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本体とは別のところにその性質だけが存在する量子力学の不思議な世界

「量子チェシャ猫」を実験で実証

2014年07月30日 15時51分更新

文● 行正和義

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量子チェシャ猫のイメージ

 ウィーン工科大学など複数の研究者から成る研究グループは、「量子チェシャ猫」を実験的に実証したと報告した。

 量子チェシャ猫とは、粒子の物性(スピンや質量など)のみをその粒子から分離できるという近年提唱された量子力学的な理論。粒子本体がないのにその性質だけが存在することから、「不思議の国のアリス」の身体が消えても笑いだけが残るチェシャ猫に例えられる。

 ウィーン工科大の長谷川祐司准教授らが行った実験では、ビームスプリッターと干渉計を使い、中性子を2つの経路にとって飛ぶ装置を用いた。量子力学では、たとえばある粒子が2つの経路で飛ぶ場合、たった1つしかない粒子でもその両方の経路に存在し得る。

実験に用いた機材の模式図。中性子ビームがビームスプリッターにより2つの光路を辿り、また1つになって干渉計で計測される

 分けられた経路の一方で「弱い測定」と呼ばれる量子力学的手法で磁気モーメントを測定したところ、そこで観測された結果はもういっぽうの経路の粒子にも反映され、粒子本体とその性質のみを分離できる量子チェシャ猫が実証できたという。なお、「強い測定」ではシステム全体の波動関数に影響をおよぼすため量子チェシャ猫の効果は確認できないという。

研究チーム。チームを率いる長谷川祐司准教授(左)は、量子力学分野の理論を実験によって実証するなどさまざまな成果をあげている

 この量子チェシャ猫は中性子以外の物理現象でも検証できると考えられており、波動関数を収束させない粒子の計測や、特定の性質のみを粒子から取り出せることから、より精度の高い量子力学的効果の測定や情報技術に役立つ可能性がある。

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