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届いた箱に入っている猫の状態は

東大など、量子暗号通信の手法に30年ぶりとなる新原理を発表

2014年05月23日 14時57分更新

文● 行正和義

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今回新たに発見された量子暗号方式の概念図

 東京大学大学院および国立情報学研究所は5月22日、量子暗号通信の手法として傍受困難かつ効率の高い新原理を発見したと発表した。量子暗号通信の原理としては30年ぶりの新発見という。

 量子暗号通信は、送る光子がどのような量子状態にあるか測定してみなければ分からないという量子力学的な原理を用いる。量子的重ねあわせ(どのような状態でもありうる)状態の光子を送り、傍受・盗聴によって測定されると他の光子の量子状態も決定される(波束の収束)ため、傍受や盗聴が行わればそれが分かるというしくみを用いる。

 この方式は光子の偏光角を量子状態として用い、光ファイバーを通じた実験に成功しており、ほぼ実用レベルと言えるほど確立している。傍受されたかどうかは通信路における雑音(ノイズ)量として知ることができるが、通信時に起きる自然なノイズと傍受によって起きるノイズは基本的に区別できないため、精度を上げるためには多量のデータを送る必要があり、自然なノイズが増えればデータ通信自体ができないという問題があった。

パルス幅(データの切り分け方)は受信者が測定して観測されるまで誰にも分からない

 新たに考案された手法は、送信側ではデジタル光通信でも使用されている差動位相変調という方式で光子の位相に情報を載せて送信。受信側では光遅延回路を用いることで、送られてきたパルスの波のどれに同じ位相の光子があるかを測定、観測した場合はパルスの組み合わせを送信側に通知。送信者はその通知があって初めてその量子状態で送信したことを知ることになり、これで1bit分の情報が送れたことになる。

 一見すると送信者が設定したパルス間隔で受信できたことを受信者が知らせただけに見えるが、量子力学的に見るとどのパルスに光子が載っているかということは量子力学の持つ不確実性によってランダムとなり、受信者が測定することによりパルス幅といういわば暗号解読キーが決定することになる。

従来型のBB84プロトコルでは雑音量から傍受・盗聴を推測するため少ないデータを送る際にも大量の通信を行う必要があり、自然ノイズが増えるとデータ通信が不可能になるのに対し、新手法では少ないデータでも通信が可能となる

 受信者がパルス幅を選ぶ(波動関数を収束)させるため、傍受・盗聴があった場合でも、受信者が同じパルス幅を選ばない限りは受信したパルス幅は意味をなさない。また、傍受した信号を保存しておいて正規の受信者が送信者に向けて送った(公開した)パルス幅を知り、そのパルス幅を用いて復号しようとしても、量子力学的な不確実性によって正規受信者と同じように波束が収束するとは限らない。

 この手法は現在実験が進んでいる量子暗号通信に用いられるレーザーと干渉計の組み合わせで実現可能であり、従来型量子暗号通信に比べるとノイズ監視に伴う手間や、少ないデータを送る際にも全体的な通信量を減らすともできる。現在の量子暗号通信プロトコルはBB84と呼ばれ、1984年に考案されたものだが、基本的に盗聴・傍受されるとそれが分かる(基本的に暗号鍵を送るのに用いるため、その安全性を確認できる)のに対し、新手法では暗号解読自体が困難という特徴がある。光子パルス列を用いる新手法は比較的簡単なしくみではあるが、これまで30年誰も気付かなかった新原理だという。

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