昨年、各社から発表されたAR(拡張現実感:Augumented Reality)技術。今年に入ってから派手な発表がないため、やや停滞感があるのは否めないが、着実に進化をとげている。29日にソニーがメディア向けに開催した「SmartAR体験会」では、今後登場するAR技術を使った製品の紹介が行なわれた。
SmartARを利用した
沖縄美ら海水族館のアプリも登場
ソニーが進めている統合型AR「SmartAR」は、ポスターやパッケージなどの物体をARの起動対象として利用できる「マーカーレス方式」を採用している。独自の機能として、スマートフォンやゲーム端末で撮影している空間の構造物を自動認識し、それに合わせてごく自然にオブジェクトを歩かせたりすることも可能なため、非常に応用範囲が広いのが特徴だ。
SmartARを利用した製品としては、2012年にアニメ「ギルティクラウン」の主題歌CDパッケージを利用したARアプリが登場したほか、セガから発売されている「初音ミク -Project DIVA- f」のAR機能、乃木坂46の販促イベントなどにも利用されている。2011年のSmartARの発表以降、着実にその応用範囲を広めている。
もしSmartARを体験してみたいというのなら、1日からGoogle Play Storeで公開が開始された「美ら海ARカメラ」(無料)を使ってみるのもいいだろう。沖縄美ら海水族館のジンベイザメ「ジンタ」の大きさを体験できるARアプリケーションで、水族館で配布されているポストカードを撮影することにより、目の前にジンタがいるとどのくらいの大きさなのかを実体験できる(起動用のマーカーは10周年記念サイトからもダウンロード可能 )。
また今冬にはSmartARを利用したゲームも登場する。ソニー・コンピュータエンターテインメントから発売されるPS Vita対応ゲーム「箱! -OPEN ME-」は、PS Vitaの背面カメラを利用するARゲームだ。同梱されているマーカーを撮影するとARの箱が表示される。いろいろな罠が仕掛けられているのを回避しながら開封していくというコンセプトの製品で、他のPS VitaとWi-Fiで接続可能となっており、協力プレイでの攻略もできるように工夫されている。
TSUTAYAでもSmartARが利用可能に!
このようにコンシューマ向けではSmartARを使った製品が登場しているが、今後B2B向けのサービスとしても使用範囲を広げていきたいとしている。直近では11月からTSUTAYAで開始される予定の「TSUTAYA AR」がそれに当たるという。これはTSUTAYAの店頭にあるDVDやBDのパッケージ、キャンペーンポスターなどを撮影すると予告動画が流れるというもので、そのほかにも在庫状況やプレゼント情報への誘導、関連商品の情報などを表示できるとのこと。サービスが本格稼働すればヒット作以外へのユーザーの興味も喚起できるため、商品の回転率を挙げることにも貢献できそうだ。
SmartARが広がれば、例えば電車の中吊りを撮影するだけで電子書籍が購入できるようになるなど、広告が直接商品購入の窓口になる可能性も秘めている。まだ走り出したばかりの技術であるが、今後どのような展開があるのか、注視しておくべきであろう。