【後編】『楽園追放』プロデューサー野口光一氏インタビュー
アニメ『楽園追放』は"社会の壁"を壊してヒットを勝ち取った
2015年02月08日 15時00分更新
映画とコンピューターにのめり込んだ学生時代
CG映像の可能性を求めてCGプロダクションに就職、そして渡米
―― コンピューターでの映像作りは、どんなところが面白いと思われましたか?
野口 どんどん新しい表現が可能になってくるところです。常に新しいものを提示し続けるから飽きません。それに、僕は絵がうまくなかったこともあって、手で描けないすごい絵が(コンピューターなら)できそうな気がしまして。
中学校の頃には映画の仕事に就きたいなと思ってはいたんですけど、その頃はどうやって(業界に)入ればいいのかわかりませんでした。ツテもないし。
そして大学生になっても映画に携わりたいという思いを抱えつつ、コンピューターもずっと触っていました。ただ、コンピューターで映像を作るなんて当時は考えられませんでしたね。8ビットでドット絵みたいなものしかできなかったし。
でも時代がだんだん進歩してきて、SFXとかモーションコントロールカメラが流行り出したので、『コンピューターでCG映像を作れば、何となく映画の近くには行けるのかな』と。それでどんどんコンピューターで映像を作ることにハマっていきました。
(就職活動時には)コンピューターで映像を作っている会社に入りたいと思って調べたら日本には3社ぐらいしかなくて、博覧会映像やCMを手がける会社に入りました。
ところが、日本ではようやくCMに使い始めたばかりで、ドラマで使う機会はありませんでした。そこで(すでに映画でCGを使っている)カナダ、そしてアメリカに渡ったんです。
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給料は1週間ごとに支払われる=1週間でクビにできる
超成果主義のハリウッドでCGの腕を磨いた日々
―― それはすごいですね。やりたいという思いはあっても、言葉が違う国に行くのは大変だったのではないでしょうか。新しい表現をやろうとしたら壁があったから、一念で突破したと。
野口 そんなすごいことをやろうとしたわけではなく、日本にはCG映像で映画を作る会社がなかったから行った、という感じです。
それに1980~90年代の日本が、CG技術の分野では先進的だったことも関係していると思います。
当時は、新しいCG技術が主に日本とアメリカとフランスの3ヵ国で開発されているという状況があったので、カナダに行っても、アメリカに行っても『あっ、日本でCGをやっていた人か!』ということで、結構すんなり就職できました。
ところが、会社が倒産したんですよ。(会社=Boss Film Studios。スター・ウォーズ三部作で三度アカデミー視覚効果賞に輝いたリチャード・エドランド氏が率いていた)
そこでアメリカに残るか否かを判断する必要に迫られました。
判断基準はいくつかありました。向こうってゼネラリストではなく、1つの専門を究めるスペシャリストが求められるんです。モデリングの人はモデリングだけ、動きのアニメーションをつける人はアニメーションだけ、みたいな天才集団。
翻って、自分はそこまで1つに長けた天才じゃないし、1つに絞りたいわけでもない。映画全体に関わりたかったんですね。その場合、役職としては「VFXスーパーバイザー」になる必要があるのですが、この調子で専門分野だけ続けていて、いったい何年経てばVFXスーパーバイザーになれるのか、と。
しかも外国人がVFXスーパーバイザーになった例はないんです。それだけハードルが高い。
あともう1つ、ちょっと疲れちゃった、というのもありました。
―― 疲れちゃった、というのは?
野口 アメリカって怖いと思ったのは、会社ではギャランティーが1週間づつ支払われるんです。
すぐに首が切れるように。来週の給料はもうない、みたいな。
(次ページでは、「FINAL WARSと聞き、「どうしてもゴジラをやりたい!」」)
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