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TECH担当者のIT業界物見遊山 第35回

●●マーケティングと名乗る会社はビッグデータをぜひ

今のところビッグデータはマーケティング担当者のもの

2013年03月05日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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昨年5月にやった特集を引きづり、今もビッグデータの姿を追い続けている。夏にはNRI鈴木さんのインタビュー、秋口には博報堂プロダクツの大木さんの記事、そして、年末はリクルートテクノロジーズの西郷さんの講演レポート。こうして取材していくと、実はどんどんTECHのフィールドから遠のいていく。



「CMOが使う額が……」発言の意図とは?

 オオタニは対外的にASCII.jpの「TECH」カテゴリは、「インフラを中心にしたニュースサイト」と説明している。実際、サブカテゴリとしても、サーバー・ストレージ、ネットワーク、セキュリティ、データセンターなどを用意しているが、最近このカテゴリに入りにくいネタが増えている。典型的なのが、いわゆる「ビッグデータ」だ。

 ビッグデータは、ハードウェアからソフトウェア、データセンター、クラウドまで含めた総合芸術的なところがある。たとえば、Hadoopの分散処理の話や、オブジェクトストレージの話であれば、TECHに入れて問題ないのだろうが、テキストマイニングや統計学の話になると、ちょっと範囲外になる(というか、やや手に負えなくなる……)。そして本質的に重要なのが、データの中身だ。SNSの活用やリコメンデーションエンジンの話になると、営業やマーケティングの領域になってくる。中でも、特集でも取り上げたJR東日本ウォータービジネスだったり、クックパッドなどの一般企業のデータ解析事例などは面白い。「ビッグデータはビジネスにどんなインパクトを与えるのか?」 そんな話を追っていくと、ビッグデータはすでにTECHの領域から外れてしまうわけだ。

 ビッグデータはAmazonのレコメンデーションエンジンのようなコマース向け施策、TwitterやFacebookなどからの評価を収集するSNS活用形、センサーデータを用いることで資源の効率化を目指す社会インフラ系など、さまざまな活用例が見られる。では、誰が利用するのか? いろんな人に話を聞くと、ビッグデータのユーザーとして一番しっくりするのは、やはりマーケティングの担当者だ。営業のように直接顧客やパートナーと会うわけでもなく、広報のように対応相手が決まっているわけではない。さまざまな部署を横断し、外部の会社とつきあって、データを集め、商品の販売に結びつけていくマーケティングの部隊こそ、ビッグデータの価値を活かせる部門に思える。これがまさにセールスフォースCEOの「CIOよりも、CMOが使う額のほうが多くなる時代がやってくる」発言の背景だろう。

ビッグでなくても、データ活用は飯のタネになる

 私はマーケティングについてはまったく素人だが、潜在顧客を掘り起こし、仮説を立て、販売施策や商品企画を検証していくのにおいて、ビッグデータは強力なソリューションとなるはず。今後、解析が低コストが実現され、効果的なデータ分析のパターンが生まれてくれば、シュリンクしていく国内IT市場でビジネスの打率を上げる施策として認知されることになる。まあ、実際は部署間をまたいだ社内データ共有だけで、けっこう大変なはずなので、一朝一夕というわけにはいかないと思うのだが……。

 今後、こうしたCMOをターゲットに、さまざまなところがビッグデータのビジネスに関わってくることになる。ITに長けたSIerやコンサルティングだけではなく、広告代理店や調査会社、その他、●●マーケティングのような名前がついている会社は、顧客のニーズにあったビッグデータ施策を求められていくはずだ。IT業界のバズワードとしてのビッグデータは喧伝されることも多いが、新しい価値を生み出すビジネスにつながる可能性を持っている。市場の拡大とデフレ化を諸刃の剣として持つクラウドに比べて、今までIT業界が手を付けなかった最後のフロンティアといえる。

 先日は「ベテランだらけになってきたIT業界に対する一抹の不安」と題して、業界の先行きを憂えたが、これからのIT業界に足を踏み出す若い人たちには、今まで不毛の地だったデータ分野にチャレンジしてもらいたい。確かに一流のデータサイエンティストへの道のりは遠いが、顧客データからどのような価値が創出できるのか? どのようにシステムとマッチングさせればよいのか? などは、柔軟な考え方がないと難しい。今後、IT業界もビッグデータを、飯のタネとしてうまく活用していくよう、盛り上げていくべきだろう。

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