Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第17回
その答えは? マイクロソフトからの手紙
Windows 7や.NET Framework開発者がいま直面する課題!
2010年05月19日 15時00分更新
米国では一足先に技術提供サービスが登場!?
―― 米国のマイクロソフトでは「Pinpoint」(http://pinpoint.microsoft.com/en-US/)のような、ビジネスユーザー向けにマイクロソフト以外のソフトウェアや技術サービスの情報を提供するサービスを打ち出したり、「Dallas(開発コードネーム)」(http://pinpoint.microsoft.com/en-US/Dallas)のようなデータ販売の仕組みが提供され始めています。こうした“技術”を使う開発者向けプログラムなどは、日本でいつ始まるのでしょうか?
加藤 これらのサービスはまだ日本では実施していないのですが、こうした技術・サービスの提供は大きな影響があると考えています。これまでのソフトウェアメーカーの技術力は、パッケージの内面に隠されていて、ビジネスはパッケージの善し悪しとかマーケッティング戦略などに大きく影響されていました。その結果、相対的に開発力の影響が低下し、それ以外の要素が主流になったこともあります。
ですが、電子的なサービスを介してソフトウェアや技術支援サービスなどが販売、あるいは紹介されていくようになると、今度は技術力そのものに対する評価が大きなウェイトを占めるようになると予想されます。そういう意味で、パソコンやパッケージソフトウェアの黎明期(1980~90年代)のように、技術力や目の付け所、アイデアといった部分が注目される時代がまた来るのではないでしょうか。自社の製品を必ずしもパッケージにする必要はなく、データや部品として売ったり、インターネットから利用できるAPIとして提供するなど、さまざまなビジネス形態が可能になると思います。そうなると今度は、逆に会社としてのコアコンピタンス(中核技術)は何か、あるいは世界の中で自社の位置付けはどうなのか、ということが重要になっていくでしょう。現時点で技術力の高いところは、そういう意味で少し先を行ける可能性があります。
私たちが所属する部署は、こうした時代の流れや変化に対して、ソフトウェアメーカーが感じるギャップを埋めていくのも重要な仕事(役割)だと思っています。
ローカライズ問題は日本固有の課題ではない!?
開発環境の進化を促進するための施策とは?
―― マイクロソフトは米国本社の会社なので、どうしても一次情報は英語になり、製品やサービスも英語版が最初に提供されます。この点で、まず日本語での情報提供が少ないこと、もうひとつに日本語化されるまでの時差の問題があると思うのですが、ソフトウェアメーカーを支援するという観点から、この部分をどう考えていらっしゃるでしょうか?
加藤 つい先日、世界各国のWebプラットフォーム担当者を集めた会議があったのですが、そこでも「ローカライゼーション」は大きなトピックでした。世界的に見ると、日本と比べて英語に親しんでいる人が多い国もありますが、そういう国・地域でも、やはり自分たちの言語で情報を入手したいという欲求は大きいようです。マイクロソフトとしても、これを問題として受け止めていながらも、すぐに解決できる状況ではないことを課題としています。
もうひとつの課題として、オリジナルとローカライズ版では、どうしても差ができてしまうことが挙げられます。オリジナルのもつ“ニュアンス”をローカライズするのは極めて困難です。そのため、どうしてもオリジナルとローカライズでは、完全には同じとはなり得ません。そういう意味で、深いところにある情報を得るには、オリジナルへのアクセスが不可欠と言えます。
ただ逆にいうと、今後ソフトウェアやWebサービスがワールドワイドで利用されるために“ダブルバイトへの対応”が不可欠になり、その点でも日本のソフトウェアメーカーには有利な点があります。また、日本のユーザーはサービスに対するさまざまな要求が高く、同程度のサービスを提供している国はまだまだ少数です。今はまだそうでない国でも、環境が成熟するに従って高いサービスが要求されるようになります。この点でも、一歩先んじている日本企業に有利な点があるのです。
―― 実際に取材してみると、DelphiやVisual Basic 6(.NET登場以前のVisual Basic)で開発しているところがまだまだありました。この点についてはどうお考えですか?
永野 おそらくVisual Studioの名前は知られていても、それで何ができるのか、どういうメリットがあるかまでは浸透していないのではないかと考えています。あるいは、Visual StudioがVisual Basic.NETを含んでいて、Visual Basic 6.0の後継であることさえも認識されていないのかもしれません。今回の記事を見てそういう状況を感じました。
こういったことは、われわれの力不足も要因のひとつと考えられます。つまり、Visual BasicとVisual Studioの切り替わり時におけるマーケティングや販売メッセージが徹底されていなかったことだと思うのです。それは開発効率(生産性)を向上させたり、現有資産を有効活用することができるなどのメリットを強調し、その上で新しい開発ツールが従来できなかったことを実現する新機能を伝えていく、といったことです。「新しい開発環境に移行することは決してハードルではなく、メリットである」ということを真に理解していただくことが、ユーザーにとっても、伝えるわれわれにとっても肝要だと考えています。
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