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柳谷智宣の「真似したくなるPC活用術」 第158回

ついに日本上陸! Facebook Wi-Fiを店舗に導入するワザ

2014年02月06日 12時00分更新

文● 柳谷智宣

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ユーザーはチェックインするだけでOK

 ユーザーとしてチェックインしてみよう。まずは、無線LANで「Facebook Wi-Fi」アクセスポイントに接続する。パスワードはかけていないので、そのまま接続できる。その後、ブラウザーを開き、なんらかのウェブページにアクセスしようとすると、Facebook Wi-Fiのチェックインページが開く。ここでチェックインすれば、すぐにWi-Fiが利用できるようになる。なお、WEPやWPAなどの暗号化機能は使っていないので、第三者が通信内容を傍受することは可能だ。

Facebook Wi-Fiに接続する

ブラウザーを起動すると、Facebookページが開くので「チェックイン」する

チェックインできた。「閲覧を続ける」をタップ

開こうとしていたウェブページが開く

PCでも同様の手順で接続できる

 会社をサボって飲みに来ているときなど、居場所がばれたくない場合もあるだろう。そんな時は、「ステータスを追加」をタップし、公開範囲を「自分のみ」にすればいい。また、ルーターの設定によっては、「チェックインをスキップ」といった項目が出ていることがある。この場合は、リンクをタップすれば、そのままWi-Fiに接続できる。Facebookアカウントを持っていない人向けの機能だ。とはいえ、この項目を用意すると、Facebookアカウントを持っている人まで利用しかねない。

 そこで用意されているのが、「Wi-Fiコード」だ。「Wi-Fiコードを使用」と表示されている場合は、店舗側が設定したコードを入力することでWi-Fiに接続できる。顧客から相談を受けたときのみ、スタッフが教えるような運用が考えられる。

公開範囲を変更すれば、居場所を知られずに済む

「Wi-Fiコードを使用」をタップ

店舗側から教えてもらった文字列を入力して「コードを使用」をタップすると、Wi-Fiに接続できる

きめ細かい設定が可能なMRシリーズ

 エンタープライズ向けのソリューションであるMerakiのMRシリーズだけあって、ルーターの機能は超充実している。店舗や顧客の要望に合わせて、きめ細かい設定が可能なのだ。それも、クラウド経由で操作できるので、便利この上ない。

 例えば、顧客がチェックインすることでWi-Fiを利用できる時間や通信速度を制限したり、動画再生などを禁止することもできる。クライアントの情報や通信量、通信内容まで、遠隔操作で確認できるのはすごい。高価なビジネス向けモデルだけある。

Facebook Wi-Fiの設定で、Wi-Fiの利用可能時間を選択できる

「バイパスモード」では、チェックインなしにWi-Fiに接続する方法を提供する。「利用規約」では、店舗独自の規約を表示できる

「Traffic shaping rules」では、帯域を制限できる。SSID全体で制限したり、端末ごとに制限したりできる

最大速度を5Mbpsにしたうえで、iPhoneで計測した結果。ほぼぴったりコントロールされている

「Firewall」では、ポートを遮断するレイヤー3のファイアウォールに加え、特定のドメインや利用目的の通信のみを遮断するレイヤー7のファイアウォール機能も設定できる

SSIDは15個まで設定できるので、スタッフ用などチェックイン不要で利用できるアクセスポイントを用意しておいてもいい

「Facebook Wi-Fi」に接続したあと、チェックインする前はホームページを閲覧できない。しかし、初期設定ではhttp以外の通信はスルーすることになっている。もし完全シャットアウトしたいなら、「Block all access」にする

Facebook Wi-Fiを利用できる時間帯を細かく設定できる。店が開いていないのに、外部から使われるのを防止できる

リモートでMR12のLEDを点滅させたり、再起動させたりできる

MR12経由でやりとりされるパケットをキャプチャーできる。分析には知識が必要だが、トラブル時には役立つ

DNSを取得していないと正常に動作しない

 店舗ではすぐにつながったのだが、自宅で原稿を書こうとしてトラブルになった。Facebook Wi-Fiに接続して、ブラウザーを開くと、そのまま接続できてしまうのだ。どうやってもチェックインページが開かない。どのヘルプにも、海外のサイトにも解決策が載っていない。販売代理店のサジェスタムに伺ったところ、遠隔操作してもらい解決できた。先方の画面にも同じ設定画面が出るので、サポートもあっという間だ。クラウド管理のすごさを、図らずも体験できた。

 結論はDNS。通常のルーターにMR12を接続したのだが、DHCP機能によりIPアドレスは取得したものの、DNSが取得できていなかったのだ。MR12は「facebook.com」という文字列でアクセスしているようで、DNSが取得できていないと接続できなかったのだ。とはいえ、トラブル時には無条件につながるとは、実際の運用時には助かるところ。クレームが来るくらいなら、勝手に使ってもらった方がいい。DNSを手動で設定するか、別のルーターにつなげば解決だ。

 このほかは、トラブルらしいトラブルはなかった。銀座店でのレビュー時には、倉庫の一番奥にMR12を設置し、店内のさらにくぼんだところで計測したため、つながりにくいという現象が起きた。バッファローの最新ルーターではつながっていたので、MR12はそれほど電波が強くないのかもしれない。とはいえ、店内を見渡せる場所に設置した場合は、問題なく利用できた。

DNSが0.0.0.0になっている。これは、筆者の環境に原因がある

店舗側のコストパフォーマンスを検証する

 Facebook Wi-Fiに接続したら、店舗側が指定した利用時間内はインターネットし放題。店のチェックインは増えるし、チェックイン後にFacebookページを見てもらうことで、「いいね!」を押してくれる可能性も高まる。Facebook Wi-Fiがあるからと来店してくれたなら、きっと店内で料理や店に関して投稿してくれることだろう。

 試しに計算してみよう。原価BARには1日100人ほどが来店するので、そのうちの5%がFacebook Wi-Fiに接続。そのうち、50%が「いいね!」を付けてくれると仮定してみる。すると、1ヵ月に150チェックイン増加し、75の「いいね!」が付けられる。1年で、1800チェックインが得られるのだ。リピーターがいるので、「いいね!」は同じようには増えないが、中小規模店なら美味しい数字だ。

 コストは本体が8~10万円、翌年からのライセンス料が2~3万円。3年間で計算すると、12~16万円のコストがかかる。1800の3年分で5400チェックイン、1500いいね!程度が予想される。さらに、Facebookの平均友達人数は108人なので、約58万人のタイムラインに店の名前が表示されることになる。ある程度、店に関しての投稿も期待できるだろう。

 一般的な飲食店のFacebookキャンペーンでは、「いいね!」をしてくれた顧客に500~600円程度の1品をサービスすることが多い。そのように考えると、従来のキャンペーン程度の効果は期待できそうだ。特に、席数が増えれば増えるほど効果が現れる。逆に、カウンター数席の小規模店だと、割高になってしまいそうだ。とはいえ、3年以上使うのであれば、ライセンス料の元は取れるかもしれない。

 コスト面から考えるに、「Facebook Wi-Fi」はいきなりブレイクするようなサービスではないかもしれない。しかし、今後徐々に増えていくことは確実。「原価BAR」でも積極的に検討しているところだ。

 執筆中に、Facebookのヘルプが更新された。対応ルーターに「NETGEAR R6300スマートWiFiルーター」が追加されたのだ。昨年発売されたIEEE802.11acドラフトに対応するコンシューマー向けの高性能ルーター。価格は1万7000円前後と格段に安い。もし、日本で手に入る「R6300」がFacebook Wi-Fiに対応するなら、強力な選択肢になる。こちらは、追って検証する予定だ。

「NETGEAR R6300スマートWiFiルーター」。現在の所、Facebook Wi-Fiへの対応は謳われていない


筆者紹介─柳谷智宣

著者近影 柳谷智宣

1972年生まれ。ネットブックからワークステーションまで、日々ありとあらゆる新製品を扱っているITライター。日経パソコンオンラインで「ビジネスPCテストルーム」、週刊SPA!で「デジペディア」を連載するほか、パソコンやIT関連の特集や連載、単行本を多数手がける。近著に「ポケット百科 GALAXY SII LTE 知りたいことがズバッとわかる本」(翔泳社)「Twitter Perfect GuideBook」(ソーテック社)、「Dropbox WORKING」(翔泳社)、「仕事が3倍速くなるケータイ電話秒速スゴ技」(講談社)。


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