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World of Tanksの世界へパンツァー・フォー 第5回

私と戦車とWoT――ウォーゲーミングジャパン 宮永忠将氏

WoTを支える謎の役職、ミリタリーアドバイザーとは?

2013年12月13日 18時00分更新

文● 有馬桓次郎

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 ウォーゲーミングジャパン には“ミリタリーアドバイザー”という聞き慣れない役職が存在するという。もしかして元PMCの精鋭兵士が所属しているのか!? 今回はその謎を探るべく、World of Tanksの日本技術ツリー実装などで慌しい同社を尋ねた。

“ミリタリーアドバイザー”という聞き慣れない役職の内容を探るべく、ウォーゲーミングジャパンにお邪魔した

大学院では西洋古代の軍事史を専攻
その後、軍事ライターからミリタリーアドバイザーへ

―― まずはミリタリーアドバイザーである宮永さんの簡単な経歴を教えていただけますか?

ウォーゲーミングジャパン プロジェクトマネジメント部 ミリタリーアドバイザーの宮永忠将さん

宮永 「中学生の頃から小林源文さんなどの作品の影響を受けて第二次世界大戦のドイツ軍に興味を持ちました。多くの方はそこから現代のほうに目を向けるのですが、私の場合は逆で、そこから遡って古代史なども調べるようになり、大学では西洋古代の軍事史を専攻しました。

 ただ、軍事史って学問ジャンルとしてはすごくマイナー・異端で、本来は政治史や哲学が中心なんです。そこで軍事史以外にも色々選択してはみたものの、結局は研究者に向いてないと思って大学院をドロップアウトしちゃったんですね。

 その後、しばらくサラリーマンをしつつ、ちょうどHTMLでホームページを作るはしりの頃(1990年代後半)だったものですから、私もアナログゲームの情報を発信していました。

 そのうち、大阪にあるアナログゲーム雑誌の編集部とコンタクトできたのがきっかけで、軍事系のライター兼編集として5年間ほど勤務しました。2008年からフリーライターになり、翻訳や軍事系雑誌での記事執筆などを続けていたのですが、2013年夏にウォーゲーミングジャパンからの誘いを受け、現在はミリタリーアドバイザーとして常勤しています」

―― ミリタリーアドバイザーとはどういった役職なんでしょう?

宮永 「普通、ミリタリーアドバイザーといえばPMC(民間軍事会社)あたりの軍事専門家を指す言葉でして。ましてや弊社のような海外企業でミリタリーアドバイザーとして勤めているともなれば、ゲリラの村を2、3ヵ所は潰してるっぽい感じがする過激な役職名ですよね(笑)」

―― 元・自衛隊の方ですか? 的な(笑)

宮永 「もちろんそういうことではなくて、ここでのミリタリーアドバイザーというのは、基本的にゲームの中身に関しての調査を担当する役職です。

 調査には2種類ありまして、1つはウォーゲーミング社で開発しているゲームに対して、よりリアルになるよう、多くの資料を検索し、情報を提供する作業です。

 もう1つはミリタリーに関する専門用語の正確な翻訳ですね。やはりその部分を間違えると雰囲気がぶち壊しになっちゃいますから。向こうから送られてくる用語を専門の者が翻訳するのですが、それが正確な用語や表現になっているかチェックする仕事もあります」

World of Tanksに登場する約150種類の戦闘車両のディテールや能力は、各地のミリタリー担当者による調査を反映したもの。新たに判明した調査結果を反映するために、ゲーム中の能力が変更されることもあるという

―― それは責任重大ですね……!

宮永 「特に、これから“日本もの”が増えますからね。まず『World of Tanks』は日本の技術ツリーが実装されますし、『World of Warplanes』ではローンチの段階から日本の技術ツリーを選択できます。そして『World of Warships』に至っては、実質的に日本が主役とも言える密度になるでしょう。

 ただ、言語の問題もあって日本はミリタリーに関してもガラパゴス的な立ち位置なんですよ。日本から海外に向けた発信がほとんど無いし、海外でも日本に関するミリタリー出版物があまり盛んではないため、海外から見ると日本の兵器史って未知の分野なのです。

 大和レベルであれば最低限は知られていますが、たとえば『軽巡大淀(※1)に空母の計画があった』とか、『戦艦の伊勢・日向の航空戦艦化(※2)が当初より本気で計画されていて戦力としても非常に有効であった』とか、こちらからすると『?』となるような認識も多いわけです。

 そのあたりについて海外の開発者に周知させるための文章を作ったり、3Dモデリング用のブループリント(設計図)を集めたりしています」

※1:日本海軍の軽巡洋艦。大戦後期には連合艦隊旗艦にもなった。空母への改装計画は確認されていない。
※2:両者とも日本海軍の戦艦。ミッドウェー海戦で正規空母4隻が一挙に失われたため、後部主砲塔2基を撤去して飛行甲板を設ける改装を受けたが、その後も艦載機を載せることはなく戦局に何ら寄与することはなかった。

現在βテスト中のWorld of Warplanes。すでに日本の技術ツリーが存在する

開発中のWorld of Warshipsでは、日本艦船が実質的に主役ともいえる密度で展開されるという

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