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最新ユーザー事例探求第16回

ASCII.jpのデータセンターは「価格」「電力」「ファシリティ」で決めました

エクイニクスの新DC「TY3」のファーストユーザーは弊社です

2011年12月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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アスキー・メディアワークスは、魔法のiらんどをはじめ、ASCII.jp、週アスPLUS、電撃オンラインなどのWebサイトを提供するデータセンター(DC)をエクイニクスの新データセンター「TY3」に統合する。エクイニクス選定までの経緯を、技術部の2人に聞いた。

新しいもの好きの血が騒ぐ?エクイニクスのTY3へ移転

 エクイニクスは米国のデータセンター事業者で、世界13カ国、38市場、99カ所のデータセンター(2011年末現在)を運用している。国内の外資系企業を中心に展開していたため、日本では知名度も低いが、グローバルでは非常に多くの実績を誇っているわけだ。

 TY3は文字通り東京で3カ所目のデータセンターにあたり、2011年6月にオープンしたばかり。地上6階建て、床面積7391㎡という専用ビルに、960キャビネットを収納できるほか、地震や停電などの備えも万全とのこと。NTT、KDDI、ソフトバンクテレコムなどの国内キャリアはもちろん、海外のキャリア、国内の主要IX(Internet Exchange)と直結できる接続性が大きな魅力だ。

エクイニクスの最新データセンター「TY3」のサーバールームキャリアとユーザーを結びつけるミートミールーム

 今回、このTY3のファーストユーザーになったのが、何を隠そうアスキー・メディアワークス(以下、AMW)だ。日本を代表するモバイルコミュニティサイト「魔法のiらんど」のほか、日本を代表するまではいかないが、PCやIT関連コンテンツサイトとして高い人気を誇る「ASCII.jp」も、すでにTY3での運用を開始している。ASCII.jpの兄弟サイト「週アスPLUS」やゲーム情報サイト「電撃オンライン(DOL)」など他のデータセンターにあるサイトも、今後はこのエクイニクスのTY3に移転する予定だ。

 では、なぜAMWはエクイニクスのデータセンターを選んだのか? 単に新しもの好きの血が騒いだだけなのか? AMW技術部部長の西村 卓也と技術部 運用管理課の木下 元哉に話を聞いてみた。

3カ所に分散していたデータセンターを集約

 もともとASCII.jpと前身のASCII24のサーバーは、大手独立系DC事業者の西新宿データセンターにあった。全部で4ラックを借りており、ASCII.jpが2ラック、ASCII24が1ラック、ASCII.jpと同じCMSを利用するDOLが1ラック使っていた。ご存じのとおり、旧サイトのASCII24はASCII.jpに完全移行したことで昨年停止され、その代わりに週アスPLUSが入った。一方、AMWと別会社であった魔法のiらんどは、大手通信事業者子会社の運営する大手町のデータセンターで12ラックを借りていたという。これに加え、別途新川のデータセンターでも一部サービスが運営されており、合計3カ所のデータセンターにサイトが分散していた。これがTY3への移転前の2011年初の状態だ。

AMW技術部部長の西村 卓也

 そして、西新宿から飯田橋へのAMWの事務所移転、そして魔法のiらんどとの合併にともない、データセンターの統合を検討し始めたという。課題として、両氏が挙げたのは、なんといっても価格。技術部 部長の西村は、「魔法のiらんどのあった大手町のデータセンターは、とにかくあり得ないくらい高かった。しかもファシリティは古いし、ラックマウントできないため、棚板に載せているサーバーがあったりして、ここじゃあ、いやだねという話になった」と話す。また、AMW系のサーバーが置かれていた西新宿のデータセンターに関しても、電源容量と空調の課題があった。「コロケーションはどこもそうなんだけど、ラックあたりの電力が足りない。空調設計に余裕がないので、ラックにサーバーを集積できない。ブレードサーバーを使っているから、スペースもずいぶん空いていた」(西村)という。

仮想化効果もあって12ラックからなんと4ラックへ!

 技術部では、新しいデータセンターへの移転を検討するため、10カ所くらい見積もりをとったという。「要件はまずは値段。交渉によって相場観がわかったところもあったので、金額面で条件を出した。次にメンテナンス作業のための交通の便利さや所有時間を重視した」(木下)と話す。その結果、数カ所が候補に挙がり、見学にも出向いたが、「魔法のiらんどとおつきあいのあったSIerのデータセンターは安かったけど、ちょっと遠かった。飯田橋のデータセンターは場所も、ファシリティもよかったんだけど、エクイニクスのほうがコストパフォーマンスが優れていた」とのことで、最終的に白羽の矢が立ったのが、エクイニクスだったという。

 エクイニクスに決めたのは、価格だけではない。やはりインターネットの相互接続点であるIXをホストしているため、ネットワーク面でリッチという理由がある。IXがあり、キャリアフリーでさまざまな事業者とつなげるエクイニクスのデータセンターは、インターネットサービスを手がける事業者にとってみれば、まさに一等地といえる。また、電力設備も魅力だった。「西新宿データセンターは正副2本合計40Aが上限だったので、冗長電源構成のサーバーでは使えるのが実質20A。これだとラックの半分くらいの機材しか使えなかった。でも先ほどの飯田橋のデータセンターやエクイニクスの最新データセンターは空調効率がよいので、60~80Aの契約が可能で、200V対応のブレードサーバーを十分収容できる」(木下)。サーバーの仮想化と集積度向上をあわせて、ラックの本数を大幅に減せると見込んだわけだ。「私も木下も、エクイニクスの名前は全然知らなかった。だけど、データセンターを見学したら、専門の建屋だったし、電力設備もよかった」(西村)とのことで、価格だけではなくファシリティ面でも納得いったようだ。

AMW技術部 運用管理課の木下 元哉

 エクイニクスの実績面での不安はないか聞くと、「アカマイやヤフーなどグローバル企業での導入事例は、信頼を勝ち取るのに十分。グローバル展開や震災対策としてのDRを見据えると、香港にも、シンガポールにも、データセンターがあるエクイニクスは頼りがいがある」と話す。エクイニクスのWebサイトも現在は英語が多く、まだまだ外資系企業向けの感は否めないが、今後は日本企業も積極的に取り込んでいく予定だという。

 結果として、AMWは2011年6月に開所したTY3のファーストユーザーになり、全部で8ラックを借りることになった。魔法のiらんどは9月に引っ越したばかりだが、「以前はほとんどがラックマウントサーバーで、のべ100台くらい使っていたが、今回は3シャーシ、ブレードサーバー10台を購入して、VMwareによって仮想化統合した。その結果、8ラックどころか、ネットワークや旧機材も含め、4ラックくらいに収まってしまった」(木下)とすさまじい集約効果を得られた。4ラックにまたがっていたASCII.jpやDOL、週アスPLUSも、同様に1ラック程度に入ってしまうと見込んでいる。

 このように、エクイニクスのデータセンター移転にあたっては、最新の電源設備やファシリティの堅牢性、充実したネットワーク環境などが大きな決め手となった。もちろん、移転自体やサーバーの集約により、年で数千万円以上のコスト削減も可能になり、ほくほく顔の技術部の2人であった。

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