みんなが想像している世界を作っていく
―― 次は「高速追従性」です。あれはこれまでとどこが違うんでしょう?
福地 先ほども話したように、マーカーレス方式のARもいろいろな種類が出てきています。認識が速い、リアルタイム性が高いものが出てきているのは確かです。詳細は述べられないんですが、その中でウチなりの技術を作ったということです。できるだけ早いタイミングで学会に出したいなと思ってますけど。
―― 振っても、揺らしても、なかなか消えないというのに相当びっくりしたんですよ。スマートフォンの処理能力もかなり重要になってくるんじゃないですか?
福地 最近のスマホはかなり速くなっていることも確かなので、だいぶラクですね。
―― 今後Tegraも100倍近くまで高速化すると言われてますが、そのときどんな未来が待っているのかなというのが気になります。映画のようにズラッとCGが出てくるインターフェースがあったと思うんですが、あれはどんな発想で作られているんですか?
福地 ARの未来はたぶん「みんなが想像している世界」なんですよ。「(ボタンのように、空間の)どこかを押すと何かが出てくる」みたいな。処理速度が何倍となったときは、もうその世界になっていると思うんですけど、その未来に対してどんなステップを踏むかというのはみんな少しずつ違ってると思うんです。今あるものでどういう世界を作れるのかを考えているところですね。
―― もう「Xperia arc」なんかのスマホには、アプリとして近々乗せられるようになっているんですか?
福地 話は動いています。これで本当にお客さんが喜んでくれるのか、毎日使ってくれるのか、というところに対してはまだ疑問が残ってますが。ただのアプリで数回楽しんで終わり、というわけにはいかないので……。
―― たとえば中吊り広告とかあるじゃないですか。それをピッと撮影すると中身が読めるとか。すると記事がダウンロードされてきてペラペラ見られるとか。最初は広告から入るんでしょうか?
福地 皆さんも想像されているとおりのものをぼくたちも考えてはいるけど、それが本当にできるのかというのは、一介のエンジニアとしてはまだ分からないという段階です。
芦ヶ原 それをやるにしてもやはり、電車の中でケータイをかざしてもヘンな人に見えないようにするのが、まず一番の課題じゃないかなと思っています。
―― なるほど。以前KDDIさんを取材したときも、やっぱり(何もないところに)「かざす」ところに苦心していました。人の顔を撮ってマーカーを出すのはまずい、それなら手のひらだと。そこから先にどんなイメージがあるんだろうと。空間全体を認識すると考えたとき、今回の震災の被災地のことが思い浮かんだんですね。ARで復興後の街並みを再現できたらすごいんじゃないかと。
福地 そうですね。あのデモ自体にそういう印象を持ってくれるのは、企画したほうから言うとうれしいなと思います。企画の担当者は「再生してほしい」というメッセージがあったということを聞いています。
芦ヶ原 技術的にはいろんなセンサーの情報を使ってやることになると思います。すべての情報を合わせて実現するようなものになるとは思います。
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