なぜ1年前欠席することになったのか?
こうした約束を果たす一方で、エリソン会長は、今回の基調講演において、ある一件において謝罪してみせた。
「1年前のOracle OpenWorldの火曜日の基調講演に私は来なかった。あの時は申し訳なかった」
エリソン会長は、Oracle OpenWorldにおいて、2回の基調講演を行うのが恒例だ。ひとつは「サンディ・ラリー」として定着した日曜日夕方の基調講演だ。ここ数年は、ここで多くの新製品、新サービス、新技術が集中的に発表されることが多い。そして、会期3日目となる火曜日には、これをさらに深堀をした格好で、エリソン会長が説明やデモストレーションを行う場となることが多い。
だが、昨年のOracle OpenWorldでは、日曜日の基調講演で新たな製品などを発表したものの、火曜日の基調講演は、すでに聴講者が席についた開始時点になって、エリソン会長が登壇しないことが突如発表され、参加者が一斉に席を立ち、講演会場を後にした。
突然の基調講演キャンセルは、昨年のOracle OpenWorldと同時期に、サンフランシスコで開催されていた国際ヨットレース「アメリカズカップ」によるものだった。
当初は劣性だったエリソン会長率いるオラクル・チームUSAは、巻き返しを図り、基調講演当時の火曜日には決勝戦を迎え、ここで大逆転を果たして優勝した。基調講演のキャンセルは、この決勝戦を優先したためだった。
前年はキャンセルしたのと同じ火曜日に行われた、2回目の基調講演に登壇したエリソン会長は、「1年前のOracle OpenWorldの火曜日の基調講演に私は来なかった。この点をみなさんにお詫びしたい。8対1で負ける寸前であり、毎日がハラハラしていた。しかし、見事にカンバックを果たした」とし、1年前のアメリカズカップの優勝を改めて報告した。
世界で最も古いスポーツの優勝カップといわれるアメリカズカップの優勝カップは、会期中、厳重な警備ととも展示され、来場者に公開された。
昨年は、参加者からも避難の声があがった突然のキャンセルではあったが、今年は2回の基調講演をこなし、Oracle OpenWorldの開催わずか10日前に、同社初のCTOに就任した立場を象徴するように、自らクラウドの新機能をデモストレーションしてみせた。
今年70歳となったエリソン会長の元気ぶりを象徴する2回目の基調講演が終了したときには大きな拍手が贈られた。
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