初出時、掲載した内容に誤記が多数見つかりましたので、記事タイトル自体も修正し、全面的に書き直した原稿を掲出します。なお、書き直し前の原稿は次ページに掲載しております。読者のみなさまには大変ご迷惑をおかけいたしました。お詫びさせていただきます。(2011年2月22日)
2011年、マイクロソフトと日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)が本社を移転する。都内の方しかピンと来ないコラムで申し訳ないが、今回はそんなIT企業のロケーションについてお話ししたい。
移転で腰を据える2つの大手IT企業
日本マイクロソフトが本社移転を発表したのは昨年の3月で、新オフィスは品川駅東口の品川グランドセントラルタワーになる。従来同社は新宿駅南口に近い小田急サザンタワーにある本社(住所は渋谷区代々木)のほか、都内に7箇所に拠点を展開していた。アスキー・メディアワークスの社屋がある西新宿では、マイクロソフトの各拠点を結ぶシャトルバスが行き交うのを見ることができたが、異なるオフィス同士の往来が多いと確かに不便そうだ。今回の移転では、そのうち新宿本社、代田橋、赤坂、初台、霞ヶ関などの5カ所を統合し、約2500名の社員が同じオフィスで勤務することになるという。
一方、市ヶ谷駅近くに本社を置くHPが引っ越しを発表したのは、2010年の5月。移転先は江東区大島で、1フロアとしては都内最大級の新社屋に移転作業を開始している。かつてHPは杉並区高井戸にオフィスをかまえていたが、コンパックの買収とともに品川区の天王洲に本社を移転。2006年に現在の市ヶ谷(住所は千代田区五番町)に本社を移している。今回は旧DECの荻窪事業所を筆頭に、都内に分散していた拠点を統合するのが目的。最初に聞いたときはIT企業の少ない江東区大島への移転は唐突に思えたが、振り返ればデルも目黒区五反田から神奈川の川崎市に移転したわけで、郊外(?)移転の前例がない訳ではない。
両社とも移転の目的は都内に分散した拠点の統合、それにともなう生産性の向上やコミュニケーションの促進にあるが、日本企業として腰を据えるという意味合いも大きい気がする。マイクロソフトは移転とともに会社名自体も変えてしまったし、HPは多少都心から離れても自社ビルにこだわった。外資系企業である両社が、移転と共にどこまで日本に根を張ることができるのか? 注目される。
京浜東北線沿いに集まるナショナル系企業
さて、この結果、中央区や品川区など京浜東北線沿いは、かなりIT企業が密集することになった。もともとこのあたりは、国内大手メーカーの本社や東京支社が多いところだが、ここに日本マイクロソフトが加わったことで、ますますIT密度が上がったといえよう。日本マイクロソフトが本社を置く品川の近くには、ソニー(品川)やNEC(田町)、東芝(浜松町)、富士通、パナソニック、キヤノンMJ、ソフトバンク(新橋・汐留)、NTTコミュニケーションズ(内幸町)、日立製作所、三菱電機、インテル(大手町)などの企業の本社や東京拠点が目白押し。蒲田の富士通ソリューションセンター、デルや東芝が移転を予定している川崎も電車で30分圏内。日本マイクロソフトは、まさに取引先の最寄りに本社を移したことがわかる。
こうした京浜東北線ナショナルITコミュニティと拮抗する勢力が、港区を本拠地とする港区外資集団であろう(だんだん、カノッサの屈辱のようになってきた……)。六本木・虎ノ門・赤坂・青山などは、シスコ、グーグル、ヤフー、日本サムスン(六本木)、シマンテック、アバイア(溜池山王)、シトリックス、ネットアップ(虎ノ門)、オラクル(青山)など、そうそうたる外資系IT企業が軒を連ねる。
一方で、かつてIT企業だらけだった新宿はかなり寂しい状態になった。現在も新宿に本社を構えるIT企業といえば、CA、ジュニパーネットワークス、チェック・ポイントくらいであろうか?(忘れていたところがあったら、ごめんなさい)。都庁の建設時は、東京の中心は新宿に移った感さえ受けたが、時代は変わったか、また戻ったかということだろう。
アスキー・メディアワークスも西新宿に本社があるため、日本マイクロソフトもHPもずいぶん遠くなってしまう。そういえば、発表会や取材のために、新宿から「逆側」に遠征することが目に見えて増えている。港区白金の日経BP、大手町のITmedia・@IT、市ヶ谷のインプレスなど、他のIT媒体の方々がますますうらやましくなる昨今である。
(次ページ、旧「さよならMS&HP!新宿から去るIT企業たち」)
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