病院内へ傷病者を搬送
スタッフに緊張が走る
野戦病院の敷地に運び込まれた傷病者は、展開した野戦病院の外でトリアージ(治療の優先度を決定する診断)を受け、病院のなかへと運び込まれる。
まず野戦病院内に入ってすぐの場所で、基本となる問診や診察が行なわれ、状況に応じた処置室へと運ばれる。緊急搬送された経験を持つ人なら経験があるであろう救命施設と同じ展開だ。
病院内は、応急処置を行なうエリアに続いて、手術室や怪我の具合をチェックするためのレントゲン室といった緊急性が高く、かつ使用頻度の高いエリアが手前に配置されており、その奥にICU(集中治療室)、そして一般病棟を置く構造になっている。
治療施設だけでなく
検査室や薬品庫も充実
野戦病院には、治療に使う道具や薬品などを管理する薬品庫や、治療によって汚れたり汚染された装備品を消毒洗浄するための滅菌室、さらには毒物や感染症、血液の状態などをチェックするための薬物臨床検査室といった、直接の治療ではないが病院機能として欠かすことのできない機能も有しており、その設備はそこらの病院に負けないほど充実している。
ちなみに、今回の84床が使える状態になるまでに有した日数はわずか4日間。たった4日間で展開が完了し、後は医療従事スタッフが到着すれば、どんな状況の元でも病院としての機能が稼働するのだ。もちろん水や電力も自前で用意されており、必要に応じて汚れた水を綺麗な水へとろ過するための装置もアメリカ軍には備わっているとのことだ。
戦闘時だけでなく災害時にも活躍
備えあれば憂いなし
訓練を目にして驚かされたのは、防災の日に行なわれる日本の避難訓練とは違って、けが人もそれらしく見えるようにメイクが施されているなど、現場の持つ緊張が全く違っていたことだ。
この野戦病院のセットは、2011年に発生した東日本大震災の際には、日本政府からの要請がなかったため展開することはなかったのだが、過去には戦闘以外の災害地域でも展開したことがあるという。
願わくばこの装備が未来永劫、使われる機会が無いことが望ましいが、もしもの時にはここにこうした頼りになる装備があることを頭に入れておくのもよいのではなかろうか。