小さなメディアの収益は言語人口で決まる
―― この連載ではコンテンツの変化だけでなく、メディアの変化も追いかけています。数土さんにとってアニメ!アニメ!とはどんな存在なのでしょうか?
数土 「アニメ!アニメ!を始めた2004年頃、アニメはとても華々しかったんです(笑)。まさに『クールジャパン』という言葉が多くの人の心を捉えた時期でもありました。
失われた10年、ダメだダメだと言われる業種が多いなか、コンテンツ産業、そのなかでもアニメはひときわ輝いていましたね」
―― なるほど。ただ、クールジャパンの範疇にあるジャンルとしては、当時からアニメよりゲームのほうが業界規模や影響力は大きかったはずです。あえてアニメを選択したのはなぜですか?
数土 「もうそれは単純にわたしはゲームが苦手だったので……(笑)。そして、当時アニメを専門的に取り上げているウェブメディアはほとんどありませんでした。それにネットであれば恐ろしく低いコストでスタートすることもできましたしね」
―― アニメ雑誌は各社から沢山発行されていますが、それらとの競合は意識しなかった?
数土 「それはまったく。アニメ雑誌とアニメのウェブニュースサイトは競合しないという確信がありました。アニメ雑誌の多くは設定資料や描き下ろしのイラストなどビジュアルで魅せるものが中心ですし、その価値でこれからも生き残っていくと考えています。
一方でウェブはビジュアルで構成しても仕方がありません。なぜなら公式サイトにいけば多くの素材はすでに存在しているからです。アニメをビジネスから見ていくニュースサイトであれば独自性も出せると確信していました」
―― ずばり、アニメ!アニメ!はビジネスとして順調ですか?
数土 「正直、小さなメディアはビジネスとしては成り立ちにくいです。海外、たとえば北米であればGoogle AdSenseからの収入だけで続けられるのですが。そもそもネット人口が違い過ぎます。英語圏をターゲットにすれば広告のキーワード単価が数倍になるので。
同規模のサイトでも、北米では成立するのに日本では成り立たない理由は、この言語人口の違いが一番大きいです」
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