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TECH担当者のIT業界物見遊山 ― 第34回

プレス向け懇親会で感じた業界の縮図とは?

ベテランだらけになってきたIT業界に対する一抹の不安

2013年02月22日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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Windows 95が日本で発売され、インターネットが大ブームになって以来、そろそろ20年近い年月が経とうとしている。ブロードバンドブームや長い不景気を経て、日本のIT業界の人口ピラミッドは果たしてどうなっているのか。最近、プレス向け懇親会に参加して、やや気になってきた。


プレス向け懇親会で感じた違和感

 新年であり、年度末のこの時期、IT系業界ではプレス向けの懇親会が相次ぐ。久しぶりに会っていない方と話せることもあり、私も時間がある限り、参加するようにしている。しかし、最近ある違和感を感じるようになってきた。全体的に参加者がベテランだらけになっている気がするのである。

 通常、プレス向けのイベントの場合、概して“偉い人”が話すので、確かに年齢が上になる傾向がある。しかし、何年にも渡って業界にいると、その年齢が少しずつ上になってきていることが肌で感じられる。

 これが何を意味するのか? 1つは新しい世代がIT業界に入ってきていないのではないかという懸念だ。ベテランは給料に見合った高いパフォーマンスを求められるし、特に外資系IT企業の日本法人は、大きなビジネスを数人で回していることが多い。しかし、40歳の私より明らかに年下の方が発表会で登壇することは、全体から見て少ない。新しい世代がどんどん入ってこないと、業界は活性化しないだろう。

 さらに言えば、参加する記者やアナリスト側も、若手が少なくなっている状態。気がつけば私もIT系雑誌時代から含め、10年強のキャリアを積み、記事を書き続けている。

 先日、おつきあいのあるジャーナリストの方から、若手向けの勉強会をやりたいと相談を持ちかけられたが、若手のライターや編集者が周りにいないことに気がついた。特にエンタープライズの業界や製品は、コンシューマ市場に比べやや独特なので、果たして新規で入ってくる方が少ない気がする。ASCII.jpでも現在人材募集をしているが、将来を見据えれば、こうした施策はやはり必要なのだ。

薄利多売のクラウドビジネスへの覚悟はあるか?

 もう1つはベテランだらけになってきたIT業界が、薄利多売で、水平分業的なクラウドのビジネスに対応できるか?という不安だ。誤解を避けたいのだが、“年齢が高いから、ベテランだから”新しい時代の流れに対応できないと言っているわけではない。ただし、今までと同じIT業界でありながら、ものすごく異なる構造へとシフトしていくのはほぼ間違いない。そして、このシフトは大きく、しかも急激である。

 先日のインタビューでサイボウズの青野社長が言っていたように、これから業界は「100万円かかっていた業務システムが月額5000円から使える」という世界にいやおうなく放り込まれる。こうしたシフトの中で、ITベンダーのベテランたちが、月額5000円のアプリケーションを売ってもらうために、パートナーに頭を下げられるか? 取引のない会社とコラボレーションできるか? 次のビジネスのために無償ビジネスをやり続ける意義を見いだせるか? という不安が私の中にはある。

 先日、次世代ICT会議で聞いた講演の中で、「運輸業自体は昔からあるが、運送手段は飛脚から鉄道や自動車へと変革した時期があった」という話が出てきた。また、先日まで読んでいた百田尚樹さんの「海賊とよばれた男」の中にも、エネルギー需要が石炭から石油に大きくシフトしていく時代のビジネスマインドが細かく描かれていた。

 こうした事象を「ゲームチェンジ」というか、「イノベーション」というかは果たして私にはわからないが、お金の稼ぎ方、コミュニケーションの目的、そしてワークスタイル自体が大きく変わっていくことは間違いない。

 確かに、私が見ているのはIT業界のほんのひとにぎりの人たちだ。「うちの会社はどんどん新人が入って活気づいているよ」とか、「レガシービジネスだけではなく、クラウドに邁進していますよ」というコメントがあれば、頼もしいのだが、果たしてどうだろうか? 実際、「海賊とよばれた男」の主人公である国岡鐵造は60を超えても、アグレッシブに変化に対応し続けた。

 ちなみにこうしたチェンジは、出版・メディア業界も同じ。むしろIT業界より厳しいとさえ思う。自戒しつつ、チェンジへの身構えをしておきたい。

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