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フルポートフォリオでシェア拡大を目指す

HPは日本のネットワーク機器市場で勝てるのか?

2011年02月14日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2月10日、日本ヒューレット・パッカードはネットワーク事業についての説明会を行なった。2009年に買収した旧スリーコム、そしてスリーコム傘下のH3Cの製品を統合し、サーバー、ストレージとともにインフラを強化する。

ベストオブブリード時代にフルポートフォリオの強み

 冒頭、日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)代表取締役 社長執行役員 小出伸一氏は、エンタープライズ事業について概観した。サーバーやストレージ、サービス、ソフトウェア、プリンタ、そしてネットワークの分野でのグローバルマーケットシェアを示したIDGの調査を元に、「すべての分野でナンバー1か、ナンバー2になっている。フルポートフォリオでお客様に提供できる世界でも珍しいプレイヤーである」とHPの事業全体について説明した。この背景は顧客のニーズに応じたM&Aがあるという。

日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員 小出伸一氏

 こうしたHPが最近打ち出しているメッセージは、ビジネスが迅速に変化する「INSTANT-ON ENTERPRISE」という企業像、そしてこれを実現するソリューション群。そして、このソリューションの1つが「Converged Infrastracture」を支えるネットワークになる。「スリーコムの買収により、スイッチやルータ、管理ツール、セキュリティ製品などもすべて提供できるようになった」ということで、今まではHP ProCurveで提供してきた限られた領域だけではなく、幅広いラインナップになったという。

執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 兼 HPネットワーク事業本部 事業本部長 杉原博茂氏

 続いて執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 兼 HPネットワーク事業本部 事業本部長 杉原博茂氏は、「昔はサーバーなり、ストレージなり、ネットワークなり、最適なものを組み合わせるベストオブブリードがもてはやされたが、今は単一のベンダーですべてのフルポートフォリオを提供できる点が大きい」と小出氏と同じくフルポートフォリオのメリットを訴求。製品のラインナップの拡充だけではなく、サーバーだけではなく、ネットワークの分野にも詳しいエンジニアを育成し、ビジネスのニーズにあった理想的なクラウド、IT基盤を提供できるようにしていくという。

具体的な差別化や方向性が見えない

エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPネットワーク事業本部 HPネットワーク事業本部 エンタープライズ営業本部 兼 パートナー営業本部 本部長 久保田則夫氏

 後半はエンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 HPネットワーク事業本部 HPネットワーク事業本部 エンタープライズ営業本部 兼 パートナー営業本部 本部長 久保田則夫氏が、HPのネットワーク事業について説明した。まず同氏はネットワーク市場の現状について、40G/100Gbpsなどの高速・大容量化の進展、ボックス型スイッチの高機能化、そしてスマートフォンの台頭など3つのトレンドを挙げた。特にスマートフォン等の普及がインフラに与える影響は大きく、「過去30年を見てみると、やはり端末が変わるたびに、ネットワークが大きく変わってきた」(久保田氏)という。

最新のネットワークのトレンド

エッジからデータセンターまで幅広い製品ラインナップ

 こうしたなかHPのネットワーク事業は、従来のHP ProCurveブランドではエッジスイッチと管理製品しかなかったが、H3C・ティッピング・ポイントとあわせ、コアからエッジに至るまで幅広い製品を提供できるようになったという。久保田氏は「HPとスリーコムとあわせ、20%近いマーケットシェアを確保し、圧倒的な2位となっている。ただ、日本では3位の位置になっており、いかに早く2位になるかが大きな課題」と語る。これを実現するための差別化ポイントとしては、簡潔性、耐障害性、そして高いパフォーマンスの3つが挙げられた。「VLANやサブネット、VRRPなどが減り、複雑性が圧倒的に緩和される」(久保田氏)ということで、シンプルなネットワーク構築や管理が実現するという。

 ただ、旧H3C製品の持つ先進的なスタック技術や100GbE製品のロードマップ、エンタープライズ以外の通信事業者やSMB市場向けの市場展開、HPバーチャルコネクトなどのサーバー技術との連携、IPSのみのTippingPoint製品の立ち位置、そしてシェア1位のシスコとの対抗策などの具体的な言及はなかった。発表会の多くの時間が、現状分析とエンタープライズ事業の戦略説明に費やされた感もあり、今後の方向性が見えない発表会であった。

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