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2012年、日本のITはどうなる? 第6回

海外からの投資が減ったのを感じた2011年

外資系製品が当たり前の日本のIT市場は変わるか?

2012年01月23日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2011年にひしひし感じたのが、グローバルから見た日本市場の地位の低下である。「世界第2位の市場」という枕詞の意味合いが薄れ、中国をはじめ、成長率著しい他のアジア諸国にフォーカスが移る。一方で、今まで存在感を示せなかった日本のIT企業にもチャンスが回ってきたように思える。

海外ベンダーの日本進出は露骨に減った

 担当は市場調査会社のアナリストでも、経済評論家でもないので、あくまで体感なのだが、ここ数年、外資系企業は日本市場に対する投資を減らしていると思う。もちろん、外資系ベンダーのマネジメントは必ず日本に投資を続けると明言するし、実際その通りというところもあろう。しかし、日本に進出するベンチャー企業の発表会は相当減ったし、日本法人に関しても、他国との合同会社として設立されることが増えた。昨今の円高により、投資対効果に見合わないと考えるベンダーも多いだろう。そもそも日本ではITの投資額自体がどんどん減っているし、持続的な成長を求める外資系ベンダーが成熟市場となった日本を見限り、成長率の高い他のアジア諸国に焦点を当てるのも、きわめて自然なことだ。

調査会社の数字でも日本のIT投資の伸びの低さは突出している

 とはいえ、外資系企業の日本法人でも、ナショナルベンダーと肩を並べる大手や長年日本に根を下ろしているベンダーはあまり問題はないだろう。確かに苦しい状況はあるかもしれないが、グローバルでカバーできる余力があれば、戦いは続けられる。また、チャネル販売に大きく依存し、パートナーへのサポートのみを提供しているような小規模なベンダーは、逆に言えばすぐに撤退できる。問題は、貸しスペースじゃないオフィスをすでに都内に構えているような中堅ベンダーである。

 こうしたベンダーにおいて、日本への投資が削減されるとどうなるか。単純に考えると、ニュースや広告が減るとか、Webサイトが更新されなくなるとか、日本語化が後回しになるとか、サポートが国外に移されることになる。成長ビジネスであればよいが、伸びが望めない市場になると、他ベンダーとのシェアの奪い合いになるので、これでは競争に負けてしまう。世知辛い話だが、グローバルでの売り上げのノルマがありつつも、コストのかかる施策に手が出せないこうしたベンダーは、今までのビジネスのやり方自体を大きく変える必要に迫られるはずだ。

 とはいえ、これは今まで存在を示せなかった国内のIT企業にとってチャンスととも捉えられるのではないだろうか? このグローバル時代でも、国内にいる限り、日本語での製品作りやサポートは重視される。導入時にお金をいただくオンプレミス型のビジネスではなく、パートナーを経由したサービス課金モデルで広く浅く儲けるビジネスがきちんと確立できれば、今まで外資ベンダーの製品が当たり前という市場に国内のIT企業も切り込むことができる。サポート切れのソフトウェアのリプレース等で、需要が見込めるのではないだろうか? 

 もちろん、新市場においても、国内IT企業は期待できる。昨年、私が取材したところだけでも、MDM(Mobile Device Management)のアイキューブドシステムズとか、SaaS型のWAF(Web Application Firewall)を手がけるセキュアスカイ・テクノロジーとか、ソフトウェアベースのネットワーク仮想化技術を持つミドクラなど、高い技術力を持つ国内ITベンチャーは数多く存在している。

投資が減らない分野はやはり「クラウド」

 一方で、成長の見込める市場では大きな投資が見られる。代表的なのはクラウドやデータセンターの分野だ。

 たとえば、2011年はAmazon Web Services(AWS)のデータセンターが上陸したし、エクイニクスやKVHなども大型データセンターを国内で立ち上げた。IBMなどもクラウドやSaaSなど、グローバル展開しているサービスを日本化して持ち込んでいる。

 特にIaaSの分野では黒船といわれるAWSの本格上陸により、「海外にデータセンターがあるから」「英語しかサポートしていないから」という導入の障壁がなくなったため、仮想マシンを従量課金するだけのサービスではもはや太刀打ちできない。一時期のISPのように、サービスや事業者の合従連衡が本格化していくだろう。

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