ユーザーはチェックインするだけでOK
ユーザーとしてチェックインしてみよう。まずは、無線LANで「Facebook Wi-Fi」アクセスポイントに接続する。パスワードはかけていないので、そのまま接続できる。その後、ブラウザーを開き、なんらかのウェブページにアクセスしようとすると、Facebook Wi-Fiのチェックインページが開く。ここでチェックインすれば、すぐにWi-Fiが利用できるようになる。なお、WEPやWPAなどの暗号化機能は使っていないので、第三者が通信内容を傍受することは可能だ。
会社をサボって飲みに来ているときなど、居場所がばれたくない場合もあるだろう。そんな時は、「ステータスを追加」をタップし、公開範囲を「自分のみ」にすればいい。また、ルーターの設定によっては、「チェックインをスキップ」といった項目が出ていることがある。この場合は、リンクをタップすれば、そのままWi-Fiに接続できる。Facebookアカウントを持っていない人向けの機能だ。とはいえ、この項目を用意すると、Facebookアカウントを持っている人まで利用しかねない。
そこで用意されているのが、「Wi-Fiコード」だ。「Wi-Fiコードを使用」と表示されている場合は、店舗側が設定したコードを入力することでWi-Fiに接続できる。顧客から相談を受けたときのみ、スタッフが教えるような運用が考えられる。
きめ細かい設定が可能なMRシリーズ
エンタープライズ向けのソリューションであるMerakiのMRシリーズだけあって、ルーターの機能は超充実している。店舗や顧客の要望に合わせて、きめ細かい設定が可能なのだ。それも、クラウド経由で操作できるので、便利この上ない。
例えば、顧客がチェックインすることでWi-Fiを利用できる時間や通信速度を制限したり、動画再生などを禁止することもできる。クライアントの情報や通信量、通信内容まで、遠隔操作で確認できるのはすごい。高価なビジネス向けモデルだけある。
DNSを取得していないと正常に動作しない
店舗ではすぐにつながったのだが、自宅で原稿を書こうとしてトラブルになった。Facebook Wi-Fiに接続して、ブラウザーを開くと、そのまま接続できてしまうのだ。どうやってもチェックインページが開かない。どのヘルプにも、海外のサイトにも解決策が載っていない。販売代理店のサジェスタムに伺ったところ、遠隔操作してもらい解決できた。先方の画面にも同じ設定画面が出るので、サポートもあっという間だ。クラウド管理のすごさを、図らずも体験できた。
結論はDNS。通常のルーターにMR12を接続したのだが、DHCP機能によりIPアドレスは取得したものの、DNSが取得できていなかったのだ。MR12は「facebook.com」という文字列でアクセスしているようで、DNSが取得できていないと接続できなかったのだ。とはいえ、トラブル時には無条件につながるとは、実際の運用時には助かるところ。クレームが来るくらいなら、勝手に使ってもらった方がいい。DNSを手動で設定するか、別のルーターにつなげば解決だ。
このほかは、トラブルらしいトラブルはなかった。銀座店でのレビュー時には、倉庫の一番奥にMR12を設置し、店内のさらにくぼんだところで計測したため、つながりにくいという現象が起きた。バッファローの最新ルーターではつながっていたので、MR12はそれほど電波が強くないのかもしれない。とはいえ、店内を見渡せる場所に設置した場合は、問題なく利用できた。
店舗側のコストパフォーマンスを検証する
Facebook Wi-Fiに接続したら、店舗側が指定した利用時間内はインターネットし放題。店のチェックインは増えるし、チェックイン後にFacebookページを見てもらうことで、「いいね!」を押してくれる可能性も高まる。Facebook Wi-Fiがあるからと来店してくれたなら、きっと店内で料理や店に関して投稿してくれることだろう。
試しに計算してみよう。原価BARには1日100人ほどが来店するので、そのうちの5%がFacebook Wi-Fiに接続。そのうち、50%が「いいね!」を付けてくれると仮定してみる。すると、1ヵ月に150チェックイン増加し、75の「いいね!」が付けられる。1年で、1800チェックインが得られるのだ。リピーターがいるので、「いいね!」は同じようには増えないが、中小規模店なら美味しい数字だ。
コストは本体が8~10万円、翌年からのライセンス料が2~3万円。3年間で計算すると、12~16万円のコストがかかる。1800の3年分で5400チェックイン、1500いいね!程度が予想される。さらに、Facebookの平均友達人数は108人なので、約58万人のタイムラインに店の名前が表示されることになる。ある程度、店に関しての投稿も期待できるだろう。
一般的な飲食店のFacebookキャンペーンでは、「いいね!」をしてくれた顧客に500~600円程度の1品をサービスすることが多い。そのように考えると、従来のキャンペーン程度の効果は期待できそうだ。特に、席数が増えれば増えるほど効果が現れる。逆に、カウンター数席の小規模店だと、割高になってしまいそうだ。とはいえ、3年以上使うのであれば、ライセンス料の元は取れるかもしれない。
コスト面から考えるに、「Facebook Wi-Fi」はいきなりブレイクするようなサービスではないかもしれない。しかし、今後徐々に増えていくことは確実。「原価BAR」でも積極的に検討しているところだ。
執筆中に、Facebookのヘルプが更新された。対応ルーターに「NETGEAR R6300スマートWiFiルーター」が追加されたのだ。昨年発売されたIEEE802.11acドラフトに対応するコンシューマー向けの高性能ルーター。価格は1万7000円前後と格段に安い。もし、日本で手に入る「R6300」がFacebook Wi-Fiに対応するなら、強力な選択肢になる。こちらは、追って検証する予定だ。
筆者紹介─柳谷智宣
1972年生まれ。ネットブックからワークステーションまで、日々ありとあらゆる新製品を扱っているITライター。日経パソコンオンラインで「ビジネスPCテストルーム」、週刊SPA!で「デジペディア」を連載するほか、パソコンやIT関連の特集や連載、単行本を多数手がける。近著に「ポケット百科 GALAXY SII LTE 知りたいことがズバッとわかる本」(翔泳社)「Twitter Perfect GuideBook」(ソーテック社)、「Dropbox WORKING」(翔泳社)、「仕事が3倍速くなるケータイ電話秒速スゴ技」(講談社)。
この連載の記事
-
第342回
トピックス
低解像度の古い写真を高画素化するAI「Topaz Gigapixel AI」で印刷品質にするワザ -
第341回
iPhone
iOS 16で変わった時計のフォントは変更可!? ロック画面を思いっきりカスタマイズしよう -
第340回
スマホ
バッテリー消耗問題が解決したiOS 15.4の新機能をチェックする -
第339回
スマホ
新顔のスマートリモコン「Nature Remo mini 2」で家中の家電をスマホでオンオフするワザ -
第338回
iPhone
格段に進化したiOS 15! イチオシの新機能10を一挙紹介 -
第337回
トピックス
標準機能が充実しているVivaldiブラウザーに乗り換えればウェブ閲覧が超快適になる -
第336回
トピックス
3000円以下で手に入る防水防塵ナイトビジョン対応の高性能監視カメラ活用術 -
第335回
iPhone
スマートトラッカーの決定版「AirTag」を活用して探し物を即見つけるワザ -
第334回
トピックス
今年ブレイクの予感!? ありとあらゆる情報を一元管理するサービス「Notion」がイチオシのワケ -
第333回
トピックス
もっと便利に活用しよう! Googleスプレッドシート使いこなしテクニック 7選 -
第332回
トピックス
Windows 10標準ブラウザー「Edge」がChromeの機能を使えるようになっているの知ってた? - この連載の一覧へ