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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 ― 第37回

【後編】『楽園追放』プロデューサー野口光一氏インタビュー

アニメ『楽園追放』は"社会の壁"を壊してヒットを勝ち取った

2015年02月08日 15時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

前編はこちら

 東映アニメーション40年ぶりのオリジナル劇場アニメ『楽園追放 -Expelled from Paradise-』は、わずか13館での上映にもかかわらず興行収入1億8000万円を超え、BDの売れ行きも順調だ。このヒットの裏には、VFXスーパーバイザー出身という異色の40代新人プロデューサー・野口光一氏の姿があった。

 セルルックに変えても避けられないCG特有の“不気味の谷”を乗り越えるため、ひいては初のプロデュース作品を成功に導くため、野口Pは膨大な手間(=人件費)がかかる“豊かな表情”の作成を決断。

 それは困難な挑戦だったが、3DCGを得手とする制作会社グラフィニカと、2Dアニメの演出方法を心得る水島精二監督、演出・京田知己氏らの“異文化交流”によって、首尾よく不気味の谷の飛び越えに成功する。

 めでたく制作のめどは立ったものの、今度は作品を観客に届けるための座組み作りで難問が立ちはだかる。野口Pはいかにして、業界最大手の社内を納得させつつ、異例のルール変更を勝ち取ったのか。ロングインタビュー後編。

プロフィール:プロデューサー 野口光一氏

『楽園追放 -Expelled from Paradise-』プロデューサー・野口光一氏

 1965年生まれ。岐阜県出身。東映アニメーション 企画営業本部 映像企画部次長 兼 映像企画室プロデューサー。

 CGスタジオの草分けと言えるリンクスで腕を磨き1995年に渡米、映画のVFX制作に従事。帰国後はポリゴン・ピクチュアズなどを経て、東映アニメーションに所属しながら映画・ドラマのVFXスーパーバイザーとして活躍。『楽園追放』は初プロデュース作品。主な担当作品に『イノセンス』『ゴジラ FINAL WARS』『男たちの大和/YAMATO』『坂の上の雲』『キャプテンハーロック SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK』『楽園追放 -Expelled from Paradise-』等。

 現在、AREA JAPANにて業界人へのインタビュー企画「3DCGの夜明け~日本のフルCGアニメの未来を探る~」を連載中(AREA JAPAN東映アニメーション)。


『楽園追放 -Expelled from Paradise-』ストーリー

 ナノハザードにより廃墟と化した地球。人類の多くは地上を捨て、データとなって電脳世界ディーヴァで暮らすようになっていた。
 西暦2400年、そのディーヴァが異変に晒されていた。地上世界からの謎のハッキング。ハッキングの主は、フロンティアセッターと名乗った。
 ハッキングの狙いは何か。ディーヴァの捜査官アンジェラは、生身の体・マテリアルボディを身にまとい、地上世界へと降り立つ。地上調査員ディンゴと接触しようとするアンジェラを待ち受けていたのは、地上を跋扈するモンスター・サンドワームの群れ。
 アンジェラはそれを迎え撃つため機動外骨格スーツ・アーハンを起動する。荒廃した地上のどこかに、フロンティアセッターが潜んでいるはず。アンジェラとディンゴの、世界の謎に迫る旅が今、始まった。

(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

スタッフ
原作:ニトロプラス/東映アニメーション、脚本:虚淵玄(ニトロプラス)、監督:水島精二、演出:京田知己、キャラクターデザイン:齋藤将嗣、プロダクションデザイン:上津康義、メカニックデザイン:石垣純哉/齋藤将嗣/柳瀬敬之/石渡マコト(ニトロプラス)、スカルプチャーデザイン:浅井真紀、グラフィックデザイン:草野剛、設定考証・コンセプトデザイン:小倉信也
CG監督:阿尾直樹、モーション監督:柏倉晴樹、造形ディレクター:横川和政、色彩設定:村田恵里子、モニターグラフィックス:宮原洋平(カプセル)/佐藤菜津子、美術監督:野村正信(美峰)、撮影監督:林コージロー、編集:吉武将人
音響監督:三間雅文(テクノサウンド)、音響効果:倉橋静男(サウンドボックス)、音楽:NARASAKI
アニメーションプロデューサー:森口博史、チーフアニメーションプロデューサー:吉岡宏起、プロデューサー:野口光一
アニメーション制作:グラフィニカ、配給:ティ・ジョイ(協力:東映)、企画・製作:東映アニメーション

キャスト
釘宮理恵/三木眞一郎/神谷浩史
林原めぐみ/高山みなみ/三石琴乃
稲葉実/江川央生/上村典子/三宅健太/遠藤大智/安済知佳
古谷徹(友情出演)

(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

Blu-ray『楽園追放 -Expelled from Paradise-』発売中!

(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

完全生産限定版
発売中、価格:8000円+税
収録内容:本編(5.1ch/STEREO)、特典映像:メイキング、予告・CM集、特典CD:オリジナルサウンドトラック、ELISA主題歌 English Ver. 収録、キャラクターデザイン・齋藤将嗣描き下ろし三方背BOX&デジケース、脚本・虚淵玄(ニトロプラス)によるシナリオブック、縮刷パンフレット、W購入キャンペーン応募券

通常版
発売中、価格:5800円+税
収録内容:本編(5.1ch/STEREO)、ティザービジュアルジャケット、W購入キャンペーン応募券(初回生産分のみ封入)

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YMOとスター・ウォーズがきっかけ
「コンピューターを使ってSF映画を作りたい」

「コンピューターへの興味はYMOがきっかけです。ちょうどマイコンブームでもありました」

―― アニメーションの現場にも『楽園追放』のような形で本格的に3DCGが導入されています。野口さんはCGクリエイター出身だそうですが、この時代を見越して業界に入られたのでしょうか?

野口 いえ、僕が子どもの頃はCGなんてまったくありませんでした(笑)。世代でいえば特撮世代です。

 もともとは映画が作りたかったんです。子どもの頃に『ゴジラ』シリーズを親に連れていってもらって、映画って面白いなと。テレビよりも映画のほうが好きですね。縁日みたいな特別な体験という感じで面白いと感じます。

 それと同時にコンピューターも好きでした。

 コンピューターへの興味はYMOからですね。そのYMOが世界ツアーに行ってるんですよ。ヨーロッパやアメリカに。それで、『ああ、コンピューターを使うとこんなに世界が広がるんだ』と思いました。

 同時期、映画のほうでは『スター・ウォーズ』をはじめとするSF映画の波が来ていたんですよ。だから、コンピューターを使って映画を作れたらいいなと思って、CG映像の世界に入ったという流れですね。

(次ページでは、「給料は1週間ごとに支払われる=1週間でクビにできる」)

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