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【スペシャル鼎談】清水亮×増井俊之×遠藤諭

世界をプログラミングせよ! でもってMOONってな〜に?

2012年12月28日 16時00分更新

文● 広田稔 語り●清水亮、増井俊之、遠藤諭

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「僕らが目指すのは月。シリコンバレーには行かない」

清水 タブレットもそうなんだけど、コンピューターがいつまであるのか。iPadの登場はみんな予想できたわけです。アラン・ケイの「Dynabook」だから。実はうちの会社の廊下には、Dynabookの論文が張ってあったりするんです。アラン・ケイが書いて、元々「日経サイエンス」(「The Scientific American」日本版)に掲載されたものを、「月刊アスキー」が1980年に再掲載したもの。あれとか読むと、今のコンピュータはあの辺で終わっていて、予言されたことはほとんど達成されている。その先のビジョンを描く人がいそうでいない。大学もいろいろ探したんだけど、なんかまだ新規性が残されてる気がするんですよ。

遠藤 おう、そういう話なんですね。

清水 増井先生は、ももともと企業にいらっしゃったからまだそうじゃないけど、いってみれば今の大学の中で新規性を求めても、セコいものしか出てこない。改良して委員会がいいねと認めてくれるものと、今ここに存在するものとの間にギャップがすごくある上に、新規性は見てるけどディテクション(発見)は見てないわけです。アラン・ケイの目指していたものが実現したとして、MacやWindowsの先にiPadが出てきましたよと。この先が、もやもやしてる。

図で描くとこんな感じ

遠藤 それは答えがはっきりしていて、メディアという領域を出てないからなんじゃない。要するにメディアというものは、手前と向こうの間にあるものというか、元々メディアって「霊媒」の意味なんですけどね。物体を離れたとたんにその答えは出てきそうだ、ということでしょう。

Kinect

清水 もうひとつは、アイバン・サザーランド。こっちは「AR」(拡張現実感)、「VR」(バーチャルリアリティ)って2つの領域があって、要はアラン・ケイの領域で出てこなくなったから、ARやVRの方にむしろ戻ってきたっていう。やっぱりiPadというのが、Windows 95がある時代に出てきても学会では誰も評価しないわけですね。だってアラン・ケイが発表しているから。ジェフ・ハンがマルチタッチを発表したやつだって、新規性では評価されていないわけです。要素技術ではダメ。「Kinect」とかも学会的な新規性はなくて産業的。

ARやVRは、パソコン→タブレットの発展とはまた別のライン

清水 というのがあるから、この領域だけ探していても、僕の欲しいものは未来のビジョンとして得られないんだろうなというのが出発点にあるわけです。だから、MOONはDynabookの世界観を踏襲しつつ、次のiPadって言われると「小さく速く」ってつまらない方向なので、そういうのはソニーとかサムスンにまかせて、僕らはまったく違う領域を目指そうという。それが月。普通の企業はカリフォルニア州ですぐ儲かる世界だけど、僕らの目指す月はテキサス州みたいな感じ。みんなが地上でお金儲けして、勝手に戦ってるうちに、うちらは月にいくからバイバイっていう。これが魅惑の月なんですよ。

MOONは、Dynabookの世界観を踏襲しつつまったく違う領域(月)を目指す

遠藤 分かったから、要はなんなのそれというのは?

清水 え、それはまだ……。

遠藤 「週刊アスキー」で12月から「スーパーデジタル・ラボ」という新連載を始めたんですね。この連載のリードで、数千万台のサーバーの向こうに見えてきたのは、コンピュータというのは我々自身を知る道のりだったんじゃないかと書いてあるわけです。その中で、言語の発生について理研の先生に聞きにいった回があった。要するにメディアについて議論しているけど、「何のために伝えているか」、「なんのために言葉が生まれたのか?」というもう一歩根源的な話になっている。言語の起源って、2種類ほどあって、ひとつは「歌」、もうひとつは「右手」から発生したって説がある。

清水 あー、なるほど。面白いですね。

遠藤 MOONも最近の脳科学でいう「いい訳する脳」みたいな話で、手のほうが頭で判断するより先に動いている、というあたりまで行けちゃうといいねぇ。

清水 そんなすごいレベルじゃないですよ。というか、まったく売れないものをつくっても僕も株主に怒られるから、売れるか売れないか分からないギリギリの線をねらっていかないといけないんですね。正面切ってアップルやサムスン、ソニー、NEC、シャープとかと戦う体力なんてあるはずないんだから、彼らが死んでも作らないものを作るしか、僕らは生きる道がないんですよ。

遠藤 ギリギリの線なんだ。

清水 間違いなく言えるのは、似たようなものが出てきたときに「これはMOONの真似だね」といわれるものになる。それぐらいのオリジナリティがないと逆にやる意味がない。

増井 AR並みにすごいこと?

清水 そういうのはできないですよ。

遠藤 ちなみにテキサスは、あるインディアンの言葉で「友達」を意味するんだけど、その言葉を使っていた部族は真っ先に皆殺しにされたと、たしか映画「ビデオドローム」の中で言っていました。

清水 おおー。やばいね。シアトルも、現地に住んでいたインディアンの酋長の名前。

遠藤 そうなんだ。

テキサス州旗

清水 俺がテキサスが好きな理由は、州のマークがLone Star、一匹星、独立自尊を意味するから。

増井 でもUEIの米国法人はカリフォルニアじゃなかったっけ?

清水 そうだけど。

遠藤、増井 ワハハハ。

遠藤 俺、UEIが見所があると思ったのは、UEIのホームページ見たら、日本語のページは本社が「本郷」って書いてあるのに、英語のページでは「Akihabara」って書いてあるのね。「あ、この会社は見所があるな」って。

清水 (笑)。とにかく、シリコンバレーを目指さないという意思なのよ。

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