SPIDERはテレビと視聴者をつなぐ「インフラ」
「テレビは日常に根付いたもの」。これが有吉氏の考えだ。ところが近年の複雑なリモコンに象徴されるように、高機能化とトレードオフでテレビはどんどん使いづらいものになってしまった。
だからこそ、有吉氏はインターフェースにこだわる。SPIDERのリモコンはボタン数を減らし、小型化と同時に持ちやすいよう改良を加えた。また、番組やCMの検索から視聴、頭出し、お気に入り登録といった一連の動作がワンステップで可能だ。
有吉氏はSPIDERを「(視聴者とテレビ放送との)出会い&つながりマシン」と呼ぶ。SPIDERを使えば、まるでWikipediaやYoutubeを延々と見てしまうような感覚でテレビ放送を楽しめる。「どうやったら毎日、テレビを便利に楽しく見てもらえるか、考え抜きました」(有吉氏)。
そのぶん、SPIDERのトラブルには気を遣っている。有吉氏は、「1週間分の全ての放送が録画されているスパイダーの故障は、お客様にとって致命的です。『壊れたら修理に出して下さい』では済まないわけです」と話す。
そこで販売したSPIDERの電波状況やハードディスクの温度といったハードウェアの設置環境情報は全て監視し、把握している。異常を感知したら、すぐに電話などでサポートする体制を作っているという。SPIDERは、電気や水道と同じなのだ。ビジネスモデルも、ハードウェアの売り切りではなくサービスの提供によるサブスクリプション型を採用している。
一般家庭向けのSPIDERは準備中だ。有吉氏にとって、まだ満足するクオリティーに達していないという。「お待ち頂いているお客さまには申し訳ないですが、完璧な製品になるまでもう少し詰めてから発売します」(有吉氏)。
「テレビ離れ」が叫ばれる一方で、SPIDERはテレビの視聴体験を根本から変える可能性を秘めている。リアルタイムに流れる番組・CMとの出会いは「一期一会」的なものだが、それがSPIDERを通じて必然の出会いになったとき、番組やCMの価値が見直されるはずだ。視聴者はもとより、放送局、広告代理店、広告主を巻き込んだ「テレビ復権」の日が、すぐそこまで来ているのかもしれない。
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