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クラウド分野での成長をより拡大する「アクセラレーター」に

SaaSベンダー第2位のコンカーを買収!クラウドに傾注するSAP

2014年09月25日 09時00分更新

文● 大河原克行

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独SAPが、クラウドによる経費管理ソリューションを提供するコンカー(Concur)を83億ドル(約9000億円)で買収する計画を発表した。SAPがコンカーの買収に乗り出した背景には、クラウドへのシフトを図る同社にとって、コンカーが持つクラウドソリューションが重要な役割を果たすと考えたことが大きいだろう。

日本固有の機能で売上高を拡大させたコンカー

 コンカーは、1993年に米ワンシントン州で設立した企業で、フォーチュン500社のうち約61%の企業が利用するという実績を誇る。全世界約150カ国の2万3000社以上で、2700万人が利用しているという。SaaSベンダーとしては、米セールスフォース・ドットコムに次いで、第2位の売上高だ。

買収発表のリリース(SAP)

 コンカーが掲げるビジョンが「パーフェクト・トリップ」というように、出張に関するすべての作業をスムーズに行なうことができるサービスを目指しているのが特徴。事前申請管理から出張管理、旅程管理、従業員リスク管理、経費管理、請求管理、支払管理、経費監査サービスといった経費管理ソリューションをトータルで提供。この分野での実績は、他社の追随を許さない。

 日本では、2011年2月に日本法人を設立して事業を開始。当初は外資系企業を対象にした英語版のサポートが中心だったが、2012年には「Concur Expense」の日本語化とともに、SuicaやPASMOなどのICカード交通乗車券のデータを取り込んだ。直接経費管理を行なえるようにする日本市場固有の機能を付加したことで、日本企業向けにサービスを本格展開。今年8月時点では国内380社で同社のサービスが利用されており、売上高は米国に次いで、日本が2番目だという。

クラウド事業拡大が急務のSAP

 一方で、SAPでは、クラウドの事業拡大が急務となっている。

 今年7月に日本法人社長に就任した福田譲氏は、「SAPは、自らの強い意志によって、クラウド化を進めようと考えている」と語り、「すでに人事、調達、デジタルマーケティング、営業、中小企業向けERPなどでクラウド化したサービスを提供している」とするが、各社がクラウドシフトを鮮明に打ち出すなかでも、この分野での出遅れ感は誰もが認めるところだ。

クラウドビジネスへの注力を進めるSAPジャパンの福田譲新社長

 SAPは、2013年度決算の発表にあわせて、2017年度の中期目標を発表。売上高は2015年度計画の200億ユーロからさらに拡大させ、最低でも220億ユーロとすることを発表。クラウド事業の売上高を、2015年度の約20億ユーロから、2017年度には30億~35億ユーロに拡大させる考えを示している。

 その一方で、営業利益率目標は、2015年度に35%としていたものを、2017年度に先送りし、同年に35%に達成する計画へと再設定。この理由を、「クラウドにおける成長機会を捉えるため、SAPは2017年度までに達成することにした」とする。

 高い利益水準を誇る既存のオンプレミス型ビジネスを一定量維持しながら、クラウド事業およびサポート売上の成長により、ストック型のビジネスモデルへ転換することが、今後3年のSAPにとって重要な取り組みとなるのだ。その点でも、コンカーのビジネスを取り込むことで、クラウドビジネス拡大に向けたピースがひとつ揃うことになるのは明らかだ。

コンカー製品を中心にSAP製品を統合?

 SAPは、コンカーの対抗となる、「SAP HANA」を基盤に動作する出張経費管理のSaaS「SAP Cloud for Travel and Expense(Cloud T&E)」をすでに提供している。

 SAPジャパンでは、今年3月に、Cloud T&Eの日本語版の発売にあわせて、「旅費経費は企業の中で2番目に大きな管理可能な経費であるが、ぬれ雑巾のように手つかずの分野であり、効率化が遅れている。完全な手作業の場合、1件あたりに2000円(20.18ドル)近い処理コストがかかっている。自動化でコストを半減できる」と説明。「経費精算は世界で30兆円の規模で処理が行われており、そのうち出張経費は5兆円の規模があるとみられている。日本でも大きな市場規模が想定される」と、この市場の可能性を強く訴えていた。

 今回のコンカー買収によって、Cloud T&Eとの統合などが行なわれるのかどうかは明らかになっていないが、コンカーの製品ロードマップなどには変更がないといわれていることから、コンカーを軸とした形での統合の可能性がありそうだ。

 SAPのグローバルCEOのビル・マクダーモット氏は、「今回のコンカー買収により、SAPのビジネスネットワークへの集中を強力に、かつ継続的に進めることができる。企業内、企業間ビジネスを変革する大胆な動きである」とコメント。さらに、「アリバ、フィールドグラス、そして今回のコンカーの買収で、SAPは紛れもないビジネスネットワークカンパニーとなり、グッズ/サービス、ワークフォース、T&E分野などで、どのようにビジネスを進めるべきかを再定義していくことになる。SAP HANAプラットフォームをベースに、新たなビジネスモデル変革への可能性は、今回の買収により無限となる」と語っている。

 今後、HANAとの統合はもちろん、SAP ERP、企業内ソーシャルメディア基盤「SAP Jam」との連携などがどうなるのかも気になるところだ。

コンカーとSAPの日本での組織展開と人脈

 そして、もうひとつ気になるといえば、日本での組織統合についてだ。

 現時点では、SAPジャパンからコメントできる段階にはないとしているが、今後の行方からは目が離せない。

 というのも、現在、コンカーの日本法人社長を務めている三村真宗氏は、SAPジャパンの創業メンバーの一人であり、同社では13年間の実績がある。一方、SAPジャパンの社長はこの7月に、初の生え抜き社長となる39歳の福田氏にバトンタッチしたところ。三村氏との位置づけが今後どうなるのかは注目すべきポイントとなる。

米コンカーのスティーブン・シン会長兼CEOとコンカー日本法人の三村真宗社長

 また、米コンカーの創業者であるスティーブン・シン氏が、米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ氏と親交が深いということもあり、コンカーの日本法人にはベニオフ氏自らが出資。サンブリッジの創業者であり、日本オラクルの社長を務めたこともあるアレン・マイナー氏も取締役に名前を連ねていた。

 こうした人脈との関係が、今後どうなるのかも気になるところではある。2015年第1四半期(1~3月)までに買収を完了する予定だという。

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