤淳也(敬称略)──各界のトップランナーを監修に迎え、インターネットの歴史をまとめた大著『角川インターネット講座』(全15巻)。刊行の指揮をしたのはKADOKAWAの角川歴彦会長だ。

 角川会長はメディアミックスの雄である。

 テレビドラマの全盛時代、その情報を雑誌「ザテレビジョン」として取り込み、あるいは1980年代に小説やコミックを、映画やテレビ、あるいはゲームなどの形で展開するクロスメディアビジネスを成功させた。その姿勢はインターネット時代も変わらない。

 インターネット文化に対しては非常に寛容だ。YouTubeと提携し、ユーザーが作ったMADを柔軟かつ積極的に認める。インターネット時代に合わせて著作権法の改定をはたらきかける。出版産業全体をエコシステムに見立てて、あえてリアル店舗の衰退が囁かれる今日、書店を「プラットフォーム」と呼んでいる。

 そしてついにはニコニコ動画のドワンゴと経営統合し、川上量生会長を次なるカドカワを率いる新たなトップとして招き入れるに至っている。

 角川会長が『角川インターネット講座』の刊行を決めたのは、インターネットが現在過渡期にあると感じたためだったという。きっかけの1つはスティーブ・ジョブズの死だ。ジョブズ復帰後のアップルの業態を早期から“メディア”だと喝破した角川会長。いま会長に見える“メディアとしてのインターネット”は、いったいどんな姿なのだろう。

■Amazon.co.jpで購入

1960年代後半と現在は陸続き

── まず、『角川インターネット講座』の着想をどこから得たのか教えてください。

角川歴彦……KADOKAWA取締役会長、カドカワ取締役相談役

角川 1960年代に原型が出現したインターネットが商用利用されはじめたのが1990年代。そこからコンピューターも大型からパソコンへと変わってきているなか、アカデミックな総括がなされていない状態なんだよね。

 1つには、インターネットの世界は技術革新が早いから、出版社による従来のスタティック(静的)な編集方針では、講座や全集としてまとめるのは難しかったということがある。

 もう一方で、技術の変化が激しいことで、産業が先行してあとから学界がくっついてくるというアンバランスな構造が続いてきたし、それはこれからも続くと思うんだよね。それが総括される時期が来るまで待つというのはダイナミックな分野においては無意味だろうと。

 そういう意味で、スティーブ・ジョブズが亡くなったとき、絶好のタイミングだと感じたんだよ。

 しかし、社会の変化や技術革新を表現するには、どうしても状況を総括する宿命にある学界は遅れがちだ。だから学界に軸足を置きながら、現場で仕事をしている人や、技術者たちにも入ってもらいたいと思い、ユニークな監修陣を揃えることに注力した。学界の最高水準、技術者の最高水準、さらに実業界のトップを揃えられたかなと満足している。

 今後これをなぞらえた企画をつくろうとしても、5年、10年は無理だろうと思う。時代を見る目をしっかり持っていないと、テーマを捉えきれず非常に冗長なものになってしまうから。そういう難しい分野なんだよ。

── 角川インターネット講座の読者は30代です。角川会長が30代だったころはまだインターネットはなかったと思いますが、どんな世界だったんでしょう。

角川 ちょうどビートルズブームが終わったころくらいかな。アナーキーというか、ヒッピー的というか、ビートルズ後の文化が出現した、ジェネレーションXの時代。それはいまもインターネット文化の根底に根強くあるものだよね。インターネットは技術ではなく民主主義であるとか、そういう論理が生まれる源になっている。

 バーチャル空間は中立的じゃなければいけないという人たちが出てきたように、勝者による不健全になりがちな世界に見識あるティム・バーナーズ=リーのようなヒーローが登場して、ウェブの時代がきちっと機能した。「集合知」という言葉があるけど、集合知以前の集合知というか、ある種、自分の利益だけじゃなく、社会に貢献しようという考えが当時からあったんだよ。

 そういう人たちのなかから、経済的独占を好むビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズといった人たちが育ってきた。それは面白いことだよね。

── ドワンゴ川上量生会長に取材したとき「いま日本で暴動や革命が起きるとしたら山谷でも釜ヶ崎でもなく間違いなくネットですよね」と話していました。昔はそれこそ路上が民衆の舞台だったわけですが、現在はそれがインターネットに移っている。ニコニコはそこで「暴動」が起きないようにする役割があるというわけです。

角川 日本の若者は世界的視野に立ってもある種成熟してるよね。言論の自由が空気のように与えられているんだから。そこでニコニコの果たす役割というのは大きいよ。時代を超えて若者の気分を収斂する機能は必要だし、ニコニコはそれを体現してるんじゃないかな。

■Amazon.co.jpで購入

(次ページでは、「グーグルは「インデックス」なしでは生まれなかった」)

前へ 1 2 3 4 次へ

この特集の記事

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ピックアップ

富士通パソコンFMVの直販サイト富士通 WEB MART