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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第106回

Clover Trailの実力は? Windows 8版ARROWS Tabをチェック

2012年12月14日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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10時間以上バッテリーで駆動!
タッチセンサー精度に若干の不満も

 では、バッテリー駆動時間はどうだろう? Windows用アプリが使えるので、他のWindows PCと同じようにバッテリーテストツール「BBench」を使ってチェックしてみた。なお、計測結果が「バランス」のみとなっているが、これは、試用機では省電力設定の詳細が変更できず、「バランス」しかなかったためだ。その中で駆動時間が最長となるよう、バックライト輝度を最低に落としてテストしている。

BBenchによるバッテリー駆動時間テスト
バランス
約10時間5分

 その結果は、脅威の10時間越え。輝度を最低にしてのチェックでは、約10時間5分と、カタログ表記値である約10.5時間(動画再生時)にかなり近くなった。輝度最低では少々暗すぎるので、実際にはもう少し明るくする必要があるだろうから、実用域の設定ではもう少し短くなりそうだが、「PCでなくタブレット的なバッテリー駆動時間」になっている、といって間違いなさそうだ。この点において、ライバルであるARM製品と大差ないレベルに突入している。

 では発熱はどうだろう? こちらはARMタブレットに比べると、少々大きい気がする。常にプロセッサーがあると思われる左側がピンポイントに発熱し続けており、ちょっと熱が気になった。ただし、フルに負荷をかけても発熱はある程度で収まっており、ここはCore iシリーズとは違った印象である。発熱にともなう動作速度低下などは、少なくともテスト中には見られなかった。

各部の温度比較 放射温度計による測定、室温は22度。フルパワー時はH.264動画エンコード状態

 なお、QH55は防水・防塵構造にするためか、本体内に空気を取り入れる穴がまったくない。そのため、放熱はボディー構造に依存していると考えられる。この発熱の大きさは、筐体内に空気の流れを作っての空冷によらない構造によるもの、とも考えられる。プロセッサー部のピンポイントの発熱が表に出てきている、と考えられるような発熱傾向であるのも、ボディーで放熱するがゆえだろう。そのため、この放熱の傾向はQH55独特のもの、と言えるかもしれない。

 Windows PCが、しかも特別な増設バッテリーをつけずにこれだけ動作する、というのは間違いなく画期的だ。この1点をもって、QH55に魅力を感じる人もいるはずだ。筆者もそう思う。もちろん、これはClover Trail世代のAtomの魅力でもある。メモリーが2GBしかない以上、あまりヘビーな作業はできないのだが、それでも、ほとんどのビジネスワークはこれで完結できるはず。使い方さえわきまえていれば、「荷物を軽くしながらバッテリー駆動時間を延ばす」パソコンとして、QH55はお勧めできる。少なくとも「iPadやAndroidタブレットでPC的な作業をしよう」と考える人は、考慮に値する。

 ただQH55については、タッチセンサーの精度が、少々気になったのも事実だ。同じようなUIを持つ、同じようなサイズのWindows機に比べ、ちょっと精度が劣るような気がするのだ。モダンUIで使う場合はまったく気にならないが、精細なデスクトップ環境で利用する場合、どうも小さなアイコンがタップしづらい。デスクトップアイコンなどの表示サイズを「125%」に設定し直すと(画像参照)快適になるので、QH55を使う人でこの点が気になる人は、設定変更をお勧めする。

画面表示を「125%」にしてみた。細かなアイコンなどのタッチは、こちらの方が確実だった。筆者としてはお勧めの設定

お勧めする人
・軽いが長時間動作する「PC」が欲しい人
・防水/防塵のタブレットが欲しい人
ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J の主な仕様
CPU Atom Z2760(1.5GHz)
メモリー 2GB
グラフィックス CPU内蔵
ディスプレー 10.1型ワイド 1366×768ドット
ストレージ SSD 64GB
無線通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
インターフェース USB 2.0×1、ダイレクトメモリースロット(microSD対応)、ヘッドホン出力など
サイズ 幅264.4×奥行き169.4×高さ9.9mm
質量 約574g
バッテリー駆動時間 約10.5時間
OS Windows 8 32bit
価格 9万9800円(直販価格)

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)、「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)、「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)。 最新刊は「ソニーとアップル 2大ブランドの次なるステージ」(朝日新聞出版)。

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