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Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第17回

その答えは? マイクロソフトからの手紙

Windows 7や.NET Framework開発者がいま直面する課題!

2010年05月19日 15時00分更新

文● 塩田紳二

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 Windows 7対応アプリケーションの開発現場をインタビューする本シリーズの締めくくりとして、マイクロソフト自身にも話を聞いた。対応いただいたのは、デベロッパー&プラットフォーム統括本部パートナーテクノロジー推進部パートナーストラテジーアドバイザーの永野 浩氏と、同推進部マネージャの加藤 確氏である。このパートナーテクノロジー推進部は、国内のデベロッパーとの接点を持つ部署である。

Windows 7への対応は期待以上に積極的
――でも、独力での解決が多いのが実情

―― まずは、担当されている仕事内容について簡単に教えてください。

パートナーストラテジーアドバイザーの永野 浩氏

パートナーストラテジーアドバイザーの永野 浩氏

永野 広い意味でいえば、マーケティングということになるでしょうか。パートナー企業様やISV様に対して、当社の製品や技術に関する普及活動を行なっています。弊社の今期、具体的な対象製品および技術はWindows 7とその対応アプリケーション開発環境であるVisual Studio、そして.NET Frameworkです。

 マイクロソフトは基幹ソフトウェア、つまりプラットフォームを提供する会社です。ですので、根底には“プラットフォーム戦略”があり、そこから具体的な製品としてWindows 7やVisual Studioというものが出てくるわけです。その上で、製品や技術の普及活動を行なうのが、私たちの部署の役割なのです。

―― 今回、Windows 7に早期に対応したソフトウェアメーカーを取材したのですが、振り返ってみていかがでしたか?

永野 やはり、どこもわれわれが想像していた以上にWindows 7への対応に積極的だったことが印象的でした。その反面、「マイクロソフトの支援の有無にかかわらず」(Windows 7対応を果たした)というコメントもあり、そこは複雑な気持ちです。どちらかというと、マイクロソフトと協調して進めるよりも、各企業の事情(製品の開発企画、市場投入タイミング)があって、Windows 7対応を自力で進めたという印象を受けました。われわれとしては、パートナー企業(ISV)と一緒に、Windows 7 や開発用製品(技術)を推進していきながら、ほかのISV(開発企業)様にも開発するメリットを感じていただきたいと考えています。しかし実際のところ、それぞれの会社で製品投入のスケジュールや製品固有のノウハウ、蓄積した技術、あるいはビジネス上の理由などがあり、早期にWindows 7対応が必要と考えて実行されたという感じです。われわれとしても、いろいろ考えさせられる部分がありました。

―― 今回の取材先(全14社)は、以前からコンタクトを取られていたところでしょうか?

永野 実際のところ、2/3ぐらいは元々コンタクトのなかったところでした。Windows 7対応の製品を出していただいていることは知っていましたが、私が所属する部門はもちろん、弊社内の他部門でも特にコンタクトを取っていたわけではなかったのです。それでも中には、以前にコンタクトがあったものの、最近はコンタクトが途切れていたところもありました。

―― 所属部署のお仕事から察すると、今回訪問したソフトメーカーのようなところにはむしろ積極的にコンタクトを取るべきだと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか?

永野 確かに今回の訪問取材を通して、その必要性は大いに感じています。しかしながら、日本国内のすべてのISV企業様とコンタクトを取るのは、弊社に限らず他の大手アプリケーションベンダーでも実現は不可能だと思います。そこで、マイクロソフトでは、これまでも「MSDN」のような“公式な”ルートから開発に必要な技術情報の提供したり、さらにWindows 7では「Compatible with Windows 7 ロゴ」や「テストツール」等のプログラムおよびツールも提供しています。ひとつの方法として、このような施策を介してコンタクトを取ることも考えられますね。もっとも、これらの施策へいかに誘導するかが大きな課題でもあるのですが。

MSDNのトップページ

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国内ソフトメーカーの高い技術力を
積極的にアピールするべき!

―― 今回訪問して感じたのは、いずれも高い技術力を持つにも関わらず、発売された製品からそれを感じ取ることができないし、特に(技術力の高さを)宣伝しているわけでもない。こうした技術力の高さを、もっと生かせないのかという点です。実際のところ、すべてが大企業というわけでもないので、手一杯ということもあるのでしょうが、例えば違う得意分野を持つ会社同士がタッグを組むことで、より大きな力を発揮できることも考えられます。Sliverlightのアプリケーションを考えたとき、あるソフトメーカーは、プログラム開発の技術力はあっても画面デザインなどは、また違う技能やノウハウがあり、必ずしも一社が両方を兼ね備えるわけではありませんから。

永野 同感です。今後はISV企業様も自社の得意分野と他社の得意分野を合わせて、製品開発を行なうべきと思います。これまで国内のISV企業様は常に高い技術力を持つがゆえに、得意分野以外も自社で完結しようと苦労されていたと思います。そうした製品開発も、割り切って他社と連携することでこれまでにない魅力的な製品を生み出すことができると思います。特にWindows 7では、さらなるきっかけが生まれると考えています。たとえば、Windows 7の新機能にあります「マルチタッチ」「センサー」「ロケーション」を活用することで、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせが可能になります。Windows 7は、ソフトウェアメーカーとハードウェアメーカーを取り持つことができる新しいプラットフォームなのです。

 ここからは私の個人的な考えですが、本来コンピューターは便利なツールであるべきですが、最近は得てしてパソコンという容れ物に縛られ、コンピューターの可能性が狭まっていたのではないでしょうか。生活においてコンピューターは特別ではなく、これからの社会にもっと便利な「ツール」として活かされなければなりません。そのためにはさまざまな様態に変化する必要があります。これに“クラウド”という仕組みが合わされれば、ますますソフトウェアとハードウェア(各種デバイス)の未来のソリューションはたった1つの形態である必要はないと思います。

 そういう意味で、Windows 7の登場は新しい時代の始まりを示しているのでしょう。


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