Windows 8の正式発表と出荷の日である10月26日が迫りつつある。すでにRTM(製造候補版)はPCメーカーの手に渡り、Windows 8がプリインストールされたPCが、いまや続々と製造されている。ちなみにマイクロソフトでは、出荷のことを「GA」(General Availability)と呼んでいるそうだ。
しかしWindows 8の開発は、まだ終わってはいない。インターネット接続がほぼ標準となったWinodow XP以後、ソフトウェアはユーザーの手に渡ったあとでもアップデートされるようになるのが普通。いやハードウェアでさえ、購入後インターネットに接続すると、ファームウェアのアップデートを受信し始めることさえある。
アップデートが困難だった昔の電子機器
ソフトウェアの開発は人間が行なうことであるため、どのような作業も時間が必要になる。また人間ゆえ、ミスもする。そのため辞書的な意味での「完成」を待っていたら、いつまでもソフトウェアを「出荷」することは不可能だ。どこかで妥協する必要がある。
かつてはコンシューマーユーザーが大量のデータを通信で受け取る方法がなかったために、ソフトウェアの完成度は高かった。ただしカラクリがある。たしかに出荷直前まで、開発者が職場に寝泊まりするぐらい仕事していたという事実はあるにせよ、実際には仕様の部分で妥協されることがあった。つまり、「間に合わないから、この機能は捨てる」という判断である。
OSのようにバージョンを重ねる製品はともかく、CD-ROMにプレスしたり、ハードウェアに組み込んで出荷するようなソフトウェアは、こうした事態になりがちだった。そういう状況でも、なんとかしようと努力した人達は少なくない。日本の多くのソフトウェア技術者がそうだった、ともいえる。
だが、中には計画どおりにいかないこともある。特にハードウェアがらみでは、ハードウェア自体がプログラムの保存にフラッシュROMを使うといった、後日のアップデートに対応している必要がある。ところが昔は「マスクROM」と呼ばれる、ROMに格納するプログラムのパターンを回路パターンとして製造する製品もあり、BIOSやシステム(例えば昔のBASICインタプリター)によく使われていた。
数万個ものROMを安価に作るための手法だったが、いったん製造してしまうと修正はできない。そんな機器にソフトウェアのミスがあると、かなり大変なことになる。筆者も某社のパソコンで、サービスマンがROM交換に来た経験がある。
Windows 8もシステムやデスクトップ環境の
アップデートはWindows Updateで
現在のPCはインターネット接続が前提で、しかもソフトウェアならば、アップデート機能を持つのが普通だ。そのため、RTMやGAというスケジュールはあるものの、OSの開発はGAの後も続くことになる。
ご承知のとおり、Windowsのアップデートは通常、「Windows Update」を使う、Windows 7でもアップデートは定期的に行なわれてきた。Windows Updateでは、米国時間で毎月第2火曜日午前10時がアップデートの公開スケジュールとなっている。このスケジュールはWindows 8でも変わらない予定だ。Windows 8向けのアップデート提供は10月から開始されており、順次Windows Updateで配信される。
例えば10月9日に配信されたWindows 8向けのアップデートは、これまでのアップデートをまとめたもの(累積アップデート)で、電力効率の向上やスタート画面のパフォーマンス強化などを含んでいた。こうした性能改善に関わるアップデートが定期的に出てくるのは、開発自体がまだ停まっていないからだ。
2月末に公開された「Windows 8 Consumer Preview」や6月に公開された「Release Preview」には、ユーザーからのレポートやアプリケーションのクラッシュによる自動レポート機能があるため、マイクロソフトには大量のバグレポートが集まる(必ずしもバグが原因とは限らない)。
こういう状態だと、プログラムを「完成」させることはできないようにも思える。だが一般的にアプリケーションの開発では、こうしたバグレポートの数は、一定の曲線を描いて時間と共に低下していく。そのため、ある程度のその様子を観察することで、実用的に問題のないレベルまで下がる日時を予測できる。計画どおりに開発を進めていき、最終決定(例えばRTMとする日)はこうした予測から最終判断するのが普通だ。
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