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Microsoftが若きエンジニアをサポートする理由 第2回

日本から世界を目指す、Pitapat合田氏

錯覚からドキドキする、ソーシャルマッチング「Pitapat」

2012年05月09日 11時00分更新

文● タトラエディット、語り●合田 武広、遠藤 諭、写真●小林 伸

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錯覚とゲーム

遠藤 「そこでどんな仕組みを考えたんですか?」

合田 「そうですね。最初はハートボタンが1つだけあって、好きだったら押す。これだけです。ハートボタンを押すとリストに追加されるという仕組み。そうやって作っていたら、女の子から『いきなりハートボタンは押しづらい』って意見がありまして。男だけで作ってる分にはそれでいいと思ってたんですけれど、ヒアリングを重ねていくうちに違うとわかってきた。今はボタンがハートではなくて『ドキッ(Bright)』と『にこっ(Hopeful)』と『萎え(Dim)』ボタンを付けています」

遠藤 「萎え!」

合田 「でも萎えってなかなか押しづらいじゃないですか。だから日本人だとだいたい真ん中の『にこっ』を押すんですよ。すると『にこっ』同士のマッチ……にこにこマッチって呼んでいますが、すごくマッチ率が上がったんですよね。あとは、最初は先程言った『この中の○人の中の誰かがあなたのことを気になってます』っていう通知も、あとから付けたものなんですよ」

遠藤 「あなたのことを好きなのは誰なのか、断言しないんだ」

合田 「それが逆に面白いと思って(笑)。恋愛ゲームのような要素が入ってくることで、なんというか『錯覚』が生まれるんです。友達に押されてもドキドキしないけれど、友達の友達とかそこも混ざっているから錯覚するんですよ。 『僕、モテてる?』みたいに」

遠藤 「自分のことを好きな人の人数もわかるの?」

合田 「そこはあえて隠しています。『○人』ではなく『誰かが』というようにしてるんです。『ドキッ』を押しているのは1人だけかもしれないですし、5人いるかもしれない」

遠藤 「そこもネットビジネスの鉄則ですよね。テレビの場合はみんなが同じ時間に視聴する共感メディアなんだけど。ネットはみんながワッと盛り上がってるのではなくて、時間をずらしてポツンポツンあるいはバラバラバラと盛り上がってきて本当の意味での共時性はないですよね。

 だけど、ワーッと盛り上がったような錯覚が生じると。そのように、いろいろな形で錯覚がうまく生じているサービスは成功している。ニコニコ動画の弾幕にもそのような部分があるし、ネットオークションは自分が入札した金額ではなく自分より低かった入札金額で手に入るのでとても得した感覚になることが指摘されている」

合田 「錯覚を作ればいいってことですね。僕らがずっと意識していたのは、アプリを使った時に周りに人がいなくてもとりあえず楽しめるものをどう作るか、ということ。会員数が少なくても、アプリを開いたら楽しめるもの。アプリを開いたら5分くらいは夢中になって遊ぶもの。一発屋で終わってしまったり、登録したのを忘れられてしまったりすることがないよう、定期的にメールが来たり、プロフィールを見られたら見られた事が足あととして残るということもやってます」

遠藤 「それはすごく日本的ですね」

合田 「そうですね。さらに、マッチまで行かない人でも継続的に楽しめるしくみを考えています。交換日記や2人でやるゲームなどの要素を入たらどうかな、というように。長く使ってもらえるよう意識しています。そうした要素を使ってもらって、お互い仲良くなったら更に次のステージに入るとか」

遠藤 「交換日記いいね(笑)」

合田 「あとはソーシャルゲームについても研究しています。あえて制限をかけて、リストに入れられる上限を最初は少なめにしておき、何かを達成したら増やしていく。そうした要素も研究しているんです。従来のこの手のサービスにはないですよね」

遠藤「まさにゲーミフィケーション的なんだけど、オフラインのビジネスでは、昔からやってきたことでもあるよね。

 先日、『一見さんお断り』のふぐ料理店に連れて行かれたんだけど、『明日から半年間はお休みしますので』というんですよ。『その間どうしているんですか?』って聞いたら、その間は漁師と一緒に遊んだりしながらすごしているそうです。オフラインの世界は、学ぶべきことが多いですよ。

 それと、僕の仕事上の付き合いの人の知り合いにめちゃくちゃモテる男がいて、女の子がいっぱいいて入れ食い状態というようなすごい奴がいるのよ。女性の管理どうしてんだ?って話になったんだ。データベースどうしてんのって。確かに彼は一人ひとり覚えてらんないと、しかもそいつはアナログな男で、パソコン使ってないんだよね。で、何を使っているかというと、手帳なんだよ。それも、名前と住所・電話番号がずらっと書いてあるだけでは誰がだれだかわからない。彼の場合はひとつの値で管理しているらしいんですよ。『この子は話がおもしろい』とか数値化できない特徴が普通はあると思うんですけれども、そうじゃなくて単に5とか10とかの一元的なたった1つの数値で管理している。それ僕ショックを受けて……。ほんとにできる奴は違うなって感じだった」

合田 「実はこれランキングっていうのがありまして。ただ、既存のランキングと違うのは友達の友達の中で人気の人なんですね」

遠藤 「ランキングが出るわけ?みんなに登録されてるのはこの人だって出るの?」

合田 「そうですね。順位は公開していませんが、『人気がある』というユーザーを表示しています。自分との共通の友だちが多いと、同じジャンルの人だということがわかって親近感がでてきますよね」

遠藤 「それは、キミたちの意に反することなんじゃないか? なんてことはないか(笑)」

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