ネットで時折話題になる「テレビ離れ」「テレビつまらない」論。そのような議論が出る背景には「テレビの視聴のされ方」の変化がある。スマホやタブレットで情報をキャッチするのが当たり前になった今、テレビの将来像はどのようなものになるのか? その中における「テレビ広告」の位置づけも含めて、電通総研研究主席兼メディアイノベーション研究部長を務める奥 律哉氏に話を聞いた。
テレビとネットは、お互いに相乗効果を生む
――最近のテレビの視聴のされ方で大きく変わった点は何でしょう?
「テレビを見ると言うときの「見方」が多種多様になった点ですね。デバイスだけ見ても従来のテレビ以外にスマホやタブレットもあって、視聴スタイルも、録画したものを見る/ワンセグで見る/家庭内LANで配信されているものを見る——とか、すべての組み合わせを計算すると20通り以上の「テレビの見方」がある。
テレビを見る環境がここ2年くらいで劇的に多様化したんです。昔であれば、テレビが置いてある部屋に行かなければいけなかったのが、別の部屋でも屋外でも見ることができる。テレビを見るチャンスが非常に増えた時代と言っていいでしょう」
――それなのに「テレビがつまらない」という声が出てくる理由は?
「まず言えるのが、テレビが常に生活の中で身近な存在だった時代と違って、物心ついたときからインターネットに接しているデジタル・ネイティブにとってテレビは「選択肢の一つ」となっていることでしょうか。
また、ソーシャルメディアのネタとしてテレビ番組の話はよく使われるし、見ているからこそ「つまらない」という感想も出てくる。従来の「テレビの見方」が多様化した結果、テレビの話題に触れる機会も多くなり、「つまらない」という感想が出てきやすくなったと考えています。
以前、東京大学大学院情報学環の橋元良明教授と電通との共同プロジェクトで、テレビ視聴とインターネット利用の関連を調べてみました。インターネット利用者の行動をチェックしてみますと、インターネットを利用した日は、利用しなかった日よりテレビの視聴時間が長い、という結果が出ています。
ちなみに何年実施しても、同じ結果が出ています。在宅時間が多いか少ないかでテレビとネットへの全体的な配分時間の多寡が決まるというデータも出ており、少なくともテレビとネットは時間を奪い合う関係ではない。インターネットに接する時間が長いと、テレビに関するネタをソーシャルメディアに投稿する機会も増える。テレビとネットは、お互いに相乗効果を生むと考えています」
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