ラインナップの増加と高機能化が進むAVアンプ
部屋の中に5~9本ものスピーカーとサブウーファーを置いて使うサラウンドシステム用として認知されているAVアンプ。国内だけを見ると決して市場規模は大きくないが、実はオーディオ製品というのはPCと同じくらい昔から、世界中でほぼ同じ仕様で商売ができるグローバルなモノである。
このため各社ともに製品のラインナップは驚くほど多い(実際、日本向けモデルは世界向けに比べて数を減らしているほどだ)。そして日本での市場の小ささから考えると、信じられないほどの高機能化が進んでいる(こういう高機能化、高集積化が日本の得意技でもあるので)。
著名なオーディオ評論家の先生の名言でもあるが、オーディオ用のマルチチャンネルアンプ搭載に加えて、デジタル入出力や映像入出力まで統合したAVアンプは「ひとつの檻でトラとライオンとゾウを飼うようなもの」なのだ。
今ではハイレゾ対応のネットワークオーディオ機能やスマホ連携と、さらに高機能化を突き進んでおり、すこぶる便利。もちろん、日本でもAVアンプに注目している人は少なくないだろう。
パワーアンプを分離して小型化してほしい!
問題は本体の大きさだ。筆者は仕事上、それなりのAVアンプを使っているからあまり気にしていないが、実売で5万円を切るようなエントリー機でも一般の人には大きいと感じるだろう。
薄型テレビ向けのラックでは、入らないことも十分にありうる。これは住宅事情が厳しい日本固有のものとも思えるので、グローバルモデル戦略で動いているAVアンプでは対応しにくいが、やはり小さくコンパクトなモデルがあっていいと思う。
手っ取り早いのが、パワーアンプのセパレート化だ。サイズ的にも大きな体積を占めるパワーアンプを分離すれば、サイズは簡単に小さくできる。
セパレートアンプは、ピュア・オーディオでは当たり前なので、接続などの汎用性の問題もない。しかも、ユーザーは2チャンネルでも9.1チャンネルでも自分の環境に合わせたパワーアンプを選べるから、無駄も少なくできる。使いやすいサイズさえ実現できれば、これだけ高機能なAVアンプはもっと注目されるはず。
セパレートAVアンプは、今のところ高級機が中心だが、日本でも発売されることが増えてきている。この流れが進んで、普及機やエントリー機でもセパレートAVアンプが増えてくればいいなと期待している。
ネットオーディオの普及にともない
ネットワークスピーカーの普及が加速する!?
オーディオ機器はネットワークオーディオの普及などで堅調だったのは冒頭で触れた通り。極端に言えば、第二次世界大戦後に作られたようなクラシックなスピーカーでも最新機器と接続して問題なく使えるように、あまり抜本的な変化がないため、ユーザーも保守的な傾向が強く、PCやネットワークの導入はなかなか進んでこなかった。
ところが、ネットワークオーディオのハイレゾ配信の普及で突破口が開かれると、DYNAUDIOの「Xeo」(関連記事)のような、スピーカー配線なしで使えるワイヤレススピーカーも登場してきた。日本のメーカーではオンキヨーも発売しているし、今後はますます進んでくるだろう(関連記事)。
ネットワークスピーカーのメリットは2つある。基本的にはワイヤレスにするためのトランスミッターとレシーバーは専用機器となり、設定が不要で簡単に使えること。トランスミッターが汎用的なオーディオ入力を備えてさえいればいいので、これならばネットワークは難しいという人でも問題なく使える。
もう一つは、スピーカーにアンプを内蔵すること。オーディオ機器の中でスピーカーの次に大きなコンポーネントであるアンプをスピーカーに内蔵できるので、部屋の中の物が減らせる。アンプは特定のスピーカーに合わせた専用設計だから音質的なメリットもある。
これをさらに拡大して考えると、先ほどのセパレートAVアンプとネットワークスピーカーを使えば、部屋中のスピーカーをすべてワイヤレス化することも不可能ではない(電源だけは必要だが)。スピーカーの壁掛けなどを活用すれば、置き場所の問題も解消でき、ホームシアター実現への難関の数多くが解消できることになる。
このように、ネットワークスピーカーはかなり可能性の高い製品だと思っている。まあ、ネットワーク対応の機器が増えてくると干渉の問題も増えるので、解決しなければならないことも増えるが、AVの世界をより快適かつ使いやすくしてくれるはずだ。