マイクロソフトの進化
日本マイクロソフトの2014年度が、6月30日に終了した。
日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、いくつかのトピックスを示す中で、最大の変革として、米マイクロソフトの新たなCEOに、サティア・ナデラ氏が就任したことに言及した。
「サティアは、CEO就任発表当日からCEOとしての仕事を開始したが、それ以降、矢継ぎ早に新たな戦略を打ち出している。Mobile First,Cloud Firstというメッセージを通じて、モバイルとクラウドを第一優先とし、経営方針を大胆にシフトしていく姿勢を打ち出した」と説明。
なかでも、樋口社長自らが「驚いた戦略」と位置づけたのが、iPadへのOffice 365の無償提供。「Windowsにはこだわらず、クロスプラットフォームで展開していくという姿勢を打ち出し、フットプリントが広がっている他社のタブレットに対してもOfficeを提供した。これは、『目には目を』といえる戦略。他社が同様の製品を無償で提供していることから、Officeの一部を無償で提供し始めた」とした。
「ビル・ゲイツやスティーブ・バルマーといったこれまでのCEOにとっては、Officeは自分の子供のようなもの。そのため、ここまでのディシジョンできなかったのかもしれない」と語る。
使ってもらってなんぼ—ユーセージへのこだわり
そして、「ユーセージ」についてこだわっていることにも触れる。「ユーセージとは、簡単にいえば、『使ってもらってなんぼ』ということ。サティアは、顧客が、マイクロソフトの製品を、直感的に、そして自然に使うように開発しなくては駄目だと、R&D部門に向けて語っている。また、Windows環境で開発するエンジニアが、クールだと思ってもらえるようにしたいと考えている」という。
「WindowsやOfficeは、ドミナントな状況にあるからこそ、簡単に何かをつければ、それで売れるという意識があったのではないか。つまり、景観のいいレストランだから、人が来るという発想。しかし、これで売れる時代は終わった」と続けた。
新CEOの登板によって、マイクロソフトの課題が浮き彫りになり、それに向けた改善が進められているというわけだ。
「新たなCEOは、現実に即した形で、短期間にこれだけの意思決定をしている。通常ならば、2、3ヵ月かかる案件も、2日間で終わらせている。現実的で合理的である。さらに、現実を踏まえて、戦うところは戦うが、手を組むところは組むといったことにも取り組んでいる。これからもマイクロソフトの進化に期待してほしい」と語る。
最高の1年—過去最高の売上を達成
一方で、日本マイクロソフトの成果についても言及した。
日本法人個別での業績は開示していないが、それでも樋口社長は、「一言でいえば、最高の1年であった」と総括。「Windows XPの延長サポート終了と、消費増税前の駆け込み需要により、PCの販売は過去最高となり、日本マイクロソフトの売上高も過去最高を達成した」と語った。
Windows XPに関しては、「4月9日の延長サポートの主旨をご理解いただき、多くの日本のユーザーに新たなOS環境に移行してもらった。日本は、もともとWindows XPの構成比が高い国であったが、結果として、最も移行が進んだ国となっている。現在、Windows XPの構成比は約8%のところまできた。引き続き、社会的使命として、マイグレーションを続けていく」と語った。
さらに、Windowsタブレットについては、「店頭におけるシェアは、わずか2年前には0%であったものが、2014年1〜3月は30.5%になった。従来のタブレットはできることが少ないが、WindowsタブレットはPCの機能を備えており、様々なことができる。長期戦になればなるほど、それが理解されて有利になると考えている。年度内には、国内タブレット市場の過半数のシェアをWindowsタブレットで取りたい」と意欲をみせた。
日本企業の生産性・競争力を高める点でも貢献したい
また、日本マイクロソフトへと社名を変更し、日本に根ざした企業を目指してから3年を経過したことや、東京・品川の同社本社を移転した3年間で延べ48万人が来社して、同社が取り組む最新のワークスタイルを見学。そのほか、日本におけるMicrosoft Azureのデータセンターの開設、働きがいのある会社としての社会的評価を受けた実績を紹介。
「エンタープライズ分野においては、製品の信頼性に加えて、会社そのものが信頼してもらえるかどうかが重要な尺度となっている。日本企業の生産性を高める、あるいは競争力を高めるという点でも貢献していきたい。日本企業のワークスタイルへの変革を支援していきたい」と語った。
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