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生え抜きの経験を自らの言葉で語るニューウェイブ経営者現わる

百戦錬磨の福田新社長が目指す新生SAPジャパンの姿とは?

2014年09月19日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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9月18日、SAPジャパンは7月28日で代表取締役社長に就任した福田譲氏の就任記者会見を行なった。生え抜きとしては初の日本法人社長となる同氏は、豊富な経験を元に「単なる販社」ではない、新しいSAPジャパンの価値創造を掲げる。

ドイツ人といっしょにスーパーの店先に立つ

 1997年4月にSAPジャパンに入社した福田譲氏は、プロセス製造業の大手顧客担当のほか、化学製油業界、中堅・中小顧客、食品/消費財/医薬/小売り大手などおもに営業畑のマネジメントを歴任してきた。

SAPジャパン 代表取締役社長 福田譲氏

 記者会見に登壇した福田氏は、日本の流通・小売りに特化したモジュールを作るべく、ドイツ人とスーパーの店頭に立った経験を語った。 たとえば、日本の主婦は新鮮な牛乳を棚の奥からとる。そのため、卸しは前回出荷したものより新しい商品を納入しないとペナルティをとられるという。また、日本では主婦が自転車で毎日のように買い物に来るため、スーパー側は客を飽きさせないための「特売」を実施。そのため、“イレギュラーな会計処理”が常時発生し、メーカー側も特売に対して販促費を投入する。

 もちろん、こうした消費者行動や商習慣は日本独自のもの。「なぜ週末にまとめ買いしないのか、(本国の)ドイツ人には理解されなかった」(福田氏)。これに対し、福田氏はドイツ人といっしょに店頭に立つことで、こうした日本の独自性を理解してもらい、SAP側が日本のビジネスに合わせる施策を推進。果として「帳合いルートモジュール」という日本向けのサブモジュールが完成し、小売り業界でのSAP普及に大きな貢献を果たしたという。

 その後、2006年には大学院で語学力の向上やグローバルマネジメントを習得したのち、2007年には新規製品事業(Platform製品事業)を統括するバイスプレジデントに就任。ミドルウェア、BI、経営管理などの事業や、SAPが買収したビジネスオブジェクツやサイベースなどとの統合を指揮した。2011年からは特定戦略顧客、流通・サービス業、通信・メディア業などの営業部長も歴任し、2014年7月28日に代表取締役社長に就任した。「『まっすぐ』という言葉が大好きで、子供の名前にも付けるくらい。仕事上もそれを心がけている」と語る。

変革を支援する。社会も変える

 まさに百戦錬磨の実戦経験を持つ福田氏が挙げた抱負とは「変革を志すすべての人のパートナーであり続ける」ことだという。「グローバルで44年、日本法人が始まって22年。われわれはITと経営業務を一体に見立て、会社を変えることに情熱を燃やしてきた方々といっしょにビジネスをしてきた。ここは変わらないし、今まで以上によさを残しつつ、根本を変えることが重要になる」と福田氏は語る。日本企業が苦手とするグローバリゼーション、トランスフォーメーション、イノベーションなどの分野でユーザーやパートナーを支援し続けるという。

2つの抱負と3つの分野

 もう1つの抱負は「会社を変える>社会も変える」。福田氏は、「私が入社した当時はスタンドアロンのPCがあったくらい。確かにPCもいい仕事をしていたが、それでも資料作成ツールだった。しかし、PCがインターネットにつながった瞬間、別の価値を生んで、世の中が変わった」という自身の体験を披露。そして、スタンドアロンで動いているERPも同じく、ネットワーク化し、クラウドと連携することで、とてつもない価値を生むと指摘する。「たとえば、世界中のサプライヤーがどの商品をどの値段で売ろうとしているのかが、リアルタイムで見えるとか。それに対して競合が応札して20%安で応札するとか」(福田氏)。

 こうした新しいエンタープライズの世界は、ERP+クラウド+αで夢物語ではなくなりつつある。しかもSAPでは、エンタープライズのみならず、エンタテインメント、ヘルスケア、社会インフラでもさまざまな取り組みを進めている。この結果として、社会を変えるような仕事を進めるというのが、福田氏のビジョンだ。

印象深いグローカリゼーションとERPの再フォーカス

 実際の施策として、福田氏はSAPジャパン自体のグローカリゼーション、グローバルの知見を活かしたインダストリビジネスユニットの創設、今の時代ならではのERPへの再フォーカス、プラットフォーム/テクノロジーの強化、サブスクリプション導入などクラウド重視などの施策を打ち出した。

具体的な施策とフォーカス

 印象深いかったのは、SAPジャパン自体のグローカリゼーション。福田氏は、「われわれはSAPジャパンではなく、SAP(本社)とおつきあいしているんだとおっしゃるお客様もいます。悲しいことにSAPジャパンは販社なのでという社員もいる。これを、お客様の期待に応える人材や体制に変えていく」と断言する。具体的にはマネジメントとサポートだけではなく、営業やコンサルティングなどの人材もグローバルから“輸入”するほか、日本人を積極的に“輸出”するという。それにあわせて社内言語の英語化も推進するほか、人材育成にも投資を進める。

 もう1つ面白かったのは、売上の半分にまで落ちているERPへの再フォーカスだ。「日本は売上高トップ100で見ると、われわれのお客様は半分もいません。SAPという名前はご存じだと思うけど、導入いただいていない。そこで、なにが導入の障壁になっているのかを、きちんと考える必要がある」と語る。規制緩和で競争が導入される公益の分野や人口減の影響を受ける保険など業界を絞り込んだり、SAP HANA Enterprise Cloudや新しいユーザーインターフェイスなどの価値を再度検討する。「SOAが一世風靡した頃、今のERPとお父さんの頃のERPとは違うという表現がアメリカでは流行った。これはまさに今の日本に当てはまる」(福田氏)とのことで、従来とは異なる提案を発掘。単体のボリュームを伸ばしていくのが戦略だという。

 就任会見にありがちなお仕着せのコメントのオンパレードではなく、生え抜きならではの経験を元に、自身の言葉で質疑応答まで語り尽くした福田新社長。今後目指す高みが気になるところだ。

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