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あくまで思考実験だった熱力学法則のパラドックスを実験

実際に動作する「マクスウェルの悪魔」が作られる

2016年01月14日 11時50分更新

文● 行正和義 編集/ASCII.jp

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超伝導トランジスタで回路に作り込まれたマクスウェルの悪魔。電荷の有無によって動作するため、外部からの制御(情報)なしに自律的にゲート開け閉めする

 フィンランド・アールト大学は1月11日、実際に動作する「マクスウェルの悪魔」を回路上に製作したと発表した。

 マクスウェルの悪魔とは、1867年にジェームズ・クラーク・マクスウェルた提唱した思考実験。2つに仕切られた容器の中で、仕切りに開いた穴にいる「悪魔」が右から来る温度の高い粒子だけ/左から温度の低い粒子だけを通すように働けば、熱力学的な仕事なしに温度差を作り出せる。

 これは熱力学第二法則に反しており、エントロピーが減少する(原理的には必ず増大する)ことになるというパラドックス。現在では情報の受け渡し(粒子の温度を悪魔が見るという行為)があるため、熱と情報を並べて扱えばエントロピーの減少にはあたらないとされている。

 あくまで思考実験であり、実際に実験を行なって確認するような理論ではなかったが、アールト大学の研究者は極低温の超伝導材料を用いたトランジスタを利用し、電荷によってゲートを開け閉めするという電子回路を製作した。回路は実際に動作し、トランジスタはマクスウェルの悪魔と同様に働く。

 ただし、エントロピーの減少はありえないため、動作させると熱の流入(系の冷却、悪魔が存在する部分の温度上昇)として観察される。情報が熱に変換されるという現象は感覚的には理解しにくいが、熱も情報も等しくエントロピーの法則に従い、情報熱力学分野では変換可能なものとして扱われている。

 研究チームでは、現在は基礎研究レベルではあるものの、可逆コンピューティング(計算にエネルギーを消費しない計算手法)や量子計算技術に応用できる可能性があるとしている。

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