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新しい「テレビ」はYouTubeから生まれる

2013年07月22日 16時00分更新

伊藤達哉(Tatsuya Ito)/アスキークラウド編集部

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 毎月10億人以上のアクセスを誇り、月間で60億時間以上もの動画再生、1分間に100時間分の動画がアップロードされている巨大動画投稿プラットホーム「YouTube」。

 

 2013年2月には、六本木に動画クリエーター向けスタジオ「YouTube Space Tokyo」を開設した。広い撮影スタジオはもちろん、グリーンスクリーンバックの撮影スタジオに加えてニュース番組風のキャスター席やコントロールルーム、クレーンカメラといった、ちょっとした放送局並みの設備が、YouTubeとクリエーター契約をした人なら無料で利用できる。

 

 テレビとは異なり、個人がメディアとして成立するためのプラットホーム作りに邁進するという、YouTubeのコンテンツオペレーションズ担当、デビット・マクドナルド氏に話を聞いた。

 
充実した設備を供えるYouTube Space Tokyo 内のスタジオ施設(写真:西尾 豪)

――「YouTube Space Tokyo」を開設した理由は?
「クリエーターの方々が作る動画作品のレベル向上の一助になりたい、というところでしょうか。動画作品の質が上がれば、登録者も増えますし、企業も関心を持つようになります。実際、このスタジオで作られた動画作品を見て、企業がクリエーターにウェブCMの制作を依頼する事例も出てきています。

 このスタジオでは、クリエーターに動画広告を発注したい広告主を招いたイベントや説明会も開催しています。クリエーターが動画制作をする場としてだけではなく、クリエーター同士や広告主が交流できる場にしていきたいですね」

――YouTubeにとってクリエーターは大事な存在でしょうか
「YouTubeの特徴は多くのクリエーターとパートナー契約を結んでいることです。全世界で数百万のクリエーターと契約を結んでいます。日本は他国と比べても多い方で、2012年の1年間だけで3倍伸びました。昔はクリエーター契約を結ぶのに色々と条件があったのですが、緩和されていって、今では動画1本からでもパートナーになれます。

 しかも、YouTubeでは動画コンテンツ制作のコンサルティング的な業務もしています。各パートナーに担当者が付いて、視聴者を集める制作上のテクニックを教えたり、企業とのコラボレーションの提案をしたりしています。放送局におけるプロデューサーとディレクターのような関係かもしれません。パートナーの自由度を確保しつつ、YouTubeというプラットホームを最大限活用するためのアドバイスが多いですね」

――ユーザーの視聴傾向に変化はありますか?
「昔であれば、家に帰ったらとりあえずテレビを付ける、という習慣があったと思いますが、今ではとりあえずYouTubeやニコニコ動画をチェックするといった具合に、特に若い人たちにとって動画共有サイトは日常的な存在になってきました。YouTubeで言えば、YouTube上の各チャンネルが、ちょっとした放送局のような存在になっています。

 数年前から大手企業による公式コンテンツが配信されていますが、今や個人クリエータ−のチャンネル登録者数が、放送局の公式コンテンツのチャンネル登録者数よりも多くなっている。日本に限らず、米国でも同様の現象が起きています。テレビの補完でなく、テレビとは異なる新しいコンテンツを視聴できる場所になった。動画コンテンツを自らプロデュースし、視聴者とコミュニケーションをとりながら活躍しているクリエーターが増えてきた、というのが3年くらい前から起きている大きな変化ですね」

――日本でクリエーターが動画投稿できる場としてはニコニコ動画もあります。
「日本にとって、ニコニコ動画のような強いプラットホームがあるのはいいことだと考えています。YouTubeにはないサービスを提供していますし。大きな違いは、収益がクリエーターに直接入るかどうか、でしょうか。

 YouTubeでは広告枠を用意して広告収益が直接クリエーターに入る仕組みを作っているので、コンテンツは幾分作りやすいかと思います。もっとも、私たちがクリエーターに話しているのは、登録者を増やしましょう、ということ。後からお金は自然と入ってくるので、登録者の数は大事ですね」

——クリエーターの投稿動画の登録者数を増やす取り組みは他にもしているのでしょうか。
「YouTubeのトップページを2012年12月に変えました。動画単体を紹介するのではなく、個々のクリエーターがコンテンツを発信している「チャンネル」を紹介する体裁にした、というのが大きな変更ポイントです。

 キーワード検索で動画にたどり着くのではなく、好きなチャンネルを登録して「自分のテレビガイド」を作って楽しめるようにしています。YouTubeはあくまでプラットホーム。その上で、個々のクリエーターが「メディア」として、チャンネルで発信するようなイメージです」

――YouTube自体がメディアになることはありますか?
「日々、大量の動画がアップロードされて、それらを全て整理してまとめるには時間も人手も足りません。YouTubeが新しいメディアのような存在になることはありません。そういったサービスは、クリエーター側がYouTubeのプラットホームの上に作っていいと思います。

 実際に米国では、YouTubeのクリエーターを1つのサイトに集めた『マルチチャンネルネットワーク』というビジネスモデルが出ています。『Tastemade』というグルメチャンネルは、色んなチャンネルと契約して再生リストを作ったり、スタジオにクリエーターを呼んで料理の動画を撮ったりしています。YouTubeというプラットホームの上に新しいビジネスを展開しているのです」

日本ではクリーク・アンド・リバー社がマルチネットワークに参入してクリエーターを支援するとともに年間売上高10億円を目指しているグルメ動画を集めた「Tastemade」はYouTubeに動画をアップするだけではなく、自前のスタジオを用意してクリエーターを招待している

※記事中の公式コンテンツ配信に関する記載に一部誤解を招く表現があり、当該箇所を訂正いたしました。(2013年7月27日)


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