音楽の所有感のあり方が変わってきている
―― ナップスターが提供していたのは今で言うクラウド型のサービスですよね。最近スポティファイ※が対米向けのビジネスモデルを発表したけど、あれはナップスターと同じですよね。
※ Spotify : スウェーデン発のP2P型ストリーミングサービス。対米進出に当たり、レーベル各社は定額課金を求めていると言われる。これにはナップスターの創業者であるショーン・パーカーが関わっているとされている(NYPost)
竹中 同じですね。ただ、販売のところは別の音楽ダウンロードサービスと連携している。そうすると受け入れられやすいんですね。同様に、もしスポティファイがサブスクリプションのストリーミングサービスを日本国内で展開できて、そこから先は各配信サイトにつながる仕組みなら、(OTOTOYのようなサービスとも)いい補完関係になると思いますよ。
―― それでrecommuniからOTOTOYになった。このサービスはクラウドではなくダウンロード型ですけど、やっぱり竹中さん的には「所有感」は重要ですか。
竹中 所有感は大事です。ただ、それも10年くらいかけて少しづつ、そのあり方が変わってきていると思います。最終的には自分と音楽を生み出すミュージシャンとの関係になるんですね。そこにいかに自分が貢献できているか、ストーリーを共有したかという錯覚、リアリティを得られるかだと思うんですよ。
―― 共時体験の「記念」として音楽を買う感じですよね。Twitterで好きなアーティストをフォローして、Ustreamでレコーディングの実況を見て、そのままAmazonでCDを買うような。
竹中 消費のスタイルとして今までにないもので興味深いですよね。何かを共有する、共感するということが、ネットを介してできるようになったのも。人はモノではなく、自分の行為に対してお金を出すんですね。その時、すぐにダウンロードで買えるというころが重要で。それで所有感に似たものが生まれるというのが、経験上なんとなく分かってきたので。そこをきちんと作ることが大事なんじゃないかと思っています。
―― それはデザインできるものですか?
竹中 先読みしてデザインできているかどうかはまだ分かりませんが、そういうOTOTOYの試みのひとつとして、高品質の音源があります。とりあえずモノとしてCDは買ってしまうかもしれないけど、HDDに入っている高音質ファイルを何年後かに思い出せたら、CDの所有感と変わらないじゃないかと。僕のような体験をする人たちが何十万人も出てくるということを信じてやっているんです。
―― 僕もOTOTOYでDSD音源を買いますけど、DSDプレーヤーを持っていないので、まさにそういう状態ですね。DSDがらみでプロモーションすればいいのに。
竹中 そうですね。まだ言えませんけど、「3月中旬を楽しみにしていてください」くらいは書いてもらってもいいかな。デザインのことを別の面から言えば、今音楽にお金を使いたくないと言ってる人たちは、そのような体験に価値があることが分かると、アップローダーで「違法なタダの音楽を血眼で探す」なんて行為に疑問を覚えるようになるんじゃないかと。作り手と聴き手の間に良いループをデザインできれば。
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