このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

ASCII.jp働き方研究所 第4回

働き方のアイデアを集めて実践する「#HappyBackToWork」が目指すモノ

女性はなぜ働き続けられない?Women Willでは男性も考える

2015年06月16日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

アイデアを実践してもらい、社会を変えていく

 このプロジェクトの面白いところは、70社あまりのサポーター企業にこのアイデアを実践してもらうという点だ。前述した調査を進めるにあたって、先進的な働き方を進めている企業をグーグル側がサポーターとして巻き込んだ。「サポーター企業には投稿されたアイデアを1つ実践してもらい、実践している取り組みを紹介しています」(山本氏)。投稿者は自身のアイデアがサポーター企業で実践されるというメリットがあり、サポーター企業では働く人の課題を知ることができることで、インパクトのあるプロジェクトになっている。

 重要なのはすぐに実践できるアイデアの集合体なので、導入の可否がすぐに判断できる点だ。多くの企業では総務部が制度だけを作り、運用が進まない。テレビ会議システムはあるが、自宅から会議に参加するという社風をきちんと醸成しないと、絵に描いた餅になるわけだ。では、どうするという施策面で、多くの会社は議論がストップしてしまう。「女性の活躍を応援しようというかけ声に対して、Noという人はたぶん誰もいない。でも、実際の施策に行き着かないのが問題。だから、具体的にソリューションを提供できるよう、企画時に気をつけました」と山本氏は語る。

「具体的にソリューションを提供できるよう、企画時に気をつけました」(山本氏)

 アイデアを集めるためのリアルイベントも開催した。「昨年もポピンズの協力を得て、託児所を用意して、産休・育休の方と人事の方を集めてお話しするイベントを開催しました。話し合いの場を設けると多様なアイデアが出てきます。今後は学生からシニア、いわゆるイクメンまで対象を絞らずに話し合いの場が持てたら面白いと考えています」と山本氏は語る。

結局日本人の労働感に根幹に根付く問題に行き着く

 グーグルのWomen Willのプロジェクトは社会を変えるところまで継続的に行なわれる。なぜなら、この課題は単に女性の働き方のみならず、日本人の労働感の根幹に根付く問題だからだ。たとえば「2週間の育休ではなく、1年間定時に上がれるようにしてほしい」といったアイデアも、実践するまでには大きな壁がある。「せっかくNo残業デイを作っても、ふだん残業まみれの旦那さんは、いざ家に帰ってやることがないと言うんです」と山本氏は語る。

 今後は集まったアイデアのベストプラクティスを集めた冊子を作ったり、パートナー企業同士が話し合う場の提供やお父さんと子供で作る食材セットの開発、あるいは家事の時間計測ができるアプリ開発など、得意の巻き込み力で具体的な施策を進めていくという。

日本技芸・御手洗の視点

「男女共創でアイデアを生み出す新しい形」

 

今回のインタビューで、女性の労働環境の問題はグローバルな問題である一方で、地域によってその問題の性質や内容が、大きく異なることを再認識した。

世界の国々の中でも、職場の物理的なIT整備状況も進んでいると言えると思うが、インタビュー内でも触れられているとおり、長らく男性中心で形作られてきた労働文化や制度が、ITを利活用することを阻んでいる。

職場の労働文化や制度の変革は、既得権を有する男性陣に対して、新しい労働環境を求める女性陣という対立関係を生みがちだが、今回のGoogleの取り組みは、男性と女性が共創により新しいアイディアを生み出していくことを促進する意味で新しいものだと言える。持続的に女性も働きやすいワークスタイル変革を実現する上で、変わらなくてはいけないのは、女性ではなく男性なのだということを今一度私たちが認識する良い機会だった。

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ