「あらゆるアプリケーションのためのインメモリ統合プラットフォーム」目指す
マルチテナントなど新機能搭載「SAP HANA SP9」提供開始
2014年12月03日 06時00分更新
SAPジャパンは12月2日、同社インメモリプラットフォームの最新版となる「SAP HANA Service Pack 9(SP9)」の提供を開始した。より幅広いアプリケーションを効率的にHANA上に統合可能にするべく、マルチテナント機能、ETL変換処理のネイティブ対応、Hadoop統合拡張機能など、多数の新機能が追加されている。
SP9で採用された「マルチテナントデータベースコンテナ(MDC)」は、単一のHANAインスタンス上で、複数のデータベース/スキーマを完全に独立したかたちで提供できる新機能。1台のハードウェア(HANAアプライアンス)上に複数のデータベースを統合することで、ハードウェア利用率が向上するとともに、管理も容易となり、TCO削減につながる。
MDCについて、SAPジャパンの大本修嗣氏は「従来は仮想化(ハイパーバイザ)などで実現する必要があったが、SP9からはHANAのネイティブ機能として提供する」と紹介した。MDCを利用することで、たとえばこれまで開発・テスト環境や本番環境を個別のHANAアプライアンスで用意していた顧客も、単一のアプライアンスに統合できる。
またSP9では「ダイナミックデータティアリング」機能も追加された。これは、ホットデータよりもアクセス頻度の低い“ワーム(Warm)データ”をインメモリではなく外部ディスクに配置し、ホット/ワームデータの両方を単一のHANAインスタンスから扱えるようにすることで、実装メモリ容量を大きく超えるペタバイトクラスのデータ処理も可能にする機能。
大本氏は、ダイナミックデータティアリングによって「HANAのキャパシティを仮想的に拡張できる」と説明し、より多くのアプリケーションをHANA上に統合する場合に効率的だと述べた。今後、ティア間のテーブル移動などさらなる自動化と機能強化も計画されている。
そのほか、データのプロビジョニング、変換、クレンジング、エンリッチメントの機能、大量のストリーミングデータをリアルタイムで処理/分析する機能も追加された。「従来、ETLサーバーは別サーバーで稼働させていた。今回、ネイティブのインメモリ機能として、HANAにETL処理を統合した」(大本氏)。
またHadoop対応ユーザー定義関数(Hadoop UDF)が強化され、HANAからHDFSへの直接アクセスや、MapReduceジョブの実行が可能になっている。
ERPを新規導入する顧客の7割はHANAを選択
SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション&イノベーション統括本部長 堀田徹哉氏は、HANAを取り巻く現況と今後の製品戦略について語った。
製品として4年目を迎えるHANAは、当初の情報系(OLAP)アプリケーションから基幹系(OLTP)アプリケーションへと対応の幅を広げ、現在では多様なシステムを収容できる「インメモリ統合プラットフォーム」という位置づけになっている。
堀田氏の挙げたデータによると、現在では、新規に「SAP Business Suite」を採用する顧客の71%がHANAプラットフォームを選択するようになっている。また、日本におけるHANAビジネスの売上成長率は180%で、Business Suite on HANAの成長率は300%にも達している。
「昨年、OLTPのERP(Business Suite)がHANAに載ったことで、情報基盤としての整備ができた。HANAを前提にコーディングされた、サードパーティ製を含むアプリケーションが載ることで、プラットフォームとしてさらに進化していく」(堀田氏)
また堀田氏は、今年のSAPが「シンプリフィケーション(シンプル化)」をテーマに掲げてきたことに触れ、HANA SP9ではマルチテナント機能などによってさらに統合性を高め、システムのシンプル化に寄与すると説明した。