アニメ業界関係者も続々登壇
東京から離れた場所での開催にも関わらず、期間中には多くの業界関係者が徳島に集まる。その機会を捉え、業界関係者の生の声が聞けるイベントが用意されているのも興味深いところだ。
筆者は、眉山山頂での「3大アニメ雑誌社勢ぞろいトークライブ」と、四国大学交流プラザでの「デジタルクリエイター養成講座」の司会を務めた。前者は、これまで実現しなかった競合誌の編集長・編集者が一同に集まった非常に珍しい機会で、ライブ会場の熱気の中、歯に衣着せぬトークが展開された。
また「デジタルクリエイター養成講座」では、テレビCMでもおなじみのカードゲーム「ヴァンガード」の発売元であるブシロードの木谷高明社長、本連載でもアニメビジネスに対して率直な意見を語った(関連記事)グッドスマイルカンパニーの安藝貴範社長を迎えて、アニメの収益化、そして海外展開をどう図っていくのかいった議論が交わされた。
その他にも、エンタテインメント業界関係者トークイベント、「魔法少女まどか☆マギカ」が21部門中12部門を獲得したアニメアワードなど、アニメビジネスにインパクトを与えるイベントが多数用意されている。先ほどの表現規制の話題とも関連するかもしれないが、東京から離れた場所ということもあってか、関係者同士の会話は弾んでいたように筆者には感じられた。
リアルとライブの価値を再確認する場に
本連載でも繰り返し述べているように、映像そのものの商品としての価値は、デジタル化、ネットワーク化を受けて、音楽など他のコンテンツ領域同様その評価が難しい局面を迎えている。それに対して、コピー不可能な体験、つまりライブであったり、リアルであることが相対的に価値を高めていることを、マチ★アソビを通じて再認識することができた。
ユーフォーテーブル、ニトロプラス、グッドスマイルカンパニー、ブシロードなど、新興アニメ関連企業がその存在感を示しつつ、伝統的なアニメ作品をリスペクトと共に振り返る場にもなっていたことも興味深い点だ。
平均すると約3カ月おきと、かなり短いタームで開催が続いてきたマチ★アソビだが、Fate Zeroの制作が佳境に入ったこともあって、さすがに次回は半年程度先、ということになりそうだ。
今後どういう広がりを見せるか、単にアニメイベントという枠組みを超え、地域振興、アニメビジネスの転換の実験場としても注目しておきたいと思う。
BSフジのマチ★アソビ特番に筆者出演
今回のマチ★アソビ Vol.7に密着取材した特番「徳島から世界へ~コンテンツ産業の未来 マチ★アソビ byジャパコンTV」に筆者のまつもとあつしが出演。コメントの他、セミナー「エンタテインメントの未来」の模様についても放送予定。
著者紹介:まつもとあつし
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ネットコミュニティーやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、コンテンツのプロデュース活動を行なっている。DCM修士。『スマートデバイスが生む商機 見えてきたiPhone/iPad/Android時代のビジネスアプローチ』(インプレスジャパン)、『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)も好評発売中。Twitterアヵウントは@a_matsumoto
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