「Samsungが独占するからAndroidは選ばなかった」
その予想自体は見事に的中
一方Androidについて。Nokiaが2011年にMicrosoftとの提携を発表した際、Intelと共同で進めていた「MeeGo」、Android、Windows Phoneの採用を検討したと明かしている。
では、なぜAndroidを選ばなかったのかについて、Elop氏が7月に英Guardianの取材で明かした。「Androidを1社が独占してしまうというリスクを心配していた。それがどこになるのかは利用できるリソースと垂直統合からおおよその予想はついていた」と語る。
Nokiaがプラットフォーム戦略を検討した期間に当たる2010年後半から2011年1月の間、Samsungは今ほどのシェアを持っていなかったが、Elop氏の予想は的中。Samsungが大きなリソースをつぎ込んだ結果、2011年から2012年の間に「GALAXY」はシェアを伸ばし、気がつけばAndroidの代名詞となった。
現在、ハイエンドのスマートフォン市場はiOSのiPhoneか、AndroidのGALAXYかの2極状態といっても言い過ぎではない。これによりSamsungはNokiaを超えて世界最大の携帯電話メーカーになった。
そんなSamsungの成功の影で、Androidによりトップブランドにのし上がったHTCは後退している。Strategy Analyticsによると、Samsungが単独でAndroidに占めるシェアは台数では41%、営業利益では95%という。「たくさんの良い製品が登場しているが、基本的には1社が独占している」とElop氏。Samsung以外の“Androidの第2グループ”に収まってしまう可能性を危惧し、それならばWindows Phoneで新しい勢力を作ろうとしたということのようだ。
同時に、Windows Phoneメーカーであることはキャリアとの話し合いにとっても好都合という。米国や日本ではキャリアは特に重要な役割を果たすが、Nokiaは歴史的にキャリアとの関係を築くのがそれほど得意ではない。Appleではないし、Samsung/Androidでもなく、3つ目の選択肢であるという状態は「キャリアが選択肢を揃えることでメーカー各社にプレッシャーを与える際に有用だ」とElop氏は説明している。
成長のペースは遅いWindows Phone
Nokiaともにこれからドライブをかけられるか
Elop氏のコメントはもしかすると後付けなのかもしれないが、それでもWindows Phoneを育ててAndroid/SamsungとAppleに対抗するという戦略は3年目に入っている。Nokiaは7月、PureView技術と41万画素カメラを搭載した「Lumia 1020」を発表、まずは米国で発売し、9月より欧州にも拡大する。
Lumia 1020は成功するのか? 見通しは楽観できない。初代PureViewの「Nokia 808 PureView」のようにニッチで終わってしまうかもしれないし、ある程度のヒットにつながるかもしれない。それでも、Nokiaの技術力を示したことで、ブランドイメージなど副次的な効果が期待できそうだ。Lumiaシリーズでは現在、エントリーの500系が欧州などで売れており、ハイエンド製品が消費者のマインドに及ぼす影響は無視できない。
Windows Phoneのシェアは増えてはいるがそのペースは遅く、Windows Phoneのシェアは英国では9%弱、米国では5%台にとどまっている。特に米国はモバイルアプリの震源地であり、Elop氏は着任以来のフォーカス市場にしているが成果はいまいちだ。
Vision Mobileが今月発表したデータによると、開発者が対象とするプラットフォームはAndroidが71%でトップ、2位はiOSは57%で、Windows PhoneはHTMLに次ぐ4位にとどまっている。Windows Phoneのアプリ数は15万程度、Appleは5月に85万本と発表している。Googleは今月、Androidのアクティベーション数を1日150万台以上と発表、Google Playのダウンロード累計は1年未満で250億本から500億本に倍増したと報告している。
NokiaはWindows Phoneで8割以上のシェアを持つが、Nokia以外にWindows Phoneを(真剣に)担ぐベンダーが少ないことも盛り上がりに欠く要因のように見える。
NokiaはSymbianの出荷を夏に終了する計画を明かしており、業績報告書ではSymbianの販売台数がほぼゼロになったと報告している。いよいよ持ち駒はWindows PhoneのLumiaとAshaになった。新しいNokiaがスタートする。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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