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ソニーのSmartARから見るARの進化具合

2012年11月01日 12時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 昨年、各社から発表されたAR(拡張現実感:Augumented Reality)技術。今年に入ってから派手な発表がないため、やや停滞感があるのは否めないが、着実に進化をとげている。29日にソニーがメディア向けに開催した「SmartAR体験会」では、今後登場するAR技術を使った製品の紹介が行なわれた。

SmartARを利用した
沖縄美ら海水族館のアプリも登場

 ソニーが進めている統合型AR「SmartAR」は、ポスターやパッケージなどの物体をARの起動対象として利用できる「マーカーレス方式」を採用している。独自の機能として、スマートフォンやゲーム端末で撮影している空間の構造物を自動認識し、それに合わせてごく自然にオブジェクトを歩かせたりすることも可能なため、非常に応用範囲が広いのが特徴だ。

SmartARはマーカーレスでARを起動できるのが特徴。写真やパッケージなどを利用できる

撮影している空間を認識して、それに合わせてオブジェクトを動作させることができる。緑色の丸い点がカメラ側が自動判別した場所で、これを追うことによりカメラがどの方向を向いているのかを識別し、オブジェクトの描画に反映させている

段差があるとそれを自動認識し、オブジェクトもその段差を登っているように表示可能だ。60fpsで映像を計算し続けるため、ユーザーが多少早い動きをしても追従して動作するという

 SmartARを利用した製品としては、2012年にアニメ「ギルティクラウン」の主題歌CDパッケージを利用したARアプリが登場したほか、セガから発売されている「初音ミク -Project DIVA- f」のAR機能、乃木坂46の販促イベントなどにも利用されている。2011年のSmartARの発表以降、着実にその応用範囲を広めている。

 

 もしSmartARを体験してみたいというのなら、1日からGoogle Play Storeで公開が開始された「美ら海ARカメラ」(無料)を使ってみるのもいいだろう。沖縄美ら海水族館のジンベイザメ「ジンタ」の大きさを体験できるARアプリケーションで、水族館で配布されているポストカードを撮影することにより、目の前にジンタがいるとどのくらいの大きさなのかを実体験できる(起動用のマーカーは10周年記念サイトからもダウンロード可能 )。

写真は「初音ミク -Project DIVA- f」のもの。起動させると音楽に合わせて初音ミクが踊り出す。話題になった機能だ

「美ら海ARカメラ」をインストールし、水族館で配布されているポストカードを撮影すると、このようにジンベイザメのジンタが表示される。大きさを変更可能なので、小さなジンタも表示可能だ

左は8.5mの体長がどの程度かを表示したもの。右は小さく表示し、おもしろ写真を撮影したもの。ARを使えば、いろいろなifを楽しめる

 また今冬にはSmartARを利用したゲームも登場する。ソニー・コンピュータエンターテインメントから発売されるPS Vita対応ゲーム「箱! -OPEN ME-」は、PS Vitaの背面カメラを利用するARゲームだ。同梱されているマーカーを撮影するとARの箱が表示される。いろいろな罠が仕掛けられているのを回避しながら開封していくというコンセプトの製品で、他のPS VitaとWi-Fiで接続可能となっており、協力プレイでの攻略もできるように工夫されている。

今冬に登場予定のPS Vita用ソフト「箱! -OPEN ME-」。現在デモ版が配布されている

今回のデモではエアホッケーのAR版も披露された。端から見ていると男性2人が揺れているだけのようだが、PS Vitaの画面には右の写真のような画面が表示されている。パケットを打ち返すマレットを動かすには自らが左右に動く必要がある

TSUTAYAでもSmartARが利用可能に!

 このようにコンシューマ向けではSmartARを使った製品が登場しているが、今後B2B向けのサービスとしても使用範囲を広げていきたいとしている。直近では11月からTSUTAYAで開始される予定の「TSUTAYA AR」がそれに当たるという。これはTSUTAYAの店頭にあるDVDやBDのパッケージ、キャンペーンポスターなどを撮影すると予告動画が流れるというもので、そのほかにも在庫状況やプレゼント情報への誘導、関連商品の情報などを表示できるとのこと。サービスが本格稼働すればヒット作以外へのユーザーの興味も喚起できるため、商品の回転率を挙げることにも貢献できそうだ。

SmartARのB2Bへの取り組みもすでに始まっている。11月にはTSUTAYAで「TSUTAYA AR」というサービスが開始する予定だ

 SmartARが広がれば、例えば電車の中吊りを撮影するだけで電子書籍が購入できるようになるなど、広告が直接商品購入の窓口になる可能性も秘めている。まだ走り出したばかりの技術であるが、今後どのような展開があるのか、注視しておくべきであろう。

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