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TECH担当者のIT業界物見遊山 第29回

EMCとネットアップの業績が国内でも好調な理由

サーバーベンダーがストレージベンダーに勝てない理由

2012年06月21日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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事業説明会を聞く限り、ネットアップのビジネスは絶好調のようだ。同じストレージベンダー(といえるか、すでに微妙ですが)のEMCも昨年度の業績は好調だったとのこと。ライバルとなる両者が日本市場でもビジネスを拡大しているとのことなので、未開拓顧客を取り込んでいるか、サーバーベンダーの市場を確実に食っているということだろう。

有力パートナーの富士通とNEC

 両者のアプローチはまったく異なる。EMCは「One Size Fits Allはない」(EMC 会長兼CEO ジョー・トゥッチ氏)ということで、ハイエンド、ミッドレンジ、スケールアウトNAS、オブジェクトストレージなど、多彩な製品群を展開。一方で、ネットアップはData ONTAPという単一ソフトウェアで、すべての領域をカバーする「One Size Fits All」という戦略を持つ。昨日の説明会で出たクラスターモードや将来的な成長計画を見ると、ビッグデータまでData ONTAPでカバーする勢い。昨年投入したEシリーズの出番はないのでは?と思ってしまう。

 両者が国内で好調な理由の1つは、ストレージ市場ではグローバルでもナショナルベンダーと直接競合にならないという背景がある。ご存じの通り、NECは4年連続でEMCのトップリセーラーだし、ネットアップにとっての富士通も同じ存在(ネットアップは富士通のDistinguished Partner Awardを受賞している)。つまり、ストレージ分野でのEMC vs. ネットアップは、NECと富士通の代理戦争的な様相があるのだ。唯一、ストレージ市場にはグローバルでも高いシェアを誇る日立製作所がいるが、その存在感はまだまだハイエンドストレージの分野にとどまる。

サーバーベンダーが競合にならない

 もう1つの理由は、サーバベンダーがストレージ分野でも強いわけではないという点だ。2000年以降、サーバーのコモディティ化に直面したHPやデルなどのベンダーは、ストレージ事業の大幅なてこ入れを進めた。この過程で、デルは提携していたEMCへの依存度を下げ、3PARやイコールロジック、レフトハンドなどのベンダーが次々と買収されたのはご存じの通りだ。普通に考えれば、ストレージと同様のハードウェアを採用するサーバー製品を抱えているベンダーの方が、量産のスケールメリットが活かせそうな気がするが、現状はそうでもないようだ。そもそもストレージ事業の規模が対外的に公開されないため、好調かどうかもよくわからないのだが。

 サーバーベンダーのネックは、サーバーとストレージが社内競合しつつある点だ。いろいろ付加価値を付けているが、ストレージも究極的にはデータの保管場所だ。最近のサーバーは大容量のディスクを内蔵できるようになりつつあるため、外付けストレージを無理して売らなくともよい状況が醸成されつつあるのではないか。サーバーベンダーはストレージ単体でのビジネスではなく、おそらく「サーバーと一緒にストレージもいかがですか?」事例の方が圧倒的に多い。この過程で、サーバーとストレージが社内競合してしまうのである。

 Windows Server 2012ではますますストレージ管理機能が強化されることになり、両者の境目はなくなりつつある。NECやHPがサーバーとストレージのハードウェアを共通プラットフォームに移項しようとしているのもこうした背景がある。

 とはいえ、ストレージベンダーにも課題はある。これに関しては、また改めて論じていこう。

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