予約開始後即完売の「小米(シャオミィ)」新機種今月リリース
「小米手机(Xiaomi Phone)」は、それまで「そこそこの性能」「そこそこの価格」であった中国メーカー製スマートフォンのイメージを一変させた。1999元(約2万5000円)ながら中国人のハートに刺さるハイスペック&ハイコストパフォーマンスを実現。メーカーの「小米(Xiaomi)」は、日本にもセキュリティソフトやオフィスソフトをリリースした「キングソフト」(金山軟件)の社長が立ち上げた会社だ。
小米手机は当時知名度ゼロからスタートした企業だが、「非常に高性能なのに安い」というコンセプトからヘビーユーザーを中心に注目が集まり、予約を受付ればすぐに完売になる状態が続いた。
やがて、小米手机のリリースからしばらく時間が経過し供給が潤沢となると、家電量販店や携帯電話ショップで2年契約などで無料で入手できるようになり、IT製品にアンテナを向けていない市民にも認知されつつある。
OSには、小米がAndroidに手を入れたカスタムOS「MIUI」を搭載している。中華な独自OSというととかく評判が悪いが、「メモリを食う、バグがある!」という不評もあれば「中国人ウケするデザインでよい」という好評もあり賛否両論だ。
そのような現状で、注目の新機種「小米手机2」が発表され、注目されている。そのスペックはCPUにクアッドコアのQualcomm「Snapdragon S4 Pro 1.5Ghz」を採用し、2GB RAM、ディスプレーに4.3型(720×1280ドット)のIPS液晶を搭載。
前面には自分撮り用の200万画素のカメラユニットを、背面には800万画素でF2.0、広角27mmのカメラユニット搭載。最新スペックを搭載しながら値段は初代と同様1999元(約2万5000円)を実現しており、スペックとコストパフォーマンスでしか判断出来ない前評判段階での注目度は高い。発売は今月で台風の目となろう。
デザインがかっこいい「OPPO finder」と「魅族MX」
小米手机の弱点のひとつはデザインだ。小米に対して「OPPO finder」や「魅族MX」はデザイン性で上回る。
ソニーやノキアなどの著名メーカーのデザインにはかなわないが、小米よりは質感や薄さなど全体的にデザインで上回っているという感じだ(その分、小米手机はバッテリー容量がやや大きい)。
OPPO finderは「OPPO」というメーカーからリリースされた、同じくハイスペック&低価格が売りの機種。世界最薄を謳う厚さ6.65mmの中に、デュアルコアの「Snapdragon MSM8260 1.5GHz」に1GB RAM、16GB ROM、800×480ドット表示が可能な4型「Super AMOLED Plus」ディスプレーを搭載。
前面に130万画素、背面に800万画素のカメラユニットを内蔵する。OSはAndroid OS 4.0となっている。
「魅族」(Meizu)がリリースする魅族MXは価格で優れる小米手机とデザインで優れるOPPO finderの中間的な機種だ。CPUにクアッドコアの「MEIZU MX 4 core MX5Q 1.4Ghz」を採用し、1GHz RAM、32GB ROMを搭載。ディスプレーには960×640ドット表示が可能な4型ASV液晶パネルを採用する。
前面に30万画素、背面に800万画素のカメラユニットを内蔵し、OSは「Flyme」というカスタムROMとなっている。32GBモデルは2999元(3万7200円)だ。
ちなみに魅族は「魅族MX2」のリリースを年内に行なう予定。魅族MX2のスペックは現状報じられているところでは、CPUにSamsungのクアッドコアCPU「Exynos 4412 1.6GHz」を採用し、2GB RAM、1280×800ドット表示が可能な4.4型ディスプレーを搭載。OSはAndroid 4.0とのこと。
パチモノを出していた会社が本家にかみつく構図
以上、2012年秋冬の注目の機種を紹介した。小米手机が1機種CDMA 2000方式版を出している以外はいずれも3GはW-CDMA方式、筆者的には日本でもSIMカードを入れて利用したくなる。総括すると、小米手机はスペックに対して驚きの安さにばかり目が行くが、OPPO finderや魅族 MXを見ると、デザイン性でも中国の消費者の評価を受けていることがわかる。
今月の小米手机2、さらに年内の魅族MX2の発売で、中華スマートフォンの常識が一歩前進することは間違いない。
小米やOPPOや魅族が台頭してきているのは値段だけではない。今までの中国市場で主流となった中国周辺機器メーカーやプレーヤーメーカーは、巨大人口市場を前に「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」「人海戦術」とばかりに、とにかく多数の製品をリリースしてきた。
対して今回紹介したメーカーはリリースする製品を1機種ないし数機種に絞り、専用カバーなどのオプションも自前で充実させ、文字通り社運をかけてリリースしている。
OPPOや魅族はもともとiPodやiPhoneもどきのMP3プレーヤー、MP4プレーヤーをリリースしていた。つまりApple製品モドキを出した会社が、中国市場においてiPhone 5のライバルになっている。パチモノを出した会社が本家にかみつく、こうした構図も興味深い。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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