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Citrix Cloud Vision 2012 Spring基調講演レポート

“Amazon型クラウド”を推し進めるシトリックス

2012年04月20日 06時00分更新

文● 渡邊利和

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4月19日、シトリックスシステムズは東京都内で“Citrix Cloud Vision 2012 Spring”を開催した。イベント名から明らかなとおり、同社のクラウドに関するビジョンが語られた基調講演で特に印象に残ったのは、同社がクラウドの理想的な形として明示的に“アマゾン型クラウド”(Amazon-style clouds)という言葉を使うようになった点だ。

アマゾンと同じクラウド環境が作れる

 まず登壇した米シトリックスシステムズのクラウド プラットフォーム グループ グループバイズプレジデント兼ゼネラルマネージャーのサミール・ドラキア氏は、“クラウド時代”に関する同社の認識と、「どうやってアマゾン型クラウドを構築するか」というテーマで講演を行なった。

米シトリックスシステムズのクラウド プラットフォーム グループ グループバイズプレジデント兼ゼネラルマネージャー サミール・ドラキア氏

 同氏は、従来のエンタープライズコンピューティングのあり方を“PC時代”と位置づけた上で、その使われ方が「オフィス内で、企業所有のITリソースを有線で」といった形だったとし、「モバイルで、個人所有のデバイスを無線経由で」といった使い方はごく例外的なものだったとした上で、「PC時代の例外がクラウド時代の常識になる」と語った。こうした変化は個人の生産性を向上させ、企業のITコストの節減につながる上に、個人が自分に合ったワークスタイルを選択できることで個人の満足度も向上すると言う。同社では、“モバイルワークスタイル”を実現するための各種製品の開発/提供やクラウドサービスのための製品/サービスの提供などに継続的に取り組んでおり、その意味では従来からの一貫した主張である。その上で同氏は、Amazon型クラウドの構築について話を進めた。

 同氏はまず、サーバー仮想化とクラウドの違いを明確にした。同氏によれば、サーバー仮想化は「伝統的なエンタープライズアプリケーションとクライアント/サーバー型コンピューティングのために構築されたもの」であり、数百程度の規模のホストを想定し、スケールアップ型で、アプリケーションはシステムが信頼性を確保していることを前提に構築されている、という。また、運用管理者の負担は重く、1人あたり数十程度のシステムを担当するとのこと。さらに、プロプラエタリなベンダーのスタックが使われているというが、これはVMwareを意識した指摘だろう。

 一方、同氏はクラウドについて「ビッグデータや超大規模/次世代アプリケーションを念頭に置いてデザインされたもの」だとし、ホスト数は数千規模で、スケールアウト型、アプリケーションは失敗を前提に設計され、運用管理は自動化されており、オープンなソフトウェアスタックが使われる、という特徴があるという。どちらかと言えば、サーバー仮想化とクラウドの比較と言うよりは、VMwareとシトリックスの比較としてシトリックスの立場で語られたものと理解すべきだと思われる。とはいえ、サーバー仮想化が集約率向上のためにより大規模なスケールアップ型のサーバハードウェアを要求する傾向があるのは確かだし、また、従来のエンタープライズソフトウェアに比べてクラウドを前提にしたアプリケーションではハードウェア障害等の可能性をより高く見積もり、そうした障害に直面しても処理を継続できるような工夫を実装しているのも事実ではあるので、あながち的外れとは言えないだろう。

 一方で、クラウドの定義を明確化するというのであれば、さらに一歩進んで“Amazon型クラウド”とはどのようなものなのか、という点も明確に定義して欲しかったところだが、その点は特に説明されなかった点はやや残念なところだ。

 同氏はAmazonについて「非常に成功しており、事実上の標準となっている」と評価する。さらに、Amazonの成功の理由として同氏が指摘したのが“オープンソース版Xenハイパーバイザーの採用”“独自開発のオーケストレーションレイヤー”“EC2 API”の3点だ。一方、Citrixは商用版XenServerを擁し、AmazonのAPIと互換性をもつオーケストレーションソフトウェアとしてCloudStackも獲得している。つまり、シトリックスのソフトウェアスタックを使えばAmazonと同じ環境を実現できる、というわけである。

Amazonのクラウド環境のソフトウェア構成

Amazonと同様の環境をシトリックスのソフトウェアで構成するとこうなる

 同氏は最新のニュースであるCloudStackのApache Foundationへの寄贈についても簡単に紹介し、オープンソースに対する同社の一貫した協調姿勢を明確にしたが、「VMwareのスタックを使ってもAmazonと同じクラウド環境は作れないが、シトリックスの製品ならそれができる」というメッセージのほうが色濃く、オープンソースへの取り組みに関してはあまり詳細に語る時間がなかったようでもある。

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