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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第66回

Androidスマホが売れると、なぜかAppleとMSが儲かる?

2012年11月28日 17時00分更新

文● 末岡洋子

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必ずしもAppleが常に優勢とはいいがたい対Samsung訴訟
現実的な条件での和解はありえるのか?

 ここで、SamsungとAppleのここ数ヵ月の訴訟を振り返ってみると、8月末の10億ドル以上の損害賠償金を伴うSamsung敗訴の後、Appleにとってはむしろネガティブな状況が続いている。Appleは10月、イギリスで認められなかったデザイン特許について控訴するも失敗、英高等法院はAppleに対し、Samsungが自社特許を侵害していないことをウェブサイトで明示するように命じた。

 アメリカでは「GALAXY Nexus」「GALAXY Tab 10.1」の販売差し止めが解除となり、11月21日にはSamsungが攻撃を仕掛け、「iPad mini」を特許訴訟の対象に拡大した。そこにきて今回のHTCとの和解内容開示がどのように影響するのか。すべては内容次第だが、今後の戦いを有利に持っていくことができるかもしれない。

 なお、AppleとSamsungはこれまで合意に向けて話し合いを持ったことがあったが、その際にAppleがSamsungに要求した金額は1台あたり30ドル(スマートフォン)、40ドル(タブレット)とも伝えられている。Samsungは法廷書類でAppleとライセンス合意を望む意図を示しているようだ。

Androidを採用することで
結局お金を払うことになっている端末メーカー

 ライセンスに目を移すと、あらためてGoogleのAndroid戦略の特異さを実感させられる。HTCとの和解により、おそらくAppleはAndroidから間接的ではあるが収益を得る2社目の企業となった。1社目はもちろんMicrosoftだ。MicrosoftはSamsung、HTC、Acerなどのメーカーとライセンス合意を結んでおり、Android端末が売れるとMicrosoftに収益が入る仕組みを作っている。

 メーカーにとってAndroidの魅力の1つは“無料”のはずなのだが、皮肉なことに別の形でAndroidの利用に金銭を払っている。そう考えると、Androidはタダとは言えないOSだ。Googleの狙いは、自分たちの検索と広告にユーザーを呼び込むことだが、Androidの特許対策も必要になってきているようにみえる。特許保護はMotorola Mobility買収の狙いであったはずだが、いまのところ効果はほとんど見えない。

 なお、SamsungとAppleは12月はじめに審問が開かれる予定になっている。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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