デノンが贈る、新世代ヘッドフォン+ネット対応オーディオ 第1回
23gの防水&BTイヤフォンから、お値段12万円の最上級モデルまで
デザインと用途を明確にした、デノンの新提案ヘッドフォンを聴く
2012年09月13日 13時00分更新
これだけの機種が並んでしまうと、どれを選んでいいか正直悩んでしまうところ。それぞれに特徴があり、すべてに紙幅を割いて紹介したいところだが、ここでは編集部の基準で選んだ注目機種を各カテゴリー別にピックアップして紹介する。
新生ヘッドフォンの試金石
“MUSIC MANIAC”──AH-D7100EM
まずは音質へのこだわりという点でフラッグシップの「AH-D7100EM」は外せない。
高級ヘッドフォンの人気は続いており、市場では海外ブランドを中心に、10万円を超える機種が増加傾向にある。そう考えれば、実売12万円という価格も驚愕するほどではない。とはいえ国産最上位クラスのベンチマークとして本機を聴くことには意味があると思う。
デノンが培ったHi-Fi技術を凝縮したという意味で、多くの注目すべき特徴を持つ本機だが、やはり同社従来製品とは一線を画す、現代的なフォルムは注目がいくポイントではないだろうか。天然マホガニー材のハウジングを継承しつつ、外側には明るいシルバーのフレームを使用している。
5ヵ月かけて丹念に仕上げた木材ならではの暖かさと、MacBookを始めとした多くのデジタル機器との親和性が高い“金属的な質感”の調和。このシンプルで都会的な雰囲気は、新しいデノンを象徴するたたずまいを備えている。
フレームとイヤーカップは球体のジョイントで連結されており、耳の位置に合わせてかなり自由に角度を変えられるのが特徴だ。フィット感を追求した結果、同社がたどりついたのが“ペンタゴナル・シェイプ”と呼ぶ五角形の特徴的なイヤーパッド形状だ。一般的な楕円形よりも耳に近い形状のため、余分な隙間が減り、快適かつ環境音の影響の少ないリスニングが可能になるという。
低反発素材を入れた深く厚みのあるイヤーパッドは、茶色の糸で縫い合わされている。別の取材でBMWの車内から着想を得たというコメントもあった。
ケーブルを着脱式とした点にも注目したい。本体には純度が99.99999%と非常に高い無酸素銅(OFC)を使用したケーブルが2種類付属する。1つは3mのケーブルで、もうひとつはiPhone用のリモコン+マイクを内蔵した1.3mのケーブルだ。端子部分の豪華な雰囲気や、ケーブルジャケットにラバー調・クロス調の2種類を用意するなど、それ自体が高品位なものだが、ケーブルを変更して音の変化を楽しむといった使い方もできる。
ドライバーは直径50mmと大口径で、ナノファイバー製の振動板の周囲に、柔らかなエラトマー製樹脂を接着・圧着した“フリーエッジナノファイバー振動板”を新開発している。フリーエッジは、ストロークが大きい単品スピーカーのウーファー部分などによく用いられるもの。遅れず明晰な低域を表現するためには、振動板が大きく素早く自由に動く必要がある。このスムーズな動作は、本機のナチュラルで繊細な表現に一役買っている。
また、高級機ということで付属品にもこだわりがある。箱やケーブルの豪華さも印象的だが、大切に持ち運び、保管できるという意味で、ヘッドフォンスタンドやカラビナ付きのキャリングケースも嬉しい。
ナチュラルで繊細、美しい音の表現力に驚嘆する
音調は軽やかでナチュラル。長時間のリスニングでも聴き疲れしない。第一印象では、ハイエンド機で強調されがちな、レンジの広さ、情報量の多さといった側面は控えめ。パッと聴き流しただけでは、個性を感じにくいかもしれない。しかし1曲、2曲と聞き込んでいけば、じんわりとその音が持つ上質さがにじみ出る。
おそらくは試聴を重ね、時間をかけて練り込み、吟味した結果なのだろう。心地よくバランスの取れたハーモニーに浸っているうちに、“音のよしあしを聞く”のではなく“音楽自体を楽しむ”ことに心が自然と向かっていくのだ。
音楽ジャンルでは、音の美しさや質感、音楽的な躍動感といった要素にフォーカスしたものが得意。(ポップスや声楽を含む)ボーカル系全般、アコースティック系、室内楽など小編成の弦楽演奏などは特に素晴らしい。
明晰かつ充実した低域は大口径ドライバーの恩恵。付帯音がなく滑らかなボーカルはフリーエッジの効果か。そして高域は抜けがよく、スッキリ爽快。それぞれの帯域がきちんとその役割を主張するが、全体としてチグハグにならず自然につながる。このバランスの良さが本機の魅力であり、上品さのゆえんだろう。
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